リスク回避の”安全通貨買い” / ドル円のチャートポイント
景気後退のリスクを反映し外為市場では”安全資産”とされる米ドルとスイスフランが上昇。そして円相場ではクロス円を中心に円高基調となっている。ドル円は底堅さを維持しているが、下落幅が拡大する局面に直面する可能性を意識しておきたい。目先のチャートポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
リスク回避の”安全通貨買い”
【サマリー】
・景気の先行きリスクが意識され米ドルとスイスフランが選好
・クロス円を中心に円高傾向が鮮明に
・ドル円のチャートポイント
・米ドルとスイスフランの上昇が示すリスクセンチメントの傾向
米国の債券市場では、2年債利回りの水準が10年債の利回りのそれを逆転する「逆イールド」の状況が発生している。
一方、国際商品市場では、原油先物価格が下落トレンドへ転じている。これらの動きは、将来の景気後退リスクを各市場参加者が意識していることを示している。
そして外為市場では、米ドルとスイスフランを買う動きが見られる。
今年の6月はリスク資産(株式 / コモディティ)が下落した月となったが、この間の米ドル相場のパフォーマンスを確認すると日本円、欧州通貨(青ライン)そして豪ドル(資源国通貨)で一段高なった。一方、スイスフランは堅調な米ドルに対して上昇する局面が見られた(USDCHF / 赤ライン)。米ドルとスイスフランは、投資家のリスクセンチメントが悪化した際に買われやすい特性がある。よって、6月以降発生している米ドルとスイスフランが同時に上昇する今のトレンドは、投資家のリスク許容度が縮小傾向にあることを示唆している。
米ドル相場のパフォーマンス
・クロス円を中心に円高基調へ
この傾向は、円相場にも見られる。米ドル相場と同じく6月以降のパフォーマンスを確認すると、対米ドルでは相変わらず下落基調(米ドル買い / 円売り)にあるが、対欧州通貨と豪ドル(資源国通貨)では、円高基調への転換が鮮明となっている。
クロス円の中で筆者が今注目しているのが、対スイスフラン(CHFJPY / 赤ライン)での動きである。上で述べたとおりスイスフランは6月のリスク回避相場を受け、堅調地合いの米ドルに対して上昇する局面が見られた。スイス国立銀行(SNB)による予想外の利上げ(政策金利を0.5ポイント引き上げマイナス0.25%とした金融引き締め政策)もスイスフラン買いを後押しした。
しかし現在は、他のクロス円に連動しスイス円は低下基調へ転じる兆しを見せている。つまり、クロス円では総じて円高基調が鮮明となっており、この動きは、過去に見られたトレンドパターン「リスク回避の円買い」が、今後強まる可能性を示唆している。
米国の債券市場では、金融引き締め政策よりも将来の景気後退の方が強く意識され、長期金利には低下の圧力が高まっている。このタイミングでのクロス円の円高基調を考えるならば、ドル円(USDJPY)は、不意打ちのような下落幅の拡大局面に直面するリスクがある。
円相場のパフォーマンス
ドル円のチャートポイント
・21日線と23.6%戻しの維持
米ドル高トレンドにサポートされ、ドル円(USDJPY)は135円台で底堅さを維持している。
現在の米長期債利回りの動きはドル円の上昇を抑制する要因だが、リスク回避の米ドル買いが欧州通貨を中心に高まっている状況を考えるならば、サポートラインとして意識されている21日移動平均線(SMA / 今日現在135.20台)または135.00レベルで反転する展開を想定しておきたい。
米国債利回りの低下幅が拡大しドル円が135円を下方ブレイクしても、リスク回避の米ドル買いが続く限りは、レジスタンスからサポートへ転換している134.50レベルで反転する展開を予想する。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%にあたる。
だが、上で述べたとおり、今はクロス円を中心に円高基調にある。米ドル売りと円買いが同時に合わさる局面では、134.50を下方ブレイクする可能性があるため要注意。
・136.00と136.70の突破
ドル円(USDJPY)の上昇局面では、136.00レベルの突破とその水準の維持が焦点となろう。今月に入り、136.00レベルがレジタンスポイントとして意識されている。
ドル円が136円台へしっかりと乗せてくる場合、次の焦点は136.70レベルのトライ&ブレイクである。ローソク足の実体ベースでは、この水準(136.70レベル)の突破に失敗し続けている。
136.70レベルの完全突破は、137.00トライのシグナルと想定しておきたい。
ドル円のチャート
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