Analyst's view
ECBは来年1月以降の量的緩和の縮小に向けた議論を開始。ドラギ総裁は記者会見で、10月にも緩和縮小の決定をする可能性があると指摘した。この発言を受け、外為市場ではユーロ買い圧力が強まった。しかし、9月理事会での議論開始は既にアナウンス済みであり、ドラギ総裁はあらためてユーロ相場の不確実性に言及し、そして物価見通しも2018年を1.2%に、2019年を1.5%にそれぞれ下方修正された。ECBイベントを受け独金利が0.30%と6月下旬以来の水準まで急低下した点を考えるならば、昨日のユーロドルの上昇は、一過性の現象で終わる展開もあり得た。しかし、実際はNYタイムの引けで1.20台の維持に成功した。この堅調なユーロドルの主因はECBイベントではなく、米ドル安にあると筆者は考えている。事実、昨日のユーロ相場の騰落率を確認すると、対米ドルでの上昇が際立っていることがわかる。一方、対円での0.16%の上昇にとどまり、対カナダドルにいたってはパフォーマンスがマイナスとなっている(チャート①参照)。
米ドル安圧力を強めている主因は、米10年債利回りの動向にある。上述のとおり昨日は年初来の低水準を更新し、節目の2.0%割れが視野に入ってきた(チャート②参照)。現在の米金利の低空飛行が厄介な点は、金融機関の利ザヤ収益の圧迫懸念が意識され、米ドル安要因だけでなく金融セクターの下落要因としても意識されていることだ。短期的には行き過ぎた金利低下(=債券買い)の調整により反発する局面が散見されよう。だが、米政治リスクとインフレ鈍化のトレンド化という2つの低下要因に直面している米金利が、持続的な反発基調へ回帰する可能性は現時点で低い。北東アジアの地政学リスクがくすぶり続けている状況も考えるならば 、「米金利の低空飛行+株高調整」を背景にドル円の「108円ブレイク」の可能性が高まっていると判断している。