S&P500快走　ハイテク株高で最高値更新継続　失業率悪化は凶兆か

アメリカの株式市場が快走を続けている。S&P500種株価指数の5日の終値は1週間前比で1.95％高。この1週間で最高値を3度塗り替える力強さだ。電気自動車（EV）大手のテスラをはじめとするハイテク株が決算シーズンを前にして勢いを取り戻している。一方、5日に発表された6月雇用統計では、失業率が2年7か月ぶりに4.1％まで上昇。労働市場の変調は米国経済の見通しにとって不安材料だといえそうだ。しかし金融市場では米連邦準備制度理事会（FRB）の利下げが近づいたとして好材料視されたもようで、投資家心理の冷え込みは感じられない。

S&P500は3営業日連続で最高値更新　テスラ株など上昇

S&P500（SPX）の5日の終値は前営業日比0.54％高の5567.19。独立記念日の休日を挟んで3営業日連続で最高値を更新した。週次での値上がりは2週ぶりで、上昇率は大手ハイテク企業の決算が好感された4月22-26日週(2.67％高)以来の大きさとなった。

このところのS&P500の上昇を支えているのも大手ハイテク株だ。テスラ（TSLA-US|TSLA]）の5日の終値は前営業日比2.08％高。2日に発表した2024年4-6月期の販売台数の結果が想定ほどは悪くなかったことが株価上昇に拍車をかけ、1週間で27.11％の上昇となっている。週次での上昇率では、アップル（AAPL）も7.46％高、メタ・プラットフォームズ（META）も7.08％高と好調だ。テスラは23日、メタは31日に決算を発表する。

アメリカの雇用統計は失業率が2年7日月ぶりの高さに上昇

一方、金融市場の関心が集まっていた6月の雇用統計では悪い兆しも出た。失業率が4.1％となり、5月の4.0％から上昇。2021年11月（4.1％）以来の高さになっている。市場予想の4.0％も上回った。失業率が前月よりも高くなるのは3か月連続で、悪い流れだ。FRBは6月に示した経済見通しで、2024年10-12月期の失業率は平均で4.0％になるとみており、6月の結果は上振れ気味といえる。

また、6月雇用統計では非農業部門の就業者数が前月比20.6万人増となり、労働市場の堅調さも示されている。しかし4月と5月の就業者数の増加幅は、それぞれ5.7万人と5.4万人分下方修正され、10.8万人増と21.8万人増になった。3か月平均では17.7万人増となり、3年5か月ぶりの低さとなっている。

失業率悪化でFRBの利下げ見通しは強まる

ただ、こうした米国経済にとっての凶兆は、株式市場では好材料として消化されたようだ。労働市場の変調は物価上昇圧力の弱まりを意味し、FRBの利下げが実現しやすくなる要因になるからだ。

5日のニューヨーク債券市場での長期金利（10年物米国債）の終値は4.273％で、5営業日ぶりの4.2％台まで下がった。CMEグループのデータによると、9月の連邦公開市場委員会（FOMC）までの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間6日午前11時現在で71％となっており、前日の67％程度から利下げ見通しが強まっている。

投資家の楽観ムードは、ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数（VIX）の値動きからも感じられる。シカゴ・オプション取引所（CBOE）によると、5日のVIXの終値は12.48で、9営業日連続での12台という低水準を維持している。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出される数値で、数字が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。

しかし労働市場の変調が続いていけば、投資家心理を悪化させる要因になることは避けられない。今後、労働市場をめぐる経済指標の結果が出るたびに、S&P500の見通しが揺れ動く可能性もありそうだ。