人手不足の救世主とされながらも、過酷な条件の下での労働を余儀なくされることが少なくない外国人技能実習生の人権侵害に光が当てられた。繊維製品メーカー大手のワコールホールディングス(HD)が、自社製品の製造サプライチェーンに実習生の人権を侵害している企業はないか調査を始めた。
このCSRの最新の取り組みにおいて、ワコールは賃金不払いなどの不正行為があれば改善を求めるとし、これに応じない場合は取引を見直すという。
法務省が9月に発表したところによると、6月末時点の在留外国人数は過去最多の263万7251人。日本の総人口のおよそ2%に相当する。このうち技能実習生は28万5776人だ。
一方、厚生労働省が今年に入り発表した統計によると、労災死と認定された外国人技能実習生は2014~16年度の3年間で計22人に上る。大半が事故とみられるが、過労死も1人いたという。労災保険の給付対象となる休業4日以上の労災件数は、3年間で平均年475件。法務省がまとめた実習生の数を基に計算すると、3年間の労災死は10万人当たり3.7人だ。
調査はワコールHDのワコールとルシアンが今夏始めた。社員が全国の工場を訪ねて約25項目をチェックする。過去3年間の労働基準監督署からの是正勧告の有無や、実習生の労働時間管理にタイムカードなど客観的な記録が用いられているかを確認する。
下着ブランド「ワコール」などの主力製品の国内生産委託先60工場のうち、約40が外国人労働者を雇用している。技能実習生の総数は538人。40工場のうちの32がワコールHDとは資本関係がないという。