FOMCの焦点と外為市場の展望 / ドル円の見通しとチャートポイント
市場参加者の関心は、連邦公開市場委員会(FOMC)に集中している。パウエルFRB議長の言動次第で、米ドル相場の新たなトレンドが発生する可能性がある。ドル円の展望は?注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点は、パウエルFRB議長の言動にある
・パウエルFRB議長が市場の思惑を強く否定するかどうか?この点に注目したい
・ドル円は新たなレジスタンスの水準を探る状況が続く
・レジスタンスポイントの候補として142.00と143.00の水準が浮上している
連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点と外為市場の展望
焦点はパウエルFRB議長の言動
25日の外為市場は米ドル安優勢の展開となったが、米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)の下落幅は限定的だった。
市場参加者の関心は、連邦公開市場委員会(FOMC)の動向とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の言動に向いている。これらの内容次第で、米ドル相場には新たなトレンドが発生する可能性がある。
昨年の9月をさかいにして、アメリカのインフレは鈍化の傾向をたどっている。しかし、消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)のコアインフレ率はともに4%台で推移し、FRBの物価目標「2%」と比べてはるかに高い水準にある。
アメリカのコアインフレ率
この状況を考えるならば、パウエルFRB議長はインフレ抑制重視のスタンスを維持する公算が大きい。
だが、次回のFOMCは9月19日~20日に開催される。約1ヶ月半の間に多くのデータが入手でき、それらをもとに利上げ政策の影響を見極める時間が十分にあることを考えるならば、今後の金融政策についてパウエルFRB議長は「データ次第」の姿勢を強調する可能性がある。
追加の利上げについては含みを持たせながらも明言を避けつつ、インフレが鈍化の傾向をたどっている状況でデータ重視(23年半ばまではインフレリスクが意識される状況でのデータ重視だった)という姿勢を強調する場合は、短期金融市場や米債市場で7月会合での利上げサイクル終了を想起させる可能性がある。
FOMCを前に米ドル相場が反発してきた状況も考えるならば、上のケースでは米ドル安優勢の展開が予想される。
パウエルFRB議長が市場の思惑を強く否定する場合は?
米債市場では、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが再び4.9%台まで反発する局面が見られている。この動きに連動し、外為市場では米ドルが買い戻されてきた(下チャートのグレーゾーンを参照)。
これらの動きは、そう簡単にパウエルFRB議長が利上げサイクルの終了を宣言しないのでは?という市場参加者の警戒心を示唆している。
米2年債利回りと米ドル相場のチャート
上で述べたとおりアメリカのコアインフレ率は4%台と、FRBの物価目標「2%」と比べてはるかに高い水準で推移している。
労働市場は堅調さを保っており、直近3か月の雇用統計では賃金の上昇率が前月比で0.4%増、前年同月比で4.4%増と、賃金インフレの粘着性を示唆する状況にある。
パウエルFRB議長がインフレの根強さに警戒心を示し、インフレリスク再燃の可能性が潰えるまで追加利上げの姿勢を強調する場合は、米金利に上昇の圧力が高まることが予想される。またこのケースでは、期待先行(7月の利上げを最後にFRBは利上げサイクルを終了するという期待)で上昇してきた米国株の下落も想定しておきたい。
米金利の上昇と米国株の下落が同時に発生する場合、外為市場では米ドル高の進行が予想される。
アメリカの賃金動向
ドル円の見通しとチャートポイント
上昇の局面では142.00レベルの攻防が焦点に
ドル円(USD/JPY)は、新たなレジスタンスの水準を探る相場が続いている。その候補として現在は、142.00レベルが浮上している。
日足チャートで直近のトレンドを確認すると、142.00の手前で反発が止められていることが分かる。
すぐ上の水準142.08レベルは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。このテクニカルポイントは、7月7日の下落相場を止めた経緯がある。
ゆえに、ドル円が上昇する局面では、142.00レベルがレジスタンスへ転換するかどうか?この点を確認したい。
FOMCイベントが米ドル安の要因となり、ドル円の下落幅が拡大する場合は、レジスタンスポイントとしての142.00レベルの存在感がさらに増すだろう。
もうひとつのレジスタンスの候補
一方、FOMCイベントが米ドル買いの要因となる場合は、143.00レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。
この水準(143.00レベル)は、7月10日にドル円の上昇を止めた経緯がある。その際、日足ローソク足では長い上ヒゲが示現した。一方、6月26日にこの水準(143.00レベル)が相場をサポートした時は、長い下ヒゲが示現した。
つまり、今月10日の動きは、143.00レベルがレジスタンスへ転換した可能性を示唆したことになる。
ドル円の上昇局面で再び同じ展開(143.00レベルで相場の上昇が止められる状況)が確認される場合は、145.00レベルと143.00レベルで新たな短期レジスタンスラインが形成される展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:日足
下落局面で注目しておきたいチャートポイントは
FOMCイベントがドル円(USD/JPY)の下落要因となる場合は、現在相場をサポートしているフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準140.84レベルを完全に下方ブレイクし、節目の140.00をトライする展開を想定しておきたい
フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準140.15レベルの下方ブレイクは、140.00をトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円の下落幅が拡大する場合に注目したいのが、139.60前後での攻防である。この水準は先週19日と20日に、ローソク足の実体ベースでレジスタンスとしてもサポートとしても意識された経緯がある。テクニカルの面では半値戻しの水準(139.60レベル)にあたる。
今日現在、139.90前後で推移している10日MAを下方ブレイクする場合は、ドル円が139.60レベルをトライする展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:4時間足
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