連邦公開市場委員会(FOMC)と4月の米雇用統計、それぞれの注目ポイントについて
今週の外為市場は米欧の中銀イベントで上下に大きく振れる展開が予想される。米国の中銀イベントではパウエルFRB議長の会見内容が相場の変動要因となろう。4月の米雇用統計では賃金の動向が焦点となろう。FOMC(パウエル会見)と米雇用統計、それぞれの注目ポイントは?米ドル相場(ドルインデックス)の展望は?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・今週の注目材料は連邦公開市場委員会(FOMC)と4月の米雇用統計
・今回のFOMCの焦点は6月会合以降の動向のヒントをつかむことにある
・パウエルFRBが利上げサイクルの終了を決定する場合はその理由に注目したい
・今週の米ドル相場(ドルインデックス)の展望とチャートポイントについて
5月連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点
市場の関心は6月会合以降の政策動向に
5月2~3日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。今回の会合での0.25%利上げについては、すでに各市場で織り込まれている。よって各市場の参加者は、6月以降の政策動向を見極めることに注力するだろう。
CMEが提供しているFEDウォッチツールで6月会合の利上げ確率を確認すると、5月の利上げを最後に連邦準備制度理事会(FRB)が利上げサイクルを終了させることを織り込む状況にある。
一方、短期金融市場(OIS市場)でも5月の会合でパウエルFRBが利上げサイクルを終了させ、かつ今秋にも利下げに転じる可能性を織り込んでいる。
市場が想定するFRBの政策動向
くすぶるインフレ懸念
市場の想定どおりにパウエルFRBが5月の会合で利上げサイクルを終了させる場合は、米金利の低下と米株高の要因になり得る。ゆえに外為市場では、米ドル安の展開が予想される。
しかし、パウエルFRBを取り巻く情勢は複雑である。3月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)では、前月比と前年同月比でともにインフレの鈍化傾向があらためて確認された(下のチャートを参照)。しかし、FRBが物価目標としている2%前後と比べれば、まだ高い水準にある。また、サービス価格は前年同月比で5.5%上昇した。
個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の推移
一方、消費者物価指数(CPI)では、3月の住居費が前年同月比で8.2%と高止まりの状況が続く。エネルギーを除くサービス価格は低下の傾向にあるが7%台と未だに高い水準で推移している。そして、先月27日の1-3月期個人消費支出デフレーター(物価指標)は前期比年率で4.9%と、前期の4.4%から伸びが加速した。
米国内のインフレはピークアウトしたが、物価目標の2%に向かってなかなか低下しないリスクがくすぶる。
コアPCEデフレーターの推移:1-3月期
そして現在は、金融システム不安とそれに伴う景気の先行き懸念も注視すべき状況にある。4月28日の米国株式市場では、ファースト・リパブリック・バンクが複数回にわたり売買が停止され、株価は43%急落し3.51ドルで終えた。
また、FRBが新設したバンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の利用額は再び増加の傾向にある。そしてKBW銀行株指数は下落トレンドを維持している。
BTFPの利用額と銀行株(セクター)の動向
利上げサイクル終了の場合はその理由が焦点に
5月の会合でパウエルFRBが利上げサイクルの終了を決定する場合、注目すべきはその理由である。
上で述べたとおり、3月に発生した金融システム不安はくすぶり続けている。インフレのリスク以上に景気の減速または後退のリスクについてパウエルFRB議長から重視する発言がある場合、米国の株式市場では利上げサイクルの終了よりも将来の景気リスクが意識される可能性がある。このケースでは、米金利の低下と米株安が同時に発生することが予想される。
外為市場では、米金利の低下を受けて米ドル売り優勢の展開となっても、リスク資産の価格と連動しやすい豪ドルや資源国通貨では堅調地合いを維持することが予想される。
また、このケースでは「米金利の低下→米ドル安」により、短期間で上昇幅が拡大したドル円(USDJPY)の調整材料になり得る。
4月米雇用統計の焦点と市場の展望
5月5日に4月の米雇用統計が発表される。上で述べたとおりインフレのリスクが完全に後退していないことを考えるならば、非農業部門雇用者数変化(予想18万人)や失業率(予想3.6%)と同様に賃金の動向が引き続き重要な焦点となろう。
5月1日(月)時点での平均時給の予想は前月比で0.3%増、前年同月比で4.2%増と前月から横ばい推移の見通しとなっている。
非農業部門雇用者数変化と失業率で雇用市場の堅調さが確認されると同時に賃金の伸びが予想以上となれば、今週のFOMCでパウエルFRBが利上げサイクルを終了させても、しばらくの間、政策金利(FFレート)を高水準で維持する(維持せざるを得ない)という思惑が各市場で高まる可能性がある。
この思惑は、年内の利下げ観測を後退させる要因である。ゆえに賃金の上昇を伴う良好な雇用統計の結果は、米ドル買いの要因と想定しておきたい。
一方、賃金の伸びが鈍化する場合は、市場が抱くインフレ懸念の後退要因となろう。FOMCの動向(パウエルFRB議長の会見内容)、そして非農業部門雇用者数変化や失業率の内容にもよるが、賃金の伸びが抑制されるケースでは米金利の低下、米株高そして米ドル安の展開を想定しておきたい。
非農業部門雇用者数変化、失業率、平均時給の推移
今週のドルインデックスの展望とチャートポイント
上下のチャートポイント
今週の米ドル相場は、FOMCと4月の米雇用統計で上下に大きく振れる展開が予想される。これらが米ドル安イベントとなる場合、米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は101ポイント割れ、および2月の安値100.82レベルのトライを想定しておきたい。ドルインデックスが、日足ローソク足の実体ベースで後者の水準(100.82レベル)を完全に下方ブレイクする場合は、新たな米ドル安の局面へシフトするシグナルになり得る。
一方、上2つの重要イベントが米ドル買いの要因となる場合は、日足ローソク足の実体ベースで21日MAを突破できるかどうか?この点に注目したい。先月28日の市場では、対円で米ドルの上昇幅が拡大したことで21日MAを突破する局面が見られた(高値102.17レベル)。しかし、長い上ヒゲが示現していることを考えるならば、基調は未だに米ドル安である。ゆえに米ドルの買い戻し局面で21日MAと102.17の上方ブレイクに成功すれば米ドル高に弾みがつき、103ポイントを視野に上昇幅が拡大する展開を想定しておきたい。
21日MAの “サポート転換” が確認される場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けるだろう。
なお、低下トレンドへ転じている50日MAが103ポイント付近(今日現在103.04レベル)で推移している。103ポイントで反発が止められた過去の経緯も考えるならば、このレベル(103.00前後)は21日MAと同じく強固なレジスタンスとして米ドル相場の上昇を止める可能性があろう。
ドルインデックスのチャート:日足
100.82ブレイク後の注目ポイント
一方、ドルインデックス(DXY)が重要サポートポイントの100.82レベルをブレイクした後にこの水準がレジスタンスへ転換する場合は、節目の100ポイントを視野に米ドル安のさらなる進行を想定しておきたい。
米ドル安の状況が続きドルインデックスが100ポイント割れとなれば、2021年安値と2022年高値の61.8%の水準98.97レベルの攻防を意識する展開になると予想する。
ドルインデックスのチャート:月足
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