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【ドル円の週間見通し】日銀会合と米FOMCにらみ、焦点は景気見通し 上下の振れ幅拡大を警戒

今週のドル円は、日米の中銀会合にらみの展開となろう。上下に大きく振れる展開を警戒したい。週間の見通しと注目のテクニカルラインについて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

今週のドル円は、日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)で上下に大きく振れる展開を警戒したい。

国内では賃金と物価の好循環の確度が高まっており、日銀は利上げ姿勢を維持するだろう。しかし、今後の政策方針を巡っては海外の景気動向、特に米国の経済情勢が追加利上げの時期に影響を与える可能性がある。植田和男総裁が米経済の先行きリスクに言及し追加の利上げを慎重に判断する姿勢を強調すれば、思惑先行で進行してきた円高の巻き戻しを警戒したい。

一方、米FOMCでは経済成長と政策金利の見通しが焦点となろう。ともに下方修正となれば米ドル安のさらなる進行が予想される。ドル円の週間予想レンジは145.00~151.25。



円高一服、日銀会合にらみ

外為市場では円高の圧力が後退している。ドル円(USD/JPY)は日米利回り格差の縮小が一服したことで、先週は149円台へ反発する局面が見られた。スイスフランを除き主要なクロス円も円安優勢となった。

ブルームバーグによれば、国内10年債利回りは3月10日に1.573%まで上昇した。その後は上昇が抑制され1.5%前半で推移した。日銀の追加利上げを意識した思惑先行の金利上昇がひとまず一服している。

3月18~19日に日銀金融政策決定会合が開かれる。植田和男総裁の会見も含め内容次第で国内金利は上下に大きく振れる展開が予想される。円相場は金利の動向に左右されるだろう。日銀会合の焦点を以下にまとめた。

円相場の動向:3月10日~14日

円相場の動向:3月10日~14日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成


日銀会合のポイント、米国経済も追加利上げの新たな焦点に?

日銀は3月18~19日に金融政策決定会合を開く。政策金利は据え置きの公算が大きい。よって焦点は、今後の利上げ時期となろう。この点については海外の景気動向、特に米国経済の先行きについて植田和男総裁がどのように考えているのか?この点が追加利上げの時期を巡る新たな焦点となる可能性がある。

日本最大の労働組合の連合が先週14日発表した2025年春闘の1次集計によれば、ベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率は加重平均で5.46%と2年連続で5%超となり、1991年以来34年ぶりの高水準となった。300人未満の中小351組合の賃上げ率は、加重平均で5.09%と前年同期比で0.67ポイント上昇した。5%を超えるのは1992年以来およそ33年ぶりとなった。

1月の毎月勤労統計(速報値)で実質賃金は前年比1.8%減と3カ月ぶりに減少した。しかし名目賃金にあたる現金給与総額は同比で2.8%増と、2024年5月以降2%台の伸びを維持している。春闘で賃金と物価の好循環の確度が高まっていることが確認されたことは日銀の追加利上げを後押ししよう。

しかし、追加の利上げを巡っては海外の景気動向、特に米国経済の先行きがハードルとなる可能性がある。3月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)は57.9と、ブルームバーグの市場予想63.0を下回り3ヶ月連続で消費者マインドが低下した。先行景況感も54.2と、インフレ懸念が意識された2022年7月以来の低水準へ落ち込んだ。

一方、1年先の期待インフレ率は2月の4.3%から4.9%へ上昇した。米連邦準備制度理事会(FRB)が注視する5-10年先の期待インフレ率は3.9%と前月の3.5%から上昇し、1993年2月以来の高水準となった。トランプ関税によるインフレの再燃をアメリカの消費者が警戒していることがあらためて示された。

17日に2月の米小売売上高が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想では前月比で0.6%増と、1月の0.9%減から改善の見通しにある。GDPで個人消費の算出に用いるコア小売売上高も同比0.8%減から0.3%増へ改善することが見込まれている。市場予想以上ならば、一時的にせよ景気懸念の後退要因になり得る。一方、消費者マインドの低下が続く状況で小売売上高が予想以下となれば、個人消費の減速懸念が高まるだろう。景気懸念は米金利の低下と米ドル安の要因となろう。

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間の動向

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成

二転三転するトランプ関税が経済にもたらす不確実性は、米国市場でスタグフレーションの懸念を高めている。日銀会合後の定例会見で植田和男総裁が国内情勢だけでなく、米国の景気動向も注視しながら慎重に追加利上げの時期を判断する姿勢を強調する場合、外為市場では”ハト派的”と捉えられ、思惑先行で進行した円高の投機的な巻き戻しが発生する可能性がある。

一方、米国経済を支える個人消費の先行き懸念は米金利の低下要因でもある。以下にまとめた米連邦準備制度理事会(FOMC)の情勢次第では、米ドル安が進行する展開も想定しておきたい。


