中東リスクとFOMCについて
中東リスクが意識され原油価格は急騰しました。しかし、より肝心なのは各市場の反応です。現状、ヒステリックな反応が見られない状況を考えるに、投資家のリスク選好スタンスは根強いと言えます。中東情勢以外で今週注視すべきはFOMCです。今回の焦点は?マーケットレポートをご覧ください。
・中東リスクと各市場の反応
サウジアラビアの石油施設に対する攻撃を受け、NY原油先物価格(10月限)は約4カ月ぶりの高値水準63.38ドルまで一時急騰する局面が見られた。注視すべきは価格急騰に対する各市場の反応だが、米株は下落したものの値幅自体は限定的だった。一方、各ボラティリティ指数-VIX(S&P500)、VXN(ナスダック100)も20ポイント以下での推移が継続している。米債市場では長期金利(以下米金利)が低下したが、1.80%台の水準を維持した。外為市場では円買い圧力が高まったが、欧州通貨(ユーロ / 英ポンド)と新興国通貨の一角(インドルピー / トルコリラ)以外、円の上昇幅は限定的だった。今後も原油価格が急騰し続ける場合、株安、米債買いそして円高というリスクシナリオを想定すべきだろう。しかし現状では各市場、特にリスク選好の先導役である米株が中東リスクに対してヒステリックな反応を示していない事実は重要である。上述したボラティリティ指数の動向やレポート執筆時点(午前7時過ぎ)での米株価指数先物がプラス圏で推移している状況も考えるならば、投資家の根強いリスク選好スタンスがうかがえる。米株が崩れない限り(リスク回避相場へ転じない限り)、外為市場で円高圧力が高まっても上昇幅は限定的と予想する。
【NY原油価格(WTI)】
・FOMCとパウエルFRBの見通し
今年に入り米株高の土台となってきたのは、FEDの金融緩和スタンスである。その行方を見極める上で今週のFOMCは重要なイベントになろう。金利先物市場から算出される直近の利下げ確率を確認すると、70%の水準を割り込んでいる。だが、予想ターゲットレートが1.95%前後で推移している状況を考えるならば、0.25%の利下げがメインシナリオであることに変わりはない。よって、今回の焦点はパウエルFRBが考える最新の経済見通しにある。直近の指標データは強弱まちまちながらも米国経済がすぐに景気後退局面に陥るシグナルは確認されていない。良好な指標データを背景に米金利が反発基調にあることでイールドカーブ(10年債利回り-2年債利回り)の逆転リスクも後退中。パウエルFRBが米国経済の見通しについて強気のスタンスを維持し、且つ利下げの打ち止めを示唆するならば、米債市場では債券ロングの解消がさらに進行しよう。一方、米株には調整の反落圧力が高まろう。このケースでの外為市場では「米ドル買い / 新興国通貨売り」の展開を予想する。
一方、先行きに対する警戒レベルを引き上げある場合、パウエルFRBは現在の緩和スタンスを維持するだろう。このケースでは急速に調整(=米債ロングの解消)が進行した米債市場では、金利に再び低下圧力が高まろう。一方、米株は金融緩和スタンスの継続が意識されることで株高トレンドを維持しよう。このケースでの外為市場では、「米ドル売り / 新興国通貨&資源国買い」 の展開を予想する。
【米国市場】
【イールドカーブ】
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