強すぎる雇用統計に要注意 / ドル円とユーロドルの焦点
サマリー:「パウエルFRBが金融政策の正常化を推し進めているタイミングで強すぎる雇用統計となれば、外為市場と米国の株式市場で金利の上昇リスクが意識される可能性がある。豪ドルやNZドルの下落を警戒したい。一方、ドル円とユーロドルの焦点は?」詳細はマーケットレポートをご覧ください。
強すぎる雇用統計に要注意
・強すぎる雇用統計と金利の上昇リスク
パウエルFRB議長は11月30日の議会証言で、次回のFOMC(12月14~15日開催)の場で資産購入の縮小ペースを速めることについて討議すると指摘した。
「インフレは一過性」という表現を止めたことからもわかるとおり、パウエルFRBは金融政策の正常化を推し進めることで、インフレの抑制に本腰を入れてくるシグナルを送ってきたと考えるべきだろう。インフレの進行はもはや経済の問題を超え、バイデン米大統領の支持率低下の要因となっており、来年の中間選挙で民主党が敗北する要因にすらなりかねない政治の問題にまで発展しているからだ。
このような状況の中、今日の日本時間22時30分にアメリカ雇用統計(11月)が発表される。
問題は、“強すぎる雇用統計”となる場合である。パウエルFRBが金融政策の正常化に向けてアクセルを踏み込んできたタイミングで今回の雇用統計が強すぎる内容となれば、アメリカ金利の上昇リスクが意識されよう。
このケースでは、外為市場で米ドル買い優勢の展開が予想される。一方、オセアニア通貨や新興国通貨は対米ドルで下落すると予想する。アメリカ金利の上昇リスクは、将来の株安リスクにつながるからだ。
0.71のサポートポイントを下方ブレイクしている豪ドル/米ドル(AUDUSD)は、0.70レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。NZドル/米ドル(NZDUSD)は0.68のサポートポイントを完全に下抜け、0.67トライの展開を想定したい。
オセアニア通貨のチャート
ドル円とユーロドルのチャートポイント
・ドル円(USDJPY)
今日のドル円(USDJPY)は、米雇用統計が発表された後の動きに注目したい。上で述べたように“強すぎる内容”となれば、「米金利の上昇→米ドル買い」にサポートされ上値トライを予想する。
現在のドル円はトライアングルを形成中。下落が止まり、下値の水準が徐々に切り上がっている状況を考えるならば、強い雇用統計でレジスタンスラインを突破する場合、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準113.66もしくは50.0%の水準114.02レベルのトライを想定しておきたい。
114円を下方ブレイクした後、113.95レベルで戻りが抑制されていることを考えるならば、より注視すべきは50.0%水準のトライとなろう。なお、21日線(SMA)は今日現在、113.92レベルで推移している。
ドル円が114.00の突破に成功する場合、次の焦点は114円台の維持である。
これに成功する場合は、もう一段の上昇を想定したい。このケースでは、61.8%の水準114.37レベルのトライが焦点として浮上しよう。
一方、“強すぎる雇用統計”が米株安の要因となる場合は、上記のレジスタンスポイントをトライする局面が見られても、反落リスクを警戒したい。下値の焦点は、112.50-60ゾーンの維持で変わらず。
ドル円のチャート
・ユーロドル(EURUSD)
昨日のユーロドル(EURUSD)は、予想どおり反落した。日足ローソク足が上ヒゲ付きの陰線引けで1.13を割り込んだ状況を考えるならば、下落トレンドの回帰を意識する局面にシフトしている。
ドル円(USDJPY)と同じく、ユーロドルの焦点も今晩の米雇用統計後の動きとなろう。米欧の金融政策スタンスの差は今後さらに鮮明となるだろう。この思惑が強まる中で雇用統計が予想以上となれば、ユーロドルは下値トライを想定したい。
目先は1.1257(11/29安値)および1.1234(11/30安値)の攻防が焦点となろう。後者の水準を下方ブレイクする場合は、1.12のブレイクおよび1.1184(11/24安値)のトライを想定したい。
一方、ユーロドルが反発する場合は、このレポートで何度も指摘している21日線(EMA、今日現在1.1358レベル)およびフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準1.1378レベルの攻防が焦点となろう。
本日ユーロドルが反発するなら、そのきかっけはさえない雇用統計となる可能性が高いが、上記のレジスタンスポイントで戻りが抑制される場合は、来週以降も下落リスクを警戒する状況が続くと予想する。
ユーロドルのチャート
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