中小企業経営者の高齢化が止まらない。その大半が後継者を決めていないという。大量の廃業が懸念されるなか、救世主として登場するのが外資系企業だ。
今後10年で平均引退年齢の70歳を超す中小企業経営者は約245万人で、このうち約半数が後継者を定めていない。経済産業省と中小企業庁は昨年、事業承継問題を放置すると、2025年までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるとの試算を発表した。
黒字経営の企業や秀でた技術を持つ企業でさえ続々と消えていきかねないのが現状だ。こうしたなか、技術の承継や雇用の確保を確実にするべく、経済産業省は中小企業のM&A情報を集めたデータベースを、中小企業の製品や技術に関心がある外資系企業に開放することを決めたという。今年度中に日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じ、情報提供を開始する。
経産省が用いるのは中小企業基盤整備機構が全国に構える引継ぎ支援センターのデータベース。約2万4000件の中小企業からの売却案や買い手企業情報などが存在する。匿名での公開の了承を得て金融機関などに限って公開されている約3000件が、ジェトロを通じて外資にも提供される。
ジェトロが関与することで海外への重要技術の流出は妨げられる見通し。件数もジェトロが扱える範囲に抑えられる。
中小企業経営者はかつて国外企業を「ハゲタカ外資」として敬遠していたが、こうしたアレルギーは大幅に後退しているとM&A関係者は口をそろえる。社長を外国人が務める中小企業が珍しくない時代が来るかもしれない。