Market Analysis
2月以降、米国株式のボラティリティを拡大させる要因は、米長期金利の上昇スピードにあった。その長期金利は2月中旬以降、2.9%前後でキャップされる状況が続き、昨日は2.799%まで低下する局面が見られた。しかし、米株のボラティリティは拡大。VIXおよびVXNともに20ポイント台の水準へと再上昇している(チャート①)。「米長期金利低下 / 米株ボラティリティ拡大」の主因は、トランプ政権が推し進める通商政策リスクの高まりにある。このリスクは、これまで米ドル安圧力を強める要因とはなっても、米株への影響は株高の調整材料程度のインパクトしかなかった。しかし、今後の中国の出方次第で状況が大きく変化する可能性がある。トランプ政権は22日、最終ターゲットである中国に対し大統領権限による「通商法301条」までを発動し、500億ドル(約5.2兆円)相当の中国製品に対して高関税の賦課を命じる大統領令に署名。この事実に対してボラティリティが拡大で反応し実勢相場が急落した事実は、米通商政策リスクがいよいよ米株の波乱要因として意識され始めた可能性を示唆している。本日以降、この点を見極めるため米中貿易関連の報道、特に中国の反応についての報道に注視する必要があろう。現状、中国サイドは対抗措置と対話の両面でトランプ政権に対峙するスタンスを示している。だが、けん制の域にせよ米債投資戦略等にまで言及することがあれば「米長期金利の急騰→米株安」という状況が再燃&加速しよう。また、米中対立の激化は外為市場で米ドル安圧力と円高圧力を強めよう。
ドル円は本日早朝に105円を下方ブレイクした。短期間での下落幅拡大を考えるならば、調整の米ドルショートカバーが散見されよう。だが、108円ブレイク同様、2度目のディセンディング・トライアングルのパターン形成となったことで、テクニカル面ではさらなる下落シグナルが点灯した。株式市場が再び不安定化し、米長期金利も2.80%割れの局面が散見され、且つ104円台に目立ったテクニカルポイントが見当たらない点も考えるならば、103円台を目指す展開を警戒したい。異次元緩和導入後高値(125.85)、BREXIT後の安値(99.00)そして米大統領選挙後の高値(118.66)を考慮したプロジェクションでは、102円台までの下落の可能性が示唆される(チャート②)。