反発基調の米金利 / 米雇用統計後の展望 /ドル円のチャートポイント
サマリー:「米長期金利は良好な指標データが意識され反発基調にある。この動きが続くかどうかは今晩の7月米雇用統計次第。FEDスピーカー達からは早期のテーパリングに関する発言が聞かれる。ドル円のチャートポイントは?」。詳細はマーケットレポートをご覧ください。
良好な指標データで反発基調が続く米長期金利
この日発表された週間の新規失業保険申請件数は38.5万件と、前週の39.9万件から1.4万件改善した。また、1週間の継続受給件数も293.0万件と、コロナパンデミック以降で最低の水準となった(前週は329.6万件)。
今回のデータは7月雇用統計の調査期間にはあたらないが、各ISM指数の雇用が改善したことも考えるならば、米国の雇用情勢は改善傾向にある。
良好な指標データは、アメリカの長期金利(以下では米金利)の反発を促している。昨日は1.23%手前まで上昇した。この基調が続くかどうかは、今晩の7月雇用統計次第である。
米長期金利のチャート
米雇用統計後の展望
今週に入り、FEDスピーカー達から将来の金融政策についての発言が相次いで聞かれた。
中でも量的緩和政策の縮小(テーパリング)の条件と時期について具体的に語っていたのが、ウォラー理事である。同氏は2日、今後2回分の雇用統計がそれぞれ80万-100万人増加すれば、9月に量的緩和政策の縮小を発表し、10月に開始する可能性があると述べた。
そして昨日ウォラー氏は、米国経済と労働市場は回復しており、早期の金融緩和解除が可能になるとの見解をあらためて示した。
また、今週はカプラン・ダラス連銀総裁やブラード・セントルイス連銀総裁も早期のテーパリングについて言及している。パウエルFRB議長はテーパリングについて慎重スタンスを維持しているが、7月雇用統計前にFEDスピーカー達から相次いで早期のテーパリングに関する発言が聞かれている状況は、パウエルFRBが政策転換に向かってアクセルを踏み込んでいることを示している。
このような状況の中、今晩の7月雇用統計が市場予想を上回る場合、米債市場では米金利の反発がさらに進む可能性が高い。米金利のさらなる反発は、外為市場での米ドル買いを加速させよう。
米国の株式市場では、金利反発の恩恵を受ける銀行株の上昇が予想される。また、雇用情勢の改善はさらなる米国経済の回復につながる。よって、景気敏感株が買われる展開も想定しておきたい。
一方、金利の上昇は高PERのグロース株、特に決算をクリアできなかったグロース株にとっては売り要因である。
7月雇用統計が総じて市場予想を下回る場合は、米金利の低下圧力が高まることが予想される。外為市場では米ドル売り優勢の展開が予想される。
問題は米株の反応である。米金利の低下はグロース株にとって買い要因となり得るが、労働市場の緩慢な改善は将来の景気回復期待を削ぐ要因にもなり得る。後者の点が強く意識され、米株で調整の売り圧力が高まる場合、豪ドルや新興国通貨に対してはリスク回避の米ドル買い優勢となる可能性がある。また、米金利の低下と米株の下落が同時に発生する局面では、円が最も選好されることが予想される。
非農業部門雇用者数変化と失業率のチャート
ドル円のチャートポイント
ドル円(USDJPY)は2日連続で陽線引けとなった。7月雇用統計が市場予想を上回る場合は、50日EMA(今日現在109.85レベル)の突破が焦点となろう。これに成功する場合は、110円台への再上昇を意識したい。
110円台で注目すべき水準は、7月の下旬に相場の戻りを抑制した110.60レベル、および同月中旬のレジスタンスポイント110.70レベルである。
一方、下値の焦点は、89日EMA(今日現在109.40レベル)の攻防である。昨日は89日線で下値がサポートされた。
89日線を下方ブレイクする場合は、109.00トライを想定しておきたい。テクニカル面では、フィボナッチ・リトレースメントの61.8%の水準109.06レベルで反転するかどうか?この点を確認したい。
ドル円のチャート
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