Market Analysis
ドラギECBは、年末までの量的緩和の継続と2019年夏までの超低金利政策の継続を表明した。量的緩和の終了時期について、ECBは当初今年9月末を目途としていたが、経済状況を鑑み10月以降は現行の300億ユーロから150億ユーロに減額し年末で打ち切る方針を表明。一方、利上げについては、一部で指摘されていた2019年前半ではなく来夏まで先送りすることとした。ハト派的な内容となったECBイベントを受け、欧州株式は総じて上昇。米株もS&P500とナスダック総合が堅調地合いを維持した。「タカ派の米欧中銀イベント」を背景とした株安シナリオの懸念が後退したが、次のリスク要因でる米中貿易摩擦に市場の警戒心がシフトする可能性がある。この点についてはトランプ政権の出方を待つ必要があるが、早ければ15日にも中国の知的財産侵害に対する制裁関税の最終案が公表される可能性がある。実際にトランプ政権が強硬姿勢に出れば、中国が報復に出る公算が高い。この問題が再燃する場合、米国市場(=株式市場 / 債券市場)ではリスク回避相場が想定され、ドル円は111円トライに失敗し続ける可能性が高まろう。一方、最終案を先送りする場合は、昨日からのリスク選好地合いが米国市場で続き、ドル円は111円トライを意識する展開となろう。テクニカル面で注視すべき下値のポイントは21日MA、上値のそれはプロジェクション38.20%となろう。
米中貿易摩擦以外で意識すべきもうひとつのリスク要因は、過度の米ドル高である。この点を見極める上でユーロドルの動向が重要な材料となろう。米欧金融政策のコントラストを背景に重要サポートポイント1.1506を下方ブレイクすれば、1.15割れは時間の問題となろう。1.1500-1.1850のレンジを下方ブレイクする場合、市場はさらなる米ドル高シグナルと捉え、他の米ドル相場全体の上昇要因となろう。過度の米ドル高進行となれば、資本流出懸念を背景に新興国株式が崩れる可能性がある。実際にMSCI新興国株式の動向を確認すると、米ドル高圧力が高まると下落する傾向が見られる。米欧株式ではなく、新興国株式がリスク回避の震源地となる可能性にも注意する必要があろう。
【チャート①:ドル円】