Market Analysis-米中間選挙について
ベースシナリオ
共和党が上院を制し、民主党が下院を制するというのが大方の予測となっている。これをベースシナリオとする場合、トランプ政権の政策運営能力の低下を意識した米株安局面が短期的に見られよう。米株のボラティリティが再び拡大する場合、安全資産である米債買い圧力が高まろう。これら米国市場の動向を意識し、外為市場では短期的に米ドル安局面が散見されよう。だが、このシナリオでは『トランプ米大統領弾劾』の可能性はゼロである。また、10月の米雇用統計が示すとおり米株高の土台となっているファンダメンタルズが堅調さを維持し続けている状況も考えるならば、FEDは段階的な利上げを粛々と実施していくだろう。さらに、インフラ投資政策(今後10年で1.5兆ドル規模の投資政策)を巡っては、民主党が共和党と歩調を合わせる可能性が高い。以上のことを総合的に考えると、米株の不安定化、米長期金利の低下、そして米ドル安局面が見られてもこれらは短期で収束しよう。
リスク選好シナリオ
共和党が上下両院とも制する結果をリスク選好シナリオと想定。2016年の英国EU離脱や米大統領選の結果、そして直近のトランプ支持率が最低水準時の38%台から44%台まで回復している状況を考えるならば、このシナリオの実現性について考慮しておくことは重要である。実際にこれが現実化する場合、トランプ政策の継続を意識した『米株高→米長期金利の上昇』が続こう。外為市場では調整を挟みながら米ドル高トレンドが進行しよう。一方、このシナリオが抱えるリスク要因も中間選挙後は考慮する必要があろう。それは財政問題である。現在の減税政策に加え、1.5兆円規模のインフラ投資政策、さらにはトランプ氏が突然言い出した中間層向けの新たな減税政策を実行するためには財源確保の問題が浮上しよう。この問題がマーケットリスクとして意識されるかどうか、その鍵は財源確保政策(かつてトランプ氏は国境税、共和党は国境調整税と呼んでいた穴埋め政策)の議論にある。昨夏以降、米議会は減税法案を通すことのみに注力してきたため、この議論は停滞している。この状況が続けば、リスク選好シナリオが一転してリスク回避シナリオへ転じる可能性は否定できない。だが、共和党が上下両院を制する場合、トランプ米政権の政策運営能力は飛躍的に拡大する。よって、筆者は停滞している財源確保政策についての議論が加速することを想定している。この想定をベースシナリオとする場合、財政問題がリスク要因として浮上しても、それは米株高と米ドル高の調整要因程度のインパクトにとどまると予測する。
リスク回避シナリオ
可能性は低いが、上下両院ともに民主党が多数派となる結果をリスク回避シナリオと想定したい。このシナリオでは『トランプ米大統領弾劾』の可能性とトランプ政策の頓挫を市場は警戒しよう。GDP統計が示すとおり、現在の米国経済はトランプ政策というカンフル剤によって堅調さを維持している。堅調なファンダメンタルズに加え、この政策効果が少なくとも2019年度まで持続するとの期待感も米株高の土台となっている。民主党が議会の多数派となれば、トランプ政策と米経済の先行きに不透明感が高まると同時に、FED の利上げスタンスもリスク回避要因として意識されよう。このシナリオでは米株高トレンドが転換する可能性を警戒したい。米国債券市場は財政問題に対する思惑次第でトレンドが左右されよう。金利が上昇してもそれがこの問題に起因するならば、外為市場では米ドル安要因として意識されよう。
尚、2年後の米大統領選挙の動向を見極める上で、州議会選挙の動向も注視したい。今回の選挙結果次第で、2020年下院選の選挙区割りが大きく変更される可能性があるためだ。また、米中間選挙以外で今週注目すべきイベントは、FOMC(11月8日)となろう。この点についての分析は別途のレポートにて。また、ドル円およびユーロドルのチャート分析はテクニカルレポートを参照されたし。
【チャート①:ドル円】