米長期金利が4%台へ上昇 / 米雇用統計と外為市場の予想シナリオ
強い経済指標を受けてアメリカの長期金利が4.0%台へ上昇している。この状況で今日は6月の米雇用統計が発表される。予想される外為市場のシナリオは?ドル円の展望と注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※目先のポンド円の展望についてはこちらのレポートをご覧ください
サマリー
・強い経済指標を受けて米長期金利が4.0%台へ上昇している
・今日の外為市場(米ドル相場)は6月の米雇用統計で上下に振れる展開が予想される
・“強い米雇用統計”ならば、外為市場では2つのシナリオに注目したい
・米雇用統計後のドル円の展望および注目のチャートポイントについて
強い経済指標で米長期金利が4%台へ上昇
6日の米債市場で10年債利回り(長期金利)が4.0%台へ乗せ、一時4.08%台まで上昇した。
米長期金利の上昇要因となったのが、強い経済指標だった。6月のADP雇用統計は予想の22.5万人を大幅に上回る49.7万人となり、1ヶ月で50万人近く雇用が増加した。
また、6月のISM非製造業景気指数の雇用も49.2から53.1へ改善し、労働市場の堅調さを示唆した。ISM非製造業景気指数全体では53.9と予想の51.2を大きく上回っただけでなく前月の50.3から大幅に改善し、サービス業の景況感の強さを示した。
筆者が注目している新規失業保険申請件数は24.8万件と、ほぼ予想(24.5万件)どおりとなった。失業保険継続受給者数は173.3万人から172.0万人へ減少し、労働市場の堅調さを示す内容となった。
米長期金利のチャート
6月の米雇用統計と外為市場のシナリオ
強い雇用統計のケースでは2つのシナリオに注目
昨日の雇用関連指標では、アメリカの労働市場の堅調さを示す内容が確認された。
この状況で今晩、6月の米雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数変化が予想(23.0万人)以上となり、かつ賃金の伸びが再び加速する場合は、労働市場のタイトな状況とそれに伴うインフレリスクが意識されよう。米債市場では、長期金利がさらに上昇する可能性がある。
アメリカ雇用統計の推移と6月の市場予想
※緑のバーチャートとドットは6月の市場予想 / 市場予想:ブルームバーグの予想
シナリオ1:米ドル高の進行
6月の米雇用統計で強い内容が確認される場合、外為市場では2つのシナリオを想定しておきたい。
ひとつは、米金利の上昇による米ドル買いである。昨日は「強い経済指標→米金利の上昇→米ドルの買い戻し」の展開となった。米雇用統計が強い内容となれば、今日の外為市場でも昨日と同じ展開になることが予想される。
また、「米金利の上昇→米株安」によるリスク回避の米ドル買いも重なることで、米ドル高が進行する展開が予想される。
シナリオ2:円高の進行
もうひとつのシナリオは、円高の進行である。
昨日の円相場のパフォーマンスを確認すると、主要通貨に対して円が全面高となった。円高の主因となったのが、日米の株式市場で株高を調整する動きが加速したことである。
今日の日本株は米株安が重石となり、これまで急速に進行してきた株高を調整する相場が続くことが予想される。そして強い雇用統計が米株高の調整相場(下落)をさらに促す場合は、クロス円を中心に円高の進行が予想される。
円相場の動向:7月6日
さえない米雇用統計では米国株の反応が焦点に
一方、6月の米雇用統計で非農業部門雇用者数変化が予想の範囲内または予想以下となり、賃金の上昇が抑制され、かつ失業率が予想どおりもしくは予想外に上昇する場合は、「米金利の低下→米ドル安優勢」の展開を予想する。
このケースで注目したいのが、米国株の反応である。さえない米雇用統計の内容が金融引き締め長期化の懸念を一時的に後退させる要因となれば、米国株は反発することが予想される。
米金利の低下と米国株の反発が同時に発生する場合、外為市場では米ドル安が進行する一方で欧州通貨、オセアニア通貨そして新興国通貨は対米ドルで上昇することが予想される。
一方、さえない米雇用統計が将来の景気不安を高める場合、米国株は続落することが予想される。このケースでは、リスク回避相場を意識した円高の進行を想定しておきたい。
米金利の低下と米株安が同時に発生すれば、クロス円だけでなくドル円(USDJPY)でも下値をトライするムードが高まるだろう。
ドル円の展望とチャートポイント
米ドル買い対円買いの戦い
6月の米雇用統計で労働市場のタイトな状況が確認される場合、「米金利の上昇→米ドル買い」の展開が予想される。米ドル買いは、ドル円(USDJPY)のサポート要因となろう。
しかし、145.00レベルの突破に失敗し続け、ジリジリと水準が低下しているタイミングで「米株安→円の買戻しがさらに進行→クロス円で下落幅が拡大」すれば、その影響はドル円にも波及しよう。
ゆえに、強い米雇用統計が確認されてもドル円は145.00レベル、またはIG為替レポートで何度か取り上げた145.00-20ゾーンで上昇が止められる展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート:1時間足
下値のチャートポイント
ドル円(USDJPY)が下値トライとなる場合は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準143.59レベルがサポートポイントとして意識される可能性があることを6日のIG為替レポートで指摘した。昨日のドル円は、このテクニカルポイントを若干下回る143.55レベルで反発した(上のテクニカルチャートを参照)。
6月の米雇用統計が米ドル安または円高の要因となる場合、ドル円が再び143円ミドルの水準をトライする展開を想定しておきたい。特に円高(円安を調整する相場)が進行する場合は、143.50レベルの下方ブレイクを警戒しておきたい。
ドル円が143円ミドルの水準を完全に下方ブレイクする場合は、143円台の維持が焦点として浮上しよう。直近高安の半値戻しが143.14レベルである(上のテクニカルチャートを参照)。このテクニカルポイントの攻防は、143円台を維持する攻防でもある。
ドル円が143円台を維持する場合は、来週以降、レンジの下限が144.00から143.00へ1円程度切り下がる状況を想定しておきたい。
一方、ドル円が143円台の維持にも失敗する場合は、21日MAのトライが焦点として浮上しよう。この移動平均線は今日現在、142.65前後で推移している(上のテクニカルチャートを参照)。
なお、昨日のドル円の下落を受けても通貨オプション市場のリスクリバーサルや予想変動率に大きな動きは見られない(下のラインチャート青ゾーンを参照)。
よって、6月の米雇用統計でドル円が下落しても、上で述べたテクニカルポイント(チャートポイント)でドル円はひとまず反転する展開を予想する。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率の推移
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