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NY金、米景気懸念で3000ドル台の攻防へ 下値では押し目買い狙い 金価格の見通し

史上初の3,000ドルへ到達したNY金。米国の景気懸念が今の強気相場を支えている。調整売りを警戒しながらも、下値では引き続き押し目買いを狙いたい。金価格の見通しと注目のテクニカルラインについて。

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記事の概要

NY金の先物価格(4月物)は先週、史上初の3,000ドルを付けた。週明け17日の市場では一時3,017.1ドルと、連日で過去最高値を更新した。スポットの金価格も3,000ドルへ到達し強気相場に勢いがあることを示した。短期間で上昇幅が拡大したこともあり、調整売りを警戒したい。しかし、米国の景気懸念が今の強気相場を下支えしている状況を考えるならば、金価格の反落局面では引き続き押し目買いを狙いたい。目先の焦点は米連邦公開市場委員会(FOMC)となろう。金価格の週間予想レンジは2,940~3,062ドル


記事の焦点


騰勢強めるNY金、先物は終値で3,000ドルを維持、スポットは2週続伸

NY金の強気相場の勢いが増している。先週、先物価格(4月物)は史上初の3,000ドルへ到達した。昨日の市場でも5日続伸し、前週末比5.0ドル(0.2%)高の3,006.1ドルで取引を終えた。終値で3,000ドルの節目を維持したことは、さらなる上値トライを意識させる。

先物価格に追随し、スポット価格(以下では金価格)も3,000ドルの攻防にある。2月の最終週に調整売りに直面し9週連騰はならなかったが、3月に入り2週続伸し強気相場を維持。新たな上値の水準を見極める状況が続いている。

スポット金価格の週間騰落率:年初来

スポット金価格の週間騰落率:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成


NY金の強気相場を支える米ドル安

現在の強気相場を支えているのが、米ドル安である。米ドル安の主因は、米国経済の先行き懸念を意識した米10年債利回り(長期金利)の低下にある。この点を以下に掲載した日足チャートで確認すると、米国経済を支える個人消費が縮小すると同時に消費者のインフレ期待が上昇していることで「スタグフレーション」の懸念が高まり、景気の先行きを織り込んで動く米10年債利回り(以下では米金利)は1月中旬を境に低下基調へ転じている。

米金利の動向は、米ドル相場のトレンドに大きな影響を与える。事実下のチャートを見ると、米ドル相場の方向性を示すドル指数(DXY)は米金利の低下に連動し、上昇から下落のトレンドへ転じている。テクニカルの面ではフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準を下方ブレイクし、昨年10月以来となる103ポイントが視野に入る。

米ドル安の進行に伴い、金価格の上昇幅が拡大していることが分かる。

スポット金価格、米10年債利回り、ドル指数の動向:日足 2024年9月以降

スポット金価格、米10年債利回り、ドル指数の動向:日足 2024年9月以降

出所:TradingView


米国の景気懸念を意識する状況が続く

米商務省が17日発表した2月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は、強弱まちまちの内容となった。総合では前月比で0.2%増の7,227億800万ドルとブルームバーグがまとめた市場予想0.6%増を下回った。市場予想を下回るのは3カ月連続となった。外食の落ち込み(1.54%減)は、消費者が支出を抑制していることを示唆している。

一方、GDP個人消費の算出に用いられるコア小売売上高(コントロールグループ)は、電子商取引の拡大を受け前月比1%増と1月の1.0%減から急速に回復した。だが、3月のミシガン大学消費者態度指数で消費者マインドが低下している状況を考えるならば、電子商取引の増加はインフレ再燃を意識した駆け込み購入の可能性がある。

米国 小売売上高:直近1年間の動向

米国 小売売上高:直近1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ISM製造業景気指数の先行指標として注目される3月のNY連銀製造業景況指数は-20.0と、前月の5.7から急速に落ち込んだ。内訳を確認するとスタグフレーションの懸念を高める内容となった。

