雇用統計でS&P500減速も 予想は堅調 ハイテク株や半導体株不振
雇用統計は前回発表時に株式市場のムードを変えた。再び失業率の上振れなどが起きれば、減速中のS&P500に下押し圧力がかかるおそれも。
アメリカ労働省が5日に発表する3月の雇用統計はS&P500種株価指数の今後の勢いを占う指標になりそうだ。事前予想は、就業者数の増加幅が20万人と見込まれるなど堅調な内容。しかし前回発表時に悪材料視された失業率が再び上振れするなどすれば、改めてS&P500の上昇にブレーキがかかる可能性がある。米国の株式市場では値上がりを牽引してきた大手ハイテク株の上昇ペースが鈍化。人工知能(AI)ブームに沸く半導体株も冴えない値動きが続いているだけに、3月雇用統計が相場のムードを暗くすれば、S&P500の先行きがさらに危ぶまれることになりそうだ。
3月雇用統計な就業者数や失業率が堅調になる予想
米労働省は5日午前8時30分(日本時間5日午後9時30分)に3月雇用統計を発表する。ロイターがまとめた事前予想では、非農業部門の就業者数は前月比20万人増となり、2月(27.5万人増)から低下するとみられている。また、失業率は2月と同じ3.9%になる見通し。平均時給の伸び率は前年同月比4.1%となり、2月(4.3%)から鈍化する見込みだ。予想通りになれば、労働市場の過熱感も冷え込みも感じさせない内容といえ、物価上昇圧力の高まりや景気悪化への不安は打ち消されそうだ。
ただ、雇用統計をめぐっては2月のデータが発表された際、失業率が事前予想の3.7%を上回るネガティブなサプライズと受け止められた。また就業者数の増加幅は12月分と1月分で合計16.7万人分下方修正され、米国の景気が想定ほどは強くなかったとの見方につながった。このため3月の雇用統計でも、期待通りの堅調な結果が得られないことも考えられそうだ。
アメリカのS&P500は前回の雇用統計発表後に上昇鈍化
こうした中、S&P500(SPX)の上昇ペースは減速してきた。3日の終値は5211.49で、前回雇用統計発表前日の3月7日比で1.05%の値上がりに留まる。前回発表までの1か月間では4.10%値上がりしていた。2月雇用統計は長期金利(10年物米国債利回り)が4.0%台から4.3%台まで上昇するきっかけにもなった。
2023年以降の米国株式市場を引っ張ってきた大手ハイテク株も不調だ。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価は前回雇用統計発表から足元まで4.00%値下がり。SNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)も1.06%安となっており、2024年に入ってからの急上昇が頭打ちとなった。エヌビディアと同様にAIブームが追い風となってきた半導体製造装置のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も、この間、14.48%値下がり。S&P500構成銘柄ではないものの、ソフトバンクグループ(9984)子会社で米国で上場している英半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)も11.03%安となっている。
FRBのパウエル議長はアメリカ経済の現状に高評価
一方、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は3日のカリフォルニア州での講演で、就業者数が2月までの3か月で平均約26.5万人のペースで増えていることや、物価上昇率が低下傾向にあることを評価。経済が強さを保ちながらも、今後、物価上昇率が目標とする2%に向かっていくという「経済の全体像」に大きな変化は出てないと述べた。パウエル氏は3月29日にも経済状況に満足感を示している。
ただ、経済情勢が良好なだけに期待を維持することは難しく、3月雇用統計で失業率の上昇などがみられた場合は、今後のS&P500に下押し圧力がかかるおそれがありそうだ。また、就業者数の増加幅が大きくなるなどして労働市場の過熱感がみられた場合にも、FRBの利下げが難しくなるとの観測がS&P500の重荷になる可能性も残されている。
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