米連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点は景気と政策金利の見通し

3月に入り外為市場では米ドル安が進行している。相場の方向性を示すドル指数(DXY)はすでに3.6%下落している。2022年11月に5%下落したが、それ以来の下落率である。

景気の先行き懸念が意識され米金利が低下し、日本や欧州との金利差が縮小したことが米ドル安の主因である。3月18~19日に米FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。内容次第では米ドル安がさらに進行する可能性がある。

米ドル相場の動向:月初来

米ドル相場の動向:月初来

ブルームバーグの為替データで筆者が作成

3月会合では、政策金利の据え置きが予想される。よって今回の焦点は、今後の利下げ方針となろう。この点を見極める上で重要な材料となるのが、FOMC参加者による最新の見通しである。

パウエルFRB議長は7日の講演で、労働市場の堅調さに言及し米国経済は良好な状態にあると指摘した。同時に先行きの不確実性が高まっていると警戒感も示し、トランプ米政権が推し進める政策が経済にもたらす影響が判明するまで利下げを急がない姿勢を示した。

だが、米国市場では景気懸念が意識されリスク回避ムードが漂う。安全資産のゴールドは初の3,000ドル台へ到達した。FOMC参加者が最新の見通しで経済の成長率を下方修正する場合は市場参加者の景気懸念を高める要因になり得る。米金利の低下と米ドル安を警戒したい。

政策金利の見通し(ドット・プロット)も米ドルの変動要因となろう。現時点で短期金融市場では、25年末の政策金利の予想水準を3.7%前後と見ている。一方、FOMC参加者は昨年12月時点で3.9%と予想している。景気見通しに加えて、政策金利の見通しも下方修正される場合は、インフレの鈍化だけでなく景気の減速も利下げの理由となる、との思惑が短期金融市場や外為市場で高まることが予想される。このケースでは、米ドル相場の急落を警戒したい。

米FOMC 政策金利の予想推移

米FOMC 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 /OISに基づく予想推移 / 3月14日時点


ドル円 今週の見通しとテクニカルライン

投機筋の円売りを警戒
今週のドル円(USD/JPY)は、日米中銀イベントで上下に大きく振れる展開が予想される。警戒すべきは、急速に進行した円高の巻き戻しである。

米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、円の買い越しポジション(ネットロング)は2週連続で13万超と高水準を維持している(3月11日時点)。日銀の植田和男総裁が利上げ姿勢を維持しながらも、次回のタイミングは海外の景気動向、特に米国経済の動向を注視しながら慎重に判断する姿勢を示す場合は”ハト派的”と外為市場で捉えられ、投機筋を中心に円高の巻き戻し(円ポジションの調整売り)が発生する可能性がある。このケースでは、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。

非商業部門のポジション動向:日本円

非商業部門のポジション動向:日本円

米国商品先物取引委員会(CFTC) / ブルームバーグのデータで筆者が作成

今週のレジスタンスライン、予想レンジの下限レベルは151.25レベル
円高が一服しているタイミングで3月の日銀会合(声明文や植田総裁の会見)が円安の要因となれば、ドル円(USD/JPY)の急反発を想定したい。週間の予想レンジ上限は、1月10日の高値と3月11日安値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し151.25レベル。このテクニカルラインをトライするサインとして、目先は21日線(4時間足の23.6%戻し)の攻防に注目したい。ドル円が21日線を突破する場合は、150円台へ再上昇するサインと捉えたい。

日米の中銀イベントが円安・米ドル高の要因となればドル円は150円台へ上昇し、かつこの水準を維持する可能性が高まろう。このケースでは、151円を視野に上昇幅の拡大を想定したい。151.00~151.25レベルはレジスタンスゾーンとして相場の上昇を止める可能性がある(4時間足の黒矢印を参照)。

レジスタンスライン
・151.25:予想レンジの上限、38.2%戻し(4時間足)
・151.00:レジスタンスライン(4時間足、日足)
・150.00:レジスタンスライン(日足)
・149.40:21日線(3/14時点、日足)、23.6%戻し(4時間足)

今週のサポートライン、予想レンジの下限は145.00レベル
日銀イベントが円安の要因となっても、米FOMCが米ドル安の要因となれば、ドル円(USD/JPY)の下値リスクを警戒する状況が続こう。週間の予想レンジ下限は145.00レベル。

ドル円が145.00を目指すサインとして、先週サポートラインとして意識されたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準146.95レベル、3月11日の安値146.54レベル(日足チャート、黒矢印を参照)、そして146.00レベルの攻防に注目したい。

日米の中銀イベントが円高・米ドル安の要因となる場合は146.00を大陰線で下方ブレイクし、一気に145.00を目指す可能性がある。

サポートライン
・146.95:61.8%戻し(日足)
・146.54:3月11日の安値(日足)
・146.00:サポートライン(日足)
・145.00:予想レンジの下限(日足)


ドル円のチャート

日足:2024年9月以降

日足:2024年9月以降

出所:TradingView

4時間足:3月10日以降

4時間足:3月10日以降

出所:TradingView


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