米国マンスリー、“新たな「期待」を抱き、いざ、頂上奪還を目指す?”
米国マンスリー 2019年3月号
ハト派になったパウエル議長
パウエルFRB議長は2/26の議会証言で、経済は良好だが一部で「相反する流れやシグナル」が見られると指摘。それを踏まえ、1月のFOMCでは将来の政策金利について辛抱強いアプローチを取ることは正当化されると判断したと説明した。また、この先の政策判断は引き続きデータ次第となると述べた。
金融当局者の間では、利上げ再開を巡る意見の相違が顕在化しそうだ。アマースト・ピアポント・セキュリティーズは、低失業率の下でインフレ率が2%近辺で推移するなら再開すべきとするクリーブランド連銀総裁に代表される陣営と、インフレ率が自分達の予想を上回る必要があるとするNY連銀総裁に代表される陣営に大別。今後はボードメンバーの動向が注目されよう。(増渕)
【FRBは辛抱強いアプローチ~利上げ再開では意見の割れるボードメンバー】
英ブレグジットの歴史的考察
市場は、期限が迫る英国のEU離脱に係る「ハード・ブレグジット」懸念に揺れている。外から見れば「英国人は賢明でない選択をしている」と映るが、歴史を紐解くと、既に欧州大陸から離脱した経験があることが分かる。時は16世紀、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝のローマ・カトリック教会から離脱・独立、イギリス国教会を確立した歴史である。
年表にあるように、ヘンリ8世王妃離婚問題から紆余曲折を経て、エリザベス1世よってイギリス国教会が確立。その後、スペインの無敵艦隊を撃破し大英帝国の礎を築いた。現在の英国民の心理には栄光へ向かう歴史の記憶が刻まれているのだろうか?(笹木)
【英ブレグジットの歴史的考察~欧州からの離脱が大英帝国の礎に!】
米大統領は「底値買い」の天才?
トランプ大統領は昨年12/25に「まさに「素晴らしい買いの好機だ」と主張、NYダウでは、12/26始値から2/26終値まで19.2%(4200ドル)上昇した。
相場下落局面で歴代大統領が株式市場に関するコメントを発し、買い転換を演出していることがある。ニクソン(1970/5)「率直に言ってお金があればすぐに株を買う」、レーガン(1985/3)「雄牛を解き放つ」、ブッシュ(2002/7)「株式市場のバリューは割安」、オバマ(2009/3)「株式の買いは潜在的に良い取引」など。割安なタイミングでの発言は買い転換へのきっかけになりやすいということは言えるだろう。(笹木)
【歴史が示す大統領発言の有効性~大統領は「底値買い」の天才か?】
取引所間競争の激化と寡占化
英調査会社の取引所ブランド価値調査によれば、2019年トップ10のうち米国が5社を占めた。NYSEは親会社がICEであり、上場企業としてはCMEグループ(CME)、インターコンチネンタル取引所(ICE)、ナスダック(NDAQ)、CBOEホールディングス(CBOE)の4社。4社間でも時価総額ではCME(2/26末で637億USD)とICE(同428億USD)に対し、NDAQ(同151億USD)とCBOE(同106億USD)に分かれ二極化している。
CMEグループやICEが傘下の取引所を更に増やし寡占化の傾向を強めている中で、利用料金への不満を背景にユーザーの大手金融機関が取引所を創設する動きも要注目である。(笹木)
【取引所間競争の激化と寡占化~米国製が圧倒、強者が更に勢力拡大】
米国の消費者マインドが復調
商務省が2/14に発表した12月の小売売上高は前月比1.2%減。減少幅は2009/9以来9年3ヵ月ぶりの大きさだった。一方、2/15に発表された2月のミシガン大学消費者マインド指数は95.5と2年ぶり低水準だった前月から持ち直し、市場予想の93.7も上回った。12月は株式市場の急落や政府機関閉鎖の影響が出たが、一時的な落ち込みと見られる。FRBの利上げ見合わせもあり当面は堅調な個人消費が維持されよう。
ウォルマート(WMT)が2/19に発表した2019/1期4Q(2018/11-2019/1)では、注目のウォルマート・米国の既存店売上高が前年同期比4.2%増と市場予想の同3.2%増を上回る伸びを見せた。アマゾン・ドットコム(AMZN)の躍進で低迷が続いた小売株だが、好決算銘柄は反転の機会もあろう。(増渕)
【米国の消費者マインドが復調~ウォルマートの好決算で反転も】
FAANG銘柄の10-12月期決算
FAANG銘柄の10-12月期は、中国事業が不振だったアップル(AAPL)を除き大幅増収。フェイスブック(FB)とアマゾン・ドットコム(AMZN)は60%台の増益。アルファベット(GOOGL)も売上高が4Qで過去最高となった。独自作品の制作費が膨んだネットフリックス(NFLX)は減益。
ただ株式市場では先行きのガイダンスに注目が集まっており、反応は大きく分かれた。アップルの1-3月期売上高見通しは市場予想と近い水準であった。2018年末の厳しい状況がそれ以上悪化していないことを示唆すると見られ、株式は買われた。一方、アマゾンは1-3月期の売上見通し(560-600億ドル)が市場予想(610億ドル)を下回り、株価は急落。米ハイテク株では物色の方向が変わる可能性もあろう。(増渕)
【FAANG銘柄の決算が出揃った~物色の潮目は変わるか!?】
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公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員補 増渕透吾
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