米国株、安定上昇 S&P500が5連騰 利下げ見通しが追い風に
2024年のS&P500は大幅下落が少ない安定飛行。一方、アメリカ経済減速のおそれもくすぶり、9日のFRBのパウエル議長の議会証言が注目される。
アメリカの株式市場が安定的な上昇を続けている。S&P500種株価指数の8日の終値は0.10%高で、1月下旬以来の5連騰を記録。S&P500の値動きは、2024年に入って前日比の下落率が2%を超えたことはなく、5月以降は1%超えもないという安定ぶりだ。背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しの維持と、人工知能(AI)ブームに乗った半導体株の急騰があり、投資家の楽観ムードは強まっている。ただし利下げ期待を裏付けている米国の物価上昇圧力低下は、景気減速という企業活動への逆風の裏返しである可能性もぬぐえず、FRBのジェーローム・パウエル議長が9日の議会証言で示す景気判断にも注目が集まりそうだ。
アメリカのS&P500は1月下旬以来の5日連続上昇
S&P500(SPX)の8日の終値は5572.85で、1日から5営業日連続で前日比での上昇を果たした。5日続伸は1月18日から25日までの6日続伸以来の記録。長期金利(10年物米国債利回り)は4.2%台を維持しており、投資家にとって安心材料となっているようだ。
S&P500の前年末比での上昇率は8日終値で16.84%高に達しており、2023年の同時期(7月7日)の14.57%を超えた。しかも2024年の値動きは安定感でも2023年に勝っている。前日比の下落率が2%を超えたのは、2023年の1回に対して2024年は0回。1%を超える下落率は2023年の16回に対して、2024年は11回だ。5月以降に限ってみれば2024年は1%超の下落がない。
S&P500の安定は利下げ見通しと半導体株の上昇が要因
S&P500の安定ぶりを裏付けているのは、FRBの利下げ見通しだ。CMEグループのデータによると、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)までの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間9日午前11時段階で74%。また、LSEGのデータでは金融市場では12月のFOMC後の政策金利は4.825%程度と見積もられており、現状の5.25-5.50%から0.25%幅の利下げが年内に2回あることが想定されている。金利水準が下がれば、株式の投資先としての相対的な魅力が上がるため、S&P500にとっては追い風になるとされる。
また、S&P500にとってはAIブームへの継続見通しも好材料。8日の取引ではAI開発に不可欠な半導体を供給するNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価が1.88%高となったほか、同じく半導体大手のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が3.95%高、ブロードコム(AVGO)が2.50%高となっている。また、S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価は2023年末比で2.46倍になっており、エヌビディアの2.59倍に匹敵する成績になってきた。
FRBのパウエル議長は9日に議会証言 景気見通しは?
ただし米国経済をめぐっては、5日発表の6月雇用統計で失業率が2年7か月ぶりに4.1%まで上昇。また、米サプライマネジメント協会(ISM)が1日と3日に発表した、製造業と非製造業(サービス業)の6月の景況感指数はいずれも市場予想を下回った。物価上昇圧力の低下を示す材料ではあるが、景気減速の可能性を感じさせる悪い指標ととらえることもできる。
FRBの政策金利が現状の高水準に達したのはほぼ1年前。長期化する高金利環境が個人や企業の経済活動を抑え込む効果が強くなってきている可能性がある。FRBのパウエル氏は9日午前10時(日本時間9日午後11時)からの上院銀行・住宅・都市問題委員会での公聴会に出席し、半期に1度の議会証言を行う予定。パウエル氏が景気の見通しに弱気な姿勢をみせれば、投資家のS&P500に対する期待が後退する可能性もありそうだ。
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