景気への懸念は2019年も続く?
米中貿易摩に加え、トランプ大統領への信任低下などがマーケットを大きく押し下げている。同大統領は、唯一の政権発足当初から要職に就いてきたマティス国防長官を実質的に更迭。政権内の大統領抑止約は皆無となった。メキシコの壁の予算を巡り民主党と対立し、政府機関は一部閉鎖。パウエルFRB長官やムニューシン財務長官も更迭との観測が浮上するなど、国政を巡る混乱が株安を招いている面も強い。
過去2回のリセッションは、利上げ後利下げ局面入りし1年強経過してからであり、市場参加者が景気後退を織り込むには未だ早いと思われる。トランプ大統領の手腕が試されよう。(庵原)
原油価格は1年半ぶり安値
OPECの加盟国と非加盟国で構成するOPECプラスでは12/7、日量120万バレルの減産で合意。内訳は加盟国が日量80万バレル、非加盟国が日量40万バレルの減産となった。動向が注目されるロシアも、ノバク・エネルギー相が10月の生産の2%相当の日量22.8-23万バレル前後を減産すると表明。
減産合意を受け下げ止まりの兆しを見せた原油価格であるが、世界的な株安の流れを受け下落に転じ、12/25にWTI原油先物は42.53ドル/バレルと1年半ぶり安値を付けた。ただ、世界経済の減速懸念は残るものの、直近の下げは投機筋が主導している側面が強い。供給サイドのリスクは一旦後退したことから底入れの可能性もあろう。(増渕)
米国大統領3年目のアノマリー
トランプ大統領は来年1/20に就任3年目を迎える。株式市場では、大統領の任期3年目に株価が上がりやすい「大統領選挙サイクル」と呼ばれるアノマリーの存在が指摘されている。大統領の任期は4年であるが、多くの大統領は就任直後の1-2年目に不人気な構造改革を行い、3年目から財政出動など景気浮揚策を講じて大統領再戦を狙うことから生じるものとみられている。
ただトランプ政権は、既に大規模な税制改革を実施。民主党も積極的なインフラ投資については推進が期待できるものの、ねじれ国会により積極的な財政拡大は難しくなった。アノマリーを当てにせず、質の高い銘柄をピックアップしていくのが得策となろう。(増渕)
企業業績は伸び鈍化の見通し
12/21現在、S&P500構成企業のEPS増益率の市場予想は、2018/12期4Q(10-12月)が13.6%と、2018/12期3Q(7-9月)の25.0%から鈍化。年ベースでも、2019/12期に2018/12期の23.9%から1桁台へ落ち込む見通し。市場は貿易摩擦やリセッション入りの可能性、減税効果の剥落などを織り込んでいるもよう。これらへの影響の大きいトランプ政権の動向が引き続き注目される。
セクター別では、一般消費財・サービスは3Q実績の増益率が23.6%に対し、4Qは7.9%と伸び鈍化を予想。サブセクターの自動車・自動車部品が関税引き上げの影響などにより、3Q実績4.7%に対し4Q予想が▲23.0%である影響が出た。また、半導体・同製造装置は2018/12期は50.3%を見込む一方、2019/12期予想は▲4.1%。(増渕)
2019年のダウの(負け)犬は?
米国では、ダウの犬(Dogs of the Dow)戦略がある。米国を代表する大型優良銘柄であるNYダウ構成30名銘柄の負け組に投資する手法である。30銘柄を配当利回りの高い順に並べ上位10銘柄が(負け)犬に相当する。
2018年のダウの犬は、2017年末時点で順にベライゾン(VZ)、IBM(IBM)、ファイザー(PFE)、エクソン(XOM)、シェブロン(CVX)、メルク(MRK)、コカ・コーラ(KO)、シスコシステムズ(CSCO)、P&G(PG)など。12/24時点の2018年の騰落率は右図表の通り。同時点2019年は、順にIBM、XOM、VZ、CVX、CSCO、KO、PFE、PG、ダウ・デュポン(DWDP)、3M(MMM)である。5Gで先行するVZなどに投資妙味があると見ている。投資の参考として頂きたい。(庵原)
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