Analyst's view
韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が29日午前3時すぎに弾道ミサイル1発を発射したと発表した。一方、日本政府は北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと発表した。これら情報に対する各市場の反応は限定的だった。しかし、昨日の反応のみをもって、北東アジアの地政学リスクに対して各市場の耐性が強まっていると判断するのは早計だろう。9月の発射時と違い米国を刺激するような行動(核実験)や飛距離でなかったこと、そして米上院の予算委員会が上院共和党の税制改革案を可決し、この件に対する期待が再び台頭したことがリスク回避圧力を緩和した可能性があるからだ。今後も上記リスクを巡る報道とそれに対する市場の動向を常に注視する必要があろう。
昨日の米ドル相場は税制改革に対する期待先行を背景に上昇した。しかし、肝心の米10年債利回りは2.4%以下での低空飛行状態が継続している(チャート参照)。この事実は、他の市場ほど米債券市場では税制改革に対する期待が高くないことを示唆している。また、パウエルFRB理事が上院での公聴会で指摘したとおり、インフレ動向次第でFEDの利上げペースがより緩やかになる可能性についても米債券市場は意識しているのだろう。
米金利の低空飛行状態に変化が見られない中での米ドル買いには限界がある。本日のドル円は、引き続き111円台を中心とした売り買い交錯相場を想定したい。北朝鮮のミサイル発射が意識され国内株式が軟調地合いとなれば、円高局面が散見されよう。だが、世界的な株高トレンドに変化が見られないことを考えるならば、日足一目雲の下限は維持する公算が高いだろう。一方、ユーロドルは反発相場を想定したい。昨日は、英国とEUが離脱精算金で合意との報道を受け、対ポンドでのユーロ売りも重なり陰線示現となった。しかし、米金利の低空飛行が続く中では米独利回り格差の持続的な拡大基調は望めない。詳細なチャート分析はテクニカルレポートにて。