今週の注目材料は米国の雇用関連指標 / ドル円の展望について
米債務上限問題でバイデン政権と野党共和党が基本合意に達したことは、日米の株高要因となろう。リスク選好相場が続けば円安要因となろう。今週の注目材料はアメリカの雇用関連指標である。特に6月2日の5月雇用統計に市場参加者の注目が集まる。ドル円の展望は?注目しておきたい上下のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※ポンド円の見通しについてはこちらのレポートをご覧ください
※次回のレポート配信は、6月2日(金)となります
サマリー
・4月のPCEデフレーターで米国のインフレ圧力の根強さが確認された
・根強いインフレ動向を受けFRBによる追加利上げの可能性が高まっている
・今週のドル円は米国の経済指標、特に雇用関連指標にらみの展開が予想される
・ドル円の展望と上下のテクニカルポイントについて
根強い米国のインフレ圧力と追加利上げの思惑
先週26日に米商務省が発表した4月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)によれば、前月比で0.4%、前年比で4.4%と、前月の0.1%および4.2%からインフレの伸びが加速した。
そして変動の大きい食品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターも前月比で0.4%、前年比で4.7%と、総じて前月の水準(0.3%、4.6%)を上回った。
アメリカ PCEデフレーターの推移
PCEデフレーターで米国の根強いインフレ圧力が確認されたことで、短期金融市場では次回の連邦公開市場委員会(FOMC、6月13-14日開催)での追加利上げが意識される状況にある。
この点をFEDウォッチツールで確認すると、29日7時時点での利上げ確率が66%まで上昇している。
6月FOMCの利上げ確率
今週の注目材料は米国の雇用関連指標
根強いインフレ圧力が確認されたこと、そして6月のFOMCで追加の利上げが意識されている状況は、米金利の上昇圧力を高める要因である。
米金利が上昇トレンドを維持する場合、外為市場では米ドル高のトレンドをサポートするだろう。
今週も米金利の上昇と米ドル高のトレンドが続くかどうか?については、雇用関連指標の内容が左右する可能性が高い。今月31日に4月の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数、6月1日に5月のADP雇用統計と前週分の新規失業保険申請件数、そして同月2日に5月の雇用統計が発表される。
4月のPCEデフレーターで米国のインフレ圧力の根強さが確認されるなか、今週の雇用関連指標で労働市場がタイトな状況にあることを示す内容が続く場合は、6月の追加利上げだけでなく年内の利下げ観測も後退することが予想される。
この点について短期金市場の動向を確認すると、連邦準備制度理事会(FRB)が今年いっぱい政策金利(FFレート)を5%台の高水準で維持する可能性を織り込み始めている。
米政策金利の予想推移
ドル円の展望とテクニカルポイントについて
上値トライを意識する状況が続く
今日は米英市場が休場のため、外為市場が大きく動くならば30日以降となろう。
今週のドル円(USDJPY)は、引き続き新たなレジスタンスの水準を探る展開が予想される。先週26日の市場では、高値140.72レベルまで上昇する局面が見られた。
今週の米経済指標では、雇用関連以外にも注目しておきたい指標がある。そのひとつが、30日の5月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)である。各市場では現在、インフレの動向のみならず景気の先行きも意識する状況にある。この状況を考えるならば、消費者心理を反映する消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)の内容で、米金利と米ドル相場が動く展開が予想される。
5月の市場予想は99.0と、前月の101.3から低下する見通しとなっている。4月に68.1まで低下している期待指数も含めて消費者心理の悪化傾向を示す内容が確認される場合は、米金利の低下と米ドル高の調整材料になり得る。
しかし、4月のPCEデフレーターでインフレ圧力の根強さがあらためて確認された状況を考えるならば、今週は雇用関連指標の内容が米金利と米ドル相場のトレンドを左右することが予想される。
消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)が予想以上の強さを見せる場合は、米金利の上昇と米ドル高の要因と想定しておきたい。
消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)の推移
上昇局面でのチャートポイント
ドル円(USDJPY)のMACDを確認すると、上昇トレンドの勢いが増していることを示している。この状況で今週の米経済指標(特に雇用関連の指標)が米ドル高要因となる場合は、ドル円の上昇幅が拡大することが予想される。
本日早朝に、先週26日の高値140.72レベルを突破し、高値140.86レベルまで上昇する局面が見られた。141.00レベルをトライするシグナルが早くも点灯している。
ドル円が141円台の攻防へシフトする場合、最初に注目しておきたいチャートポイントが、22年11月23日の高値141.61レベルである。ドル円がこの水準をもあっさりと上方ブレイクする場合は、142.00をトライするシグナルになり得る。
テクニカルの面では、22年の最高値151.94レベルと23年1月の安値127.22レベルの61.8%の水準142.50レベルをトライするかどうか?この点が焦点となろう。
一方、ドル円が141円台へ上昇した後に反落しても、この水準(141円台)の維持に成功する場合は、142円トライを意識する状況が続くと予想する。
ドル円のチャート
積み上がる円のショートポジション
米商品先物取引委員会(CFTC)の5月23日終了週のデータによれば、非商業部門(投機)による円のポジションがネットショートで8万枚を超えてきた。この水準は、22年10月下旬以来となる。
円のショートが積み上がっている状況で、今週の米経済指標が総じてさえない内容となれば、円ショートを巻き戻す要因になり得る。
だが、債務上限問題を巡る協議でバイデン米政権と野党共和党が土壇場で基本合意に達した状況を考えるならば、日米株高(リスク選好相場)による円安が続く展開が予想される。
ゆえに、さえない米経済指標が円ショートポジションを巻き戻す要因となっても、ドル円(USDJPY)の下落幅は限定的となる可能性がある。
投機筋の円ポジション動向:日本円
反落局面での焦点は?
ドル円(USDJPY)が反落する場合、目先の下限を138.00レベルと想定したい。この水準を目指すシグナルとして、目先は10日MAの攻防に注目したい(上の日足チャートを参照)。この移動平均線は、今日現在138.80台まで上昇している。
ドル円が10日MAをトライするシグナルとして安値137.48レベル、高値140.86レベルを前提としたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい(下の1時間足チャートを参照)。
ドル円が23.6%戻し140.07レベルをトライする場合は、140円台を維持できるかどうか?を見極める攻防となろう。
半値戻しの水準(139.17レベル)では、相場がサポートされた経緯がある。今週29日から30日のNYタイムの間、短期サポートラインが38.2%戻しと半値戻しの間で推移する。このラインを維持する場合は、上値トライが続くシグナルと想定しておきたい。
10日MAが推移している138.80レベル(リトレースメント61.8%の水準)では、”サポート転換”の兆しが見られる。ゆえに相場をサポートした経緯のある半値戻しからサポート転換の可能性がある61.8%戻しまでの水準を「サポートゾーン」と捉えることもできる。
上で取り上げた各チャートポイントをドル円がトライする局面でストキャスティクスやRSIが売られ過ぎの状況にある場合は、ドル円の短期的な反発相場を想定したい。
ドル円のチャート
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