半導体と気候変動リスクの潮流
米国ウィークリー 2019年10月23日号
- 10/15以降、米国企業の2019/12期3Q(7-9月)決算発表が始まった。米中協議への合意期待、およびFRBによる利下げ期待とともに米国株相場上昇のけん引役となった「企業業績への期待」が当面は相場の主役として注目されよう。2019/7後半にダウ工業株30種平均株価(NYダウ)が27,000ドルを上回って堅調に推移したのは、2Q(4-6月)決算発表が事前の市場予想を上回ったことによる面も大きいと考えられる。決算発表は今のところ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)やゴールドマン・サックス・グループ(GS)などの金融、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)などのヘルスケア、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス(UAL)などの航空、およびハネウェル・インターナショナル(HON)などの資本財も市場予想を上回る業績を示している。その一方、10/15週のNYダウは10/17の27,112ドルまで上昇したものの10/16発表の小売売上高(9月)、10/17発表の鉱工業生産指数(9月)、および10/18発表の中国2019/7-9月期GDPなどの数値が悪化したことから10/18終値は26,770ドルとなった。
- オランダの半導体製造装置メーカーASML(ASML)および半導体製造ファウンドリー台湾積体電路製造(TSM)が発表した3Q決算の内容に半導体業界に係る大きな変化が現われている。ASMLのリソグラフィー技術ごとの売上では、2Q(4-6月)以降にEUV(極端紫外線)露光装置が立ち上がり、ArF液浸と合計した微細半導体向け露光装置の3Q売上が前四半期比27%増となった。更に、用途別売上は、信号を蓄えるメモリ向けの3Q売上が同32%減だったのに対し信号を制御・演算処理するロジック向けが同63%増と対照的な推移となった。台湾積体電路製造の3Q売上についても、従来よりも微細な7nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)の半導体が売上の半分以上を占めた。更に、スマートフォン向けが同33%増、IoT向けが同35%増と高い増収率となっている。両社の3Q決算からは2Qから3Qにかけて「微細化」と「ロジック化」の新たな需要が急伸していることが分かる。今後の株式市場に大きな影響を与える可能性があるだろう。
- 次に、高配当利回り銘柄への投資を検討する場合、環境問題を含めた気候変動リスクとの関連を押さえておくことも重要だろう。NYダウ構成銘柄ではDOW Inc(DOW)のような化学メーカーやエクソンモービル(XOM)のような石油会社はプラスチックや化石燃料などで敬遠されやすくなっており、高配当利回りはそのリスクへの対価であるという認識を踏まえることが必要かも知れない。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(10/18現在)
■主な企業決算の予定
●10月23日(水):キャタピラー、インベスコ、サーモフィッシャーサイエンティフィック、フリーポート・マクモラン、マーケットアクセスHD、ナスダック、ヒルトン・ワールドワイドHD、ウエイスト・マネジメント、ボーイング、アンフェノール、ローリンズ、ボストン・サイエンティフィック、アレクシオン・ファーマシューティカルズ、ゼネラル・ダイナミクス、イーライリリー、エイブリィ・デニソン、ノーフォーク・サザン、アライン・テクノロジー、フォード・モーター、ロバート・ハーフ・インターナショナル、オライリー・オートモーティブ、F5ネットワークス、バリアンメディカルシステムズ、フォーチュン・ブランズ・ホーム&セキュリティ、イーベイ、ラムリサーチ、エドワーズライフサイエンス、ザイリンクス、マイクロソフト、ペイパルHD、レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル、ラスベガス・サンズ
●10月24日(木):ダナハー、シトリックス・システムズ、バクスターインターナショナル、コムキャスト、バレロ・エナジー、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、Dow Inc、ローパーテクノロジーズ、トラクター・サプライ、ノースロップ・グラマン、ハーシー、アライアンス・データ・システムズ、アメリプライズ・ファイナンシャル、レイセオン、3M、アメリカン航空G、アメリカン・エレクトリック・パワー、T.ロウ・プライスG、ツイッター、サウスウエスト航空、ベリサイン、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、プリンシパル・ファイナンシャル・G、イーストマン・ケミカル、ジュニパーネットワークス、キャボット・オイル・アンド・ガス、レスメド、ビザ、ギリアド・サイエンシズ、アマゾン・ドット・コム、SVBファイナンシャルG、インテル、イルミナ、アラスカ・エアG、フォーティブ、アフラック
●10月25日(金):VF、チャーター・コミュニケーションズ、ベライゾン・コミュニケーションズ、フィリップス66、ウェアーハウザー、イリノイ・ツール・ワークス、フランクリン・リソーシズ
●10月28日(月):ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、AT&T、DTEエナジー、ロウズ、ナショナル・オイルウェル・バーコ、アカマイ・テクノロジーズ、アルファベット
■主要イベントの予定
●10月23日(水)
・フェイスブックのザッカーバーグCEO、仮想通貨「リブラ」について下院金融委員会で証言
・FHFA住宅価格指数(8月)
・ユーロ圏消費者信頼感指数(10月)
●10月24日(木)
・欧州中央銀行(ECB)政策金利が発表・ドラギ総裁記者会見、トルコ中銀・インドネシア中銀が政策金利発表
・耐久財受注(9月)、新規失業保険申請件数(10月19日終了週)、新築住宅販売件数(9月)
・ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(10月)、韓国GDP(7-9月)
●10月25日(金)
・ECB専門家予測調査、ロシア中銀が政策金利発表
・ミシガン大学消費者マインド指数(10月)
・独IFO企業景況感指数(10月)
●10月26日(土)
・豪ウルル(エアーズロック)、観光客の登山を禁止
●10月27日(日)
・欧州夏時間終了、旧東ドイツのテューリンゲンで州議会選挙、アルゼンチンで大統領選挙第1回投票(決選投票の場合11月24日)、ウルグアイで大統領選挙第1回投票(決選投票の場合11月24日)
・中国工業利益(9月)
●10月28日(月)
・シカゴ連銀全米活動指数(9月)、ダラス連銀製造業活動指数(10月)
(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)
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