円高進行でドル円が急落、日銀の政策動向を意識、重要テクニカルラインの攻防
4日の外為市場で円相場が急伸した。ドル円(USD/JPY)は安値154.54レベルまで急落。クロス円も総じて円高へ振れた。日銀の動向が変動要因となるなか、米金利は市場予想を下回る経済指標を受けて低下の基調にある。今日のISM非製造業景気指数もさえない内容となれば、ドル円はさらなる下値のトライを警戒したい。
サマリー
・植田日銀、今月の金融政策決定会合で国債購入の減額を検討か
・日米の利回り格差が再び縮小の傾向に、ドル円との相関が戻る
・ドル円は重要テクニカルラインの50日線と短期サポートラインの維持が焦点に
日銀、今月の会合で国債購入減額を具体的に検討も
米大手メディアのブルームバーグは4日、日銀が早ければ今月13~14日の金融政策決定会合で国債購入の減額を具体的に検討する可能性があると報じた。減額によって金利形成を一段と市場に委ねていきたい意向だという。4月会合の「金融政策決定会合における主な意見」でも国債買入れの減額に関する意見が見られている。
金融緩和政策からの完全なる脱却に向けて日銀が歩みを進めていく姿勢は、円安に対応する動きと捉えることができる。
実際、この日の外為市場は日銀のヘッドラインが材料視され、対主要通貨で円高優勢の展開となった。
ドル円(USD/JPY)は154.55レベルまで急落した。ユーロ円(EUR/JPY)やポンド円(GBP/JPY)など主要なクロス円も総じて円高へ振れた。
円相場の動向:6月4日
相関が戻るドル円と日米の利回り格差
4月の個人消費支出(PCE)価格指数でインフレの抑制傾向が確認されて以降、米国の経済指標は市場予想を下回る内容が続いている。
今月3日の5月米ISM製造業景気指数は48.7と市場予想を下回り、2カ月連続で低下した。そして、昨日の4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は805.9万件と、こちらも市場予想の835.0万件を下回った。
さえない経済指標が米金利の低下要因となり、10年債利回りは4.3%台まで低下している。一方、金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りも5%付近から4.7%台まで低下している。
注目すべきは、日米の利回り格差とドル円(USD/JPY)の動きである。下のチャートを見ると、5月は日米の利回り格差が縮小したが、根強い円安の圧力にサポートされドル円は上昇トレンドを維持した。
しかし、直近の日米利回り格差の縮小にドル円は下落で反応し、両市場の相関が戻っていることが分かる。
日米利回り格差とドル円のチャート:日足 23年11月以降
今日の変動要因は5月の米ISM非製造業景気指数
今日は5月の米ISM非製造業景気指数が発表される。市場予想では4月から改善する見通しである(以下のチャートを参照)。このため、予想外にサービス業の活動が縮小していることが確認される場合、米金利にはさらに低下の圧力が高まるだろう。
米金利の低下幅が拡大すれば、日米の利回り格差もさらに縮小するだろう。ドル円(USD/JPY)は、下で述べる重要テクニカルラインを下方ブレイクする展開を想定したい。
米国 ISM非製造業景気指数の動向:23年以降
ドル円、今日の展望とチャート分析
重要テクニカルライン:50日線と短期のサポートラインの攻防
ドル円(USD/JPY)は昨日、安値154.54レベルまで下落する局面があった。
日足チャートを確認すると、IG為替レポートで注目している2つの重要なテクニカルライン、50日線と短期サポートラインの攻防にあることが分かる。
日足のMACDはデッドクロスの状況へ転じ、地合いの強さが後退していることを示唆(下のチャート、赤矢印を参照)。RSIとストキャスティクスの低下トレンドも考えるならば、今日のドル円はさらなる下値のトライを警戒したい。
ドル円のチャート:日足 23年12月以降
上で述べたとおり、現在の日米利回り格差は縮小の傾向にある。この状況で、5月の米ISM非製造業景気指数が予想以下となれば、「米金利のさらなる低下→日米利回り格差のさらなる縮小」を受け、ドル円は50日線と短期サポートラインを完全に下方ブレイクする展開が予想される。
ドル円が重要なテクニカルラインを難なく下方ブレイクする場合、次の下値の焦点は154.00の維持となろう。この水準は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(154.08レベル)にあたる。
ドル円が154円をも下方ブレイクする場合は、先月15日の円高を止めた水準153.60レベルのトライを想定しておきたい。
ドル円のチャート:4時間足 4月25日以降
158.00がレジスタンスとして鮮明に
直近の下落を受け、ある重要な点が浮き彫りとなった。それは、158.00レベルがドル円(USD/JPY)の新たなレジスタンス水準として浮上したことである。
4月29日と5月2日の早朝に突如円相場が急伸した。要因は政府・日銀による為替介入(総額9兆7,885億円の円買い介入)によるものだった。重要なのは、4月29日以降の反発相場を止めた水準、そして5月2日の為替介入が行われた高値の水準がいずれも158.00レベルだったことだ。
そして、5月の上昇相場は157.70レベルで止められた。これら一連の動きは、158.00レベルが強固なレジスタンスであることを市場参加者に印象付けた。
ドル円が再び158.00レベルをトライするサインとして、まずは21日線の突破に注目したい。この移動平均線は今日現在、156.15レベルで推移している(下のチャート、緑ラインを参照)。
次に注目したい水準が156.50レベルである。この水準はレジスタンスへ転換する可能性がある(上の4時間足チャートを参照)。
なお、今日現在10日線が156.50台まで低下している(下のチャート、青ラインを参照)。21日線との間でデッドクロスが確認される場合は、ドル円の強気地合いが後退するシグナルがまたひとつ点灯することになろう。
ドル円のチャート:日足 23年12月以降
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