ソニーグループ、株価上昇 決算1か月で13% 半導体の見通しに影
ソニーグループの株価上昇は、ゲーム事業の好調とカドカワ買収協議が追い風。ただし半導体事業の成長は見通しが悪くなっている。
ソニーグループの株価が約1か月前の決算発表から勢いづいている。5日の終値は、決算発表当日の11月8日終値との比較で13%高。ゲーム事業が牽引した2024年7-9月期の好決算に加え、知的財産(IP)獲得が期待されるKADOKAWA(カドカワ)買収に向けた協議に入っていることが追い風となっている。ただし注目度の高い半導体事業では、10月以降の出荷が当初の想定を下回る見通し。人工知能(AI)向けを除く半導体市場は回復が緩やかで、ソニーグループの成長の原動力になるとの期待が薄れていく可能性もある。
ソニーグループの株価は決算発表から1か月で13%上昇
ソニーグループの株価(6758)の5日の終値は前日比0.09%安の3167円。7-9月期決算が発表された11月8日終値との比較では12.89%高で、同じ期間の日経平均株価(N225)の0.27%安を大きく上回っている。決算発表翌日の9日の終値は6.04%高、カドカワ買収協議が伝わった翌日の20日は2.79%高となっており、2つの好材料が株価の見通しを明るくしたといえそうだ。
株価上昇のきっかけとなった7-9月期決算は、総収入が前年同期比2.7%増の2兆9056億円、営業利益が73.0%増の4551億円だった。ブルームバーグがまとめた事前予想は、総収入が3兆0200億円程度、営業利益が3329億円程度だった。総収入は市場予想を下回ったものの、ソニー生命が保有する外貨建て保有資産が円高で目減りした影響が大きく、金融事業を除いたベースでの総収入は前年同期比9.0%増という高い成長を示していた。
ゲーム事業は収入と利益がともに好調 カドカワ買収ならIP獲得に期待
成長を牽引したのはゲーム事業だ。収入は前年同期比12.3%増の1兆0715億円。増収分の1174億円のうち円安の影響は332億円で、成長の多くはゲームソフトの販売増加などがもたらした。また、営業利益は前年同期の2.8倍にあたる1388億円で、2023年11月に投入したプレイステーション5(PS5)の新モデルへの移行が進んでいることなどが寄与したという。10-12月期は年末商戦に向けて販売促進を強化する方針で、ゲーム事業の2025年3月期の見通しは収入と営業利益がともに上方修正された。
またソニーグループによるカドカワ買収への期待も大きい。カドカワは20日にソニーグループから「株式の取得に係る初期的意向表明」を受けたことを公表。アニメやゲームのヒット作に関わるIPを数多く保有しているカドカワがソニーグループの傘下に入れば収益力の強化につながるとの期待が広がっている。ソニーグループによるカドカワ買収協議は19日午後の取引時間中にロイターが報じた。
ソニーグループの株価は5月、米メディア大手パラマウント・グローバルに対して買収を提案したと報じられた際は、投資ファンドと共同で260億ドルもの資金を投じるとの内容が嫌気され、株価の下落を招いていた。これに対してカドカワの時価総額は5日時点で6300億円程度。ソニーグループが2027年3月期までの3年間の戦略投資枠として設定している1兆8000億円に収まる金額で、投資家の不安は高まっていないようだ。十時裕樹社長は5月の決算会見で、この資金枠を成長事業と位置付ける映画、音楽、ゲームのいずれにも偏らないように投資する方針を示していた。
半導体事業は見通し下方修正 「大手顧客」の生産計画見直しが影響
一方、ソニーグループの決算で注目度が高い半導体事業には不安がありそうだ。7-9月期は、収入が前年同期比31.8%増の5355億円、営業利益が約2倍にあたる924億円と好調。増収幅の1293億円のうち円安の影響は297億円にとどまり、スマートフォン向け画像センサーの売り上げ増加などの貢献が大きかった。ただし10月以降の半導体事業は収入が想定を下回る見込みで、2025年3月期の見通しは下方修正された。「大手顧客」が生産計画を見直したことが影響したという。ソニーグループはアップルのiPhone(アイフォン)向けに画像センサーを供給している。
半導体市場ではAI向け製品の需要は強いものの、スマホ向けを含む従来製品の需要回復は緩やかだとされている。アップルも9月に発表したアイフォン16シリーズはAIサービスの拡充や米国英語以外の地域での展開が段階的に進んでいくことから、過去の新製品でみられたような急激な販売増加にはつながらないとの見通しを示唆している。半導体事業の成長加速が見込めない状況が続けば、ソニーグループの業績に対する投資家の評価が下押しされることも考えられそうだ。
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