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ドル円反発も上値の重さは否めず パウエルFRB議長の講演内容に注目

一時144円台へ下落する局面が見られたドル円(USD/JPY)だが、昨日は146.52まで反発する局面が見られた。しかし、10日線の突破に失敗し続けている。今日の東京時間にあっさりと146円を下方ブレイクしたことも考えるならば上値の重さは否めない。今日は、パウエルFRB議長が経済見通しについて講演を行う。内容次第でドル円は、上下に振れる展開となろう。

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記事のポイント

・今週は新興国通貨を中心に円買い優勢も、リスク選好の円安圧力も根強い
・ドル円は昨日146.50台まで上昇した、しかし上値の重さは否めない
・今日は、パウエルFRB議長の講演内容が材料視される可能性がある
・ドル円、目先の展望と注目のチャート水準について


円相場の動向

直近1週間の円相場は、新興国通貨を中心に円買い優勢の状況にある(左の棒グラフを参照)。しかし、日米の株価が底を打った8月5日以降のパフォーマンスを確認すると、対主要通貨で円安優勢の状況にあることが分かる(右の棒グラフを参照)。株高・円安の関係が見て取れる。

今日は、日本時間の23時に予定されている米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演内容で米ドル相場が上下に変動することが予想される。その動向を受け、売り買いが交錯する円相場に新たなトレンドが発生する可能性がある。

円相場のパフォーマンス

円相場のパフォーマンス ブルームバーグの為替データで筆者が作成

パウエル講演の焦点

焦点は9月利下げの幅

カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が22日から24日の日程で開催される。今日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が経済見通しに関する基調講演を行う(日本時間23時を予定)。

現状、外為市場の参加者は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエルFRBが利下げに踏み切ることを織り込んでいる。利下げ幅については0.25ポイントが有力視されている。

しかし、一部では0.5ポイント利下げの思惑が根強い。ゆえにパウエル講演の焦点は、再び大幅利下げの期待を高めるかどうか?この点にある。

基本路線は慎重姿勢の維持

パウエルFRBの経済指標を重視する姿勢に変わりはない。現在、その経済指標で注目されているのが雇用関連のそれである。

パウエルFRB議長は労働市場の冷え込みについて言及している。しかし、ここまで慎重に政策を進めてきた経緯とハードランディングが差し迫った状況にないことを考えるならば、パウエルFRB議長が、短期金融市場で期待されている0.5ポイント利下げ(大幅利下げ)の期待を高めるような発言をしてくる可能性は低いだろう。

経済指標(特に雇用関連の指標)を精査しながら、利下げ政策を慎重に進めるという従来の慎重な姿勢をパウエルFRB議長が強調する場合は新味に欠ける。ゆえに、米ドル相場への影響は限定的と予想する。

材料視されても、短期間で進行した米ドル安の調整要因(米ドルの買戻し要因)程度の影響にとどまると予想する。

市場が重視する表現は?

7月の雇用統計では失業率が4.3%と、2021年10月以来約3年ぶりの高水準に上昇した。サームルール※の経験則に従えば、アメリカ経済は景気後退に向かっている可能性がある。

そして21日に公表された雇用統計の年次改定では、非農業部門の全雇用者数が81万8000人引き下げられた。下方修正の幅は2009年以来の大きさとなった。

さらなる労働市場の冷え込みと景気後退の可能性についてパウエルFRB議長が警戒感を示す場合、市場参加者がこの点を重視してくる可能性がある。

要は、パウエルFRB議長が用いる表現のどこに市場が注目するのか?ということが、今日以降の米ドル相場のトレンドに影響を与えよう。

パウエルFRB議長が景気後退の可能性について言及し、市場がこの点を重視する場合は、現在30%を挟んで上下に揺れ動いている9月FOMCでの0.5ポイント利下げ確率が上昇する可能性がある(実際にそれを決定するかどうかは。また別の問題)。このケースでは、米債市場で利回りが低下しよう。外為市場では米ドル安の展開が予想される。

米国の失業率とサームルール景気後退指標

米国の失業率とサームルール景気後退指標 ブルームバーグの為替データで筆者が作成

※サーム・ルール:直近3ヶ月の平均失業率が、過去12ヶ月の最低値から0.5ポイント上昇したとき、景気後退に陥るという経験則


ドル円の見通しとチャート分析

10日線、短期抵抗線そして21日線

ドル円(USD/JPY)は昨日、146.50台まで反発した。しかし、10日線で上昇が止めらた。今週20日以降、この移動平均線で相場の反発が止められている。また、今日の東京時間にあっさりと146円台を下抜け145.30レベルまで下落している状況も考えるならば、ドル円の反発局面では戻り売りを意識する状況にある。

今晩のパウエル講演が「米金利の上昇→米ドルの買い戻し」の要因となる場合は、10日線の上方ブレイクが最初の焦点となろう。

しかし、ドル円の上昇局面でより注目したいのが、今日現在147.20台で推移している短期抵抗線の攻防である。このラインは、7月以降の下落相場を象徴するラインである。しかも21日線が並行している(今日現在147.70台)。

10日線を突破しても、短期抵抗線や21日線で反発が止められる場合は、来週以降も144円台やそれ以下の水準へ下落する展開を意識する状況が続こう。

ダブルトップ形成の可能性

ドル円(USD/JPY)が21日線を突破しても、8月6日以降の反発相場を止めた149.40レベルが控えている。この水準は、7月高値と現時点での8月安値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる(下のチャート、赤矢印を参照)。

149.40レベルでダブルトップ形成の可能性が浮上する場合も、ドル円の地合いの弱さを市場参加者に印象付けるだろう。

ドル円:日足 今年5月以降

ドル円:日足 今年5月以降

出所:TradingView

反落局面での注目ポイントは?

パウエル講演が米ドル安の要因となる場合は、ドル円(USD/JPY)の下落を想定しておきたい。

ドル円の反落局面では、3つの水準の攻防に注目したい。ひとつは、8月5日安値と直近高値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し144.62レベルである。この水準は、21日の下落局面で相場をサポートした経緯がある(下のチャート、黒矢印を参照)。

次の水準が144.00である。この水準の攻防は、144円の維持を見極めることが焦点となろう。

最後の水準が、フィボナッチ・リトレースメント76.4%戻し143.49レベルである。このテクニカルラインの下方ブレイクは、143.00のトライそしてブレイクアウトするシグナルとして想定しておきたい。

レポート掲載時点で、1時間足のストキャスティクスは売られ過ぎの水準へ低下している。RSIもデッドクロスへ転じ、低下基調にある。これらが反転する局面で、ドル円が上のサポート水準をトライする場合は、短期的な買戻し(反発相場)を想定しておきたい。

ドル円:1時間足 8月以降

ドル円:1時間足 8月以降

出所:TradingView


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