Analyst's view
8月の米雇用統計は総じて市場予想以下の内容となった。一方、同月ISM製造業景況指数は58.8と市場予想(56.5)を上回る内容となった。強弱まちまちの指標データとなるも、1日の米国株式は主要3市場がそろって上昇した。冴えない雇用統計はイエレンFRBによる利上げペースの鈍化期待を高め、良好なISM製造業景況指数には素直に反応するという、まさに良いとこ取りの状況となっている米株は、今後も株高トレンドを維持する可能性が高い。唯一の懸念(=株安)材料は、北東アジアの地政学リスクだろう。北朝鮮は3日、6回目の核実験を実施した。トランプ政権は、越えてはならない一線「レッドライン」を越える場合、軍事行動も辞さない構えを見せている。今回の核実験によりそのラインを越えたか否か、この点の判断はトランプ政権の出方次第で判明しよう。米朝間の緊張がさらに高まれば、米株をはじめとした株式市場には再び株安圧力が強まろう。その過程で外為市場では円買い圧力が強まろう。逆に中露を意識し対話による解決を目指すならば、今回の地政学リスクも一過性で終わろう。
7日のECB理事会も株式市場のトレンドを大きく左右する可能性がある。現行の金融緩和政策の変更(=テーパリング)についてどこまで踏み込んだ議論がなされるか、この点が注目されるが、テーパリング開始は12月にずれ込むとの観測報道がすでに出ている。市場の予想が割れる中、ドラギ総裁が政策変更の具体策(開始時期 / 規模 / ペース)について言及するならば、市場はユーロ高で反応しよう。一方、欧州株式市場は、金利の上昇と緩和マネー流入期待の後退を背景に株安の展開が想定される。北東アジアの地政学リスクがくすぶる中、欧州株までが不安定化すれば、米株にも調整圧力が強まろう。外為市場では円高圧力が強まろう。
ドル円は108.00-111.00のコアレンジを想定し、株高維持ならば上限のトライとなろう。逆に上述した株安要因が意識されれば108円トライとなろう。米朝間の緊迫度合によっては、一時的な108.00ブレイクの可能性も警戒しておきたい。一方、ユーロドルは1.18-1.20をコアレンジと想定。イベント前にユーロ高の調整圧力がさらに強まる場合、1.17台へ下落する局面が散見されよう。だが、1.17を下方ブレイクするならばECB理事会後の可能性が高いだろう。上限の1.2の上方ブレイクもECB理事会後と想定している。