仕入れ価格は前月の40.2から44.9へ上昇し、2023年2月以来およそ2年ぶりの高い水準となった。6ヶ月先の仕入れ価格予想も58.2と、2022年6月以来(69.2)の高水準となった。仕入れ価格の上昇はインフレ再燃を意識させる。一方、新規受注と雇用の予想は減少の傾向にある。

インフレ再燃の可能性がくすぶる一方で、製造業の活動が縮小傾向にある状況は、スタグフレーションの可能性を市場参加者に意識させる。トランプ関税が経済に及ぼす不確実性も考えるならば、米国経済の先行き不透明感はそう簡単に後退しないだろう。

NY連銀製造業景況指数の内訳:年初来

NY連銀製造業景況指数の内訳:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成


金価格の見通しとテクニカルライン

FOMCでさらなる米ドル安も、新たな上値の水準は?
スポットの金価格(以下では金価格)は昨日、連日で最高値を更新し終値ベースで節目の3,000ドルを維持した。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC、18~19日)では政策金利の据え置きが予想されるが、FOMC参加者の経済と政策金利の見通しが前回(昨年12月)から下方修正される場合、外為市場では米ドル安がさらに進行することが予想される。米ドル安にサポートされ、金価格が3,000ドル台の攻防へシフトする場合は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。

今週の予想レンジ上限は、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準3,062ドル(日足チャートを参照)。このテクニカルラインを目指すサインとして、まずは先週14日の高値3,005ドルの突破を確認したい。3,005ドルを完全に突破した後は、10ドルのレンジで上値の攻防を見極めたい。3,050ドルの突破は3,062ドルをトライするサインとなろう。

筆者の予想を超えて金価格の騰勢が強まり3,062ドルをも突破する場合は、3,100ドルが視野に入ろう。

レジスタンスライン
・3,100:レジスタンスライン(日足)
・3,062:予想レンジの上限、エクステンション61.8%(日足)
・3,050:レジスタンスライン
・3,005:3月14日の高値(日足)

反落の局面では押し目買い狙い、注目のサポートライン
3月に入り金価格は5%近く上昇している。短期間で上昇幅が拡大したことを考えるならば、調整売りを警戒したい。今週そのきっかけとなり得るのが上で述べたFOMCとなろう。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が定例会見で米国経済の強さに言及する場合は、金価格の調整売りの材料となる可能性がある。しかし、昨日の経済指標で米国経済の先行き懸念がそう簡単に後退しない可能性が示されたことを考えるならば、金価格の反落局面では押し目買いを狙いたい。

今週の予想レンジの下限は2,940ドル。今年に入りサポートラインとして相場を下支えしている日足の一目転換線が2,942ドルで推移している。また、先週高安の半値戻しの水準でもある。

金価格が2,940ドルをトライするサインとして、まずは2,975~80ドルのサポートゾーンの攻防が焦点となろう(1時間足を参照)。このサポートゾーンを下方ブレイクする場合は、2月24日の高値2,956ドルのトライが焦点に浮上しよう。この水準は、レジスタンスからサポートのラインへ転換する可能性がある。また、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準でもある。

筆者の予想を超えてゴールドの調整売りが進行し、2,940ドルをも下方ブレイクする場合は、サポートラインへ転換する可能性がある2,930ドルのトライを想定したい。2,927ドルはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる(1時間足を参照)。

なお、現在の金価格は上昇トレンドにある。高値を更新する際は、その都度新たなフィボナッチ・リトレースメントの水準を確認したい。

サポートライン
・2,980:サポートライン(1時間足)
・2,975:23.6%戻し(1時間足)
・2,956:2月24日の高値(日足)
・2,942:一目転換線(日足)、半値戻し(1時間足)
・2,927:61.8%戻し(1時間足)

※一目基準線の表記を「一目転換線」に訂正


金価格のチャート

日足:24年12月以降

日足:24年12月以降

出所:TradingView

1時間足:3月10日以降

1時間足:3月10日以降

出所:TradingView


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