Analyst's view
現在の円相場は株式の動向次第でトレンドが決定されると、5日のレポート「株式次第の円相場」で指摘した。昨日は主要な欧米株式が総じて下落し円高優勢の展開となった。だが、欧米株式のボラティリティは未だフランスリスク時の水準以下で推移し、且つ昨日はドイツ株式(DAX)や中国(上海総合)、ブラジル(BVSP)、インド(SENSEX)そしてロシア(RTS)といった新興国株式がかろうじて堅調地合いを保った点も考えるならば、北東アジアの地政学リスクは未だ株高の調整材料の域を出ていない。だが、調整でもそれが持続的ならば円高圧力も徐々に強まろう。今月9日に北朝鮮の建国記念日を控えていることを考えるならば、本日も北東アジアの地政学リスクが主要な株価指数の上値を圧迫する可能性がある。その場合、ドル円はビッドが観測されている108.00を視野に下落幅が拡大しよう。
また今月は、もうひとつの株安要因として注視すべきリスクイベントがある。米国の債務上限問題だ。米議会は夏季休会を終えて5日に再開。焦点は上院での攻防となろう。いつものパターンならば、上限の引き上げがスムーズに決定されるところだ。ハリケーン「ハービー」の復興暫定予算とセットで審議されることで、この問題は解決されるとの楽観論がある。しかし、現のトランプ政権は政策運営能力が著しく低下している。この状況下で上院60票の賛成票が必要となるが、共和党の議席数は52議席にとどまる。政策運営能力の低下に加えこれまでの対立も考えるならば、民主党がすんなり協力するかどうかは不透明であり、しかも9月中の審議日数は12日しかない。この問題が遅々として進まなければ、米株には調整圧力が強まろう。そして米金利は、株安とインフレ鈍化懸念のダブルパンチにより、さらに低下圧力が強まるだろう。
本日のドル円は、引き続き株式にらみの展開となろう。米10年債利回りが2.1%を割り込む展開となる中、株高調整の地合いが継続すれば、108円台での攻防戦となろう。現時点での今年最安値108.13トライのシグナルとして、8月29日安値108.27の下方ブレイクとなるか注視したい。108.27をも下抜ける展開となれば、108.00トライは時間の問題となろう。