米消費者物価指数の鈍化を受け、日経平均株価が2週間ぶりの高値を記録
11月の消費者物価指数(CPI)で米国のインフレが鈍化傾向にあることが確認された。金融引き締めの懸念が後退し、日経平均株価は週半ばに上昇した。
22年12月14日の東京市場では、日経平均株価が0.72%上昇し、12月1日以来の高値である2万8156円21銭で取引を終えた。この日の上昇は、米国の代表的な株価指標であるダウ工業株平均の上昇を反映したものだ。
12月13日に発表された11月の米消費者物価指数(CPI)は、前年比で7.1%へ低下した。市場の予想は同比7.3%だった。CPIの鈍化は5か月連続となった。
一方、前月比では0.1%の上昇と、こちらも市場予想の0.3%を下回り、8月以来の低水準となった。
米国のインフレ率は、米国連邦準備銀行(FRB)の目標値である2%を大きく上回っている。しかし、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、パウエル議長は「利上げペースを緩やかにする時期は、早ければ12月の会合になるかもしれない」と述べていた。
日銀の政策修正と日本株への影響
22年12月20日に開催された金融政策決定会合で日本銀行(日銀)は、イールドカーブ・コントロールの許容変動の幅を±0.5%に拡大した。しかし、同時に国債購入の額を月額7.3兆円から9兆円に拡大することを決めたことで、未だ他国の中央銀行と比べて金融緩和政策を維持している。この点は、日本の株式市場にとって金利の上昇によるマイナスの影響を幾分か相殺する要因となり得る。
一方、FRBをはじめとした他国の中央銀行は、インフレを抑制するため、大幅な利上げ政策を続けている。このため、世界的に景気の後退懸念が高まっている。この点は、特に日本の輸出関連株にとってマイナス要因である。
日銀の金融緩和政策は、海外の景気減速の懸念を和らげる要因だった。しかし、今後も日銀の政策修正が行われる場合、日本株全体にとってリスク要因となり得る。日銀の黒田東彦総裁は12月20日に開かれた金融政策決定会合後の記者会見で、今回の政策修正が金融緩和政策の転換ではないことを主張した。しかし、この日の日経平均株価は前日比で2.46%も下落した。
米国のインフレ鈍化と日本のテクノロジー関連株の反応
米国のインフレに話を戻そう。米国のインフレ鈍化はFRBの金融引き締め懸念を後退させている。この懸念の後退は、日本のテクノロジー関連株の上昇要因となった。
例えば、複数分野の事業を運営する国際的企業のソニーグループは、11月の米CPIが発表された翌日(12月14日)に1.46%上昇した。同社の事業は、電子機器の製造から音楽、映画、テレビ番組の配給まで多岐にわたる。そのため、同社はどのような景気変動局面においても優位に立つことができるだろう。しかし、ソニーグループは輸出企業の側面もある。よって、世界的な金融引き締めの悪影響を受ける可能性があることも注意しておきたい。
シリコンウエハーメーカーの信越化学工業、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンなど、主要テクノロジー企業も好調で、12月14日にそれぞれ3.01%、1.9%の上昇した。
ボーイングからの大量発注で好調の東レ
12月14日の注目銘柄は、航空機用炭素繊維メーカーの東レだった。同社の株価はこの日6.95%上昇した。この急騰の要因は、ユナイテッド航空がポストコロナの需要回復を見込んで、より新しく効率的な航空機であるボーイング社の787 ドリームライナーと737 MAXを100機ずつ発注したことだった。この取引は、総額約430億ドルに相当する。
東レは炭素繊維プリプレグ、「トレカ®」を製造している。「トレカ®」はボーイングの旅客機用一次構造材として認定されている。1990年以来続く、米国の航空機大手ボーイング社と東レの関係を考えると、今後もさらなる受注による利益獲得が期待できる。
なお、東レのプリプレグは、1990年にボーイング777型機の尾翼部品の一次構造材として初めて認定された。その後、同社は1992年にプリプレグ生産会社を、1997年に原糸生産会社をそれぞれ米国に設立している。2011年に就航したボーイング787型機では、主翼をはじめとするすべての主要構造部材に「トレカ®」とクロスが使用されている。
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