エネルギー価格の上昇と重要性が増す米経済指標 / ドル円の焦点とチャートポイント
パウエルFRB議長によるジャクソンホール講演は各市場で「タカ派」と受け止められた。今後の焦点は米国の経済指標である。特に雇用とインフレ関連の経済指標は9月FOMCに対する市場の思惑に大きな影響を与えるだろう。今週のドル円の焦点とチャートポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
エネルギー価格の上昇と重要性が増す米経済指標
【サマリー】
・思惑先行の米国株と冷静な米債市場
・今のエネルギー価格の動向は米金利の上昇要因
・重要性が増す米国の経済指標
・ドル円の焦点とチャートポイント
・思惑先行の米株式市場 冷静な米債市場
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長によるジャクソンホール講演は、各市場で「タカ派」の内容と捉えられた。
重要なことは、「タカ派のパウエル講演」に対して26日の各市場がどのような反応を示したのか?である。
結論から言うと、米国の株式市場は思惑先行による株高の脆弱さを露呈した。一方、米国の債券市場では利回りが上昇したがその幅は限定的であり、米債市場の参加者が経済情勢を冷静に捉えていることを示唆する動きとなった。
外為市場では米ドル買い優勢の展開となった。米ドル相場の方向性を示すドルインデックス(DXY)は、レジスタンスとして意識されている109.00ポイントの攻防が焦点となっている。
26日の米国市場と米ドル相場のパフォーマンス
・エネルギー価格と米金利
パウエル講演を受け米債市場では各利回りに上昇の圧力が高まった。しかし、その反応はまちまちだった。
金融政策の方向性を織り込みながら動く2年債利回りの上昇率が10年債利回り(長期金利)のそれを上回った状況は、9月連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げを意識した動きである。事実、短期金融市場では、75bps(ベーシスポイント)の利上げ確率が60%台まで上昇している(FEDウォッチ)。
一方、長期金利の上昇は抑制された。持続的な大幅利上げに伴う景気のさらなる減速とその先にあるリセッション(景気後退)のリスクを意識していることを示唆する動きである。
だが、市場参加者は長期金利が再び3.5%の水準をトライする展開を想定(警戒)し始めている。
その理由は、エネルギー価格の動向にある。天然ガス先物市場では、アジア諸国と欧州諸国による争奪戦の様相を呈している。天然ガスの生産/輸出をしているオーストラリアでは、自国の需要を賄うために輸出規制に乗り出す動きが見られる。こうした状況を受け、NY天然ガスの先物価格(NGS)は高止まりしている。この動きに連動して米長期金利は8月以降、上昇基調にある(下のチャートを参照)。
そしてこのタイミングでOPECプラスによる減産の可能性が報道され、北海ブレント原油先物価格(CRU)は再び100ドルの水準を突破してきた。
エネルギー価格の上昇はインフレの低下を阻む最大の要因である。「インフレ抑制重視」のスタンスをあらためて表明したパウエルFRB議長と今のエネルギー価格の動きを考えるならば、米金利は調整の低下を挟みながら9月FOMCに向けて上昇基調を維持する可能性が高まっている。
エネルギー価格と米長期金利のチャート
・重要度が増す米経済指標
タカ派の内容と捉えられたパウエル講演と現在のエネルギー価格の上昇は、9月FOMCでの75bps利上げの可能性を押し上げている。
しかし、実際にパウエルFRBが3回連続で75bps利上げをするかどうかは、経済指標次第である。この点について、パウエルFRB議長のスタンスは一貫しているからだ。よって、米経済指標の重要性がさらに高まってきたと言える。なかでも雇用とインフレに関する経済指標は、9月FOMCの判断を大きく左右するだろう。
9月2日に8月の米雇用統計が発表される。総じて強い内容-例えば失業率の低下と賃金の上昇が確認される場合、各市場では3回連続の75bps利上げを強く意識するだろう。
強い雇用時計は米金利のさらなる上昇要因となろう。一方、思惑先行の脆弱さが露呈した米国の株式市場では、高PERの銘柄を中心に下落の圧力が高まることが予想される。
米金利の上昇と米国株の下落が同時に発生する場合、外為市場では米ドル高の圧力が最も高まりやすい。
なお、現時点での8月雇用統計の市場予想は以下のとおりである。
8月米雇用統計の予想中央値
ドル円の焦点とチャートポイント
・139.00の攻防
上で述べたとおり米金利は9月FOMCに向けて上昇する可能性が高まっている。よって、ドル円(USJDPY)の焦点は、新たな高値の水準の見極めとなろう。
この点を考える上で注目すべきチャートポイントは139.00レベルの攻防である。
週明けのドル円は上昇で始まった。そしてレジスタンスポイントの138.00レベルだけでなく、このレポートで何度か指摘してきたフィボナッチ・プロジェクション100.0%の水準138.29レベルをも突破する展開が早くも見られた(高値138.35レベル)。後者のテクニカルポイントの突破は、ドル円がさらに上昇するシグナルとなり得る。
実際にドル円の上昇幅が拡大し、7月21日の高値138.87の突破をも確認できれば、139.00トライは時間の問題となろう。139円の攻防となる場合、再びこの水準で反落するかどうか?この点が最大の焦点となろう。
・136.00の維持
一方、「米金利の低下→米ドル売り優勢」の局面では、ドル円(USJDPY)の反落を想定しておきたい。このケースでの焦点は、レジスタンスからサポートへの転換ムードが見られる137.50レベルの攻防に注目したい。
この水準(137.50レベル)を下方ブレイクする場合は、8月19日以降、サポートポイントとして意識されている136.00レベルの維持が焦点として浮上しよう。
136.00をトライするシグナルとして、10日線(MA / EMA)が密集している水準(今日現在136.60前後)を完全にブレイクするか?この点をチェックしておきたい。
ドル円のチャート
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