Analyst's view
米議会下院は5日、2018会計年度(17年10月~18年9月)の予算決議案を賛成多数で可決した。税制改革案に向けた審議が一歩前進したことが好感され、5日の米国市場は「株高 / 金利反発」で反応。より注視すべきは米長期金利の反応だろう。10月に入り低下基調にあったが、税制改革期待に反発で反応した事実や9月FOMC後に税制改革期待が盛り上がり、その過程で米10年債利回りが2.3%の水準を突破した事実は、税制改革が低インフレ脱却の有効手段になるとの市場判断がうかがえる。この件について、現在は期待先行でリスクオンとなっている。しかし、現状の税制改革案は下院と上院では開きがあるため、上院共和党と対立する可能性がくすぶる。また、財源確保という根本的な問題が解決されない以上、税制改革期待は今後上下に揺れ動くことになろう。
本日、低インフレ懸念を後退させる要因として注視すべきは9月米雇用統計となろう。特に注目されるのが、前年同月比で2.5%と抑制状態にある賃金の伸びとなろう(チャート①参照)。持続的な雇用増加にもかかわらず賃金の伸びがそれに追随出来ない状況が続くならば「個人消費の拡大→インフレ上昇」という期待が後退し、「米金利低下→米ドル売り」の展開が想定される。逆に賃金の伸びが加速していることが確認されれば、逆の展開を想定したい。
ドル円だが、冴えない賃金動向となっても米ドル安のみならば112円台を維持する公算が高い。株式の調整圧力が合わさるならば、日足一目雲の下限までのトライを警戒したい。一方、上値の攻防分岐は7月高値114.50を起点とした短期レジスタンスラインとなろう。このラインは今日現在113.10レベルで推移している。また、このレベルにはオファーの観測あり(チャート②参照)。一方、ユーロドルだが、米金利低下ならば1.1800をターゲットに反発地合いとなろう。米金利の上昇が続けば、89日MAもしくは直近高値1.2092からの38.20%戻しを視野に下落幅の拡大を想定したい(チャート③参照)。