注目の水ビジネス関連銘柄5選
水素はエネルギー転換において重要な役割を果たします。電力、製鉄、陸上輸送業界などは、化石燃料に変わって水素を活用する可能性があります。ここでは、注目の水ビジネス関連銘柄5選を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。
エネルギー転換期における水素の役割
水素は自然界に最も豊富にある元素で、燃焼すると水分しか出さない他、長期間にわたる保存が可能です。米国、欧州、日本は、化石燃料の代替として水素の利用拡大を促進するために、合わせて数千億ドルを投じています。
電力や製鉄業界は二酸化炭素の排出量が多く、炭素に代わって水素を使う大きな可能性を持っています。また、陸上輸送も可能性があります。トラックやバスは、道路輸送から直接排出される二酸化炭素の35%以上を占めていますが、長距離トラックや大型トラックは、車内で電気を作る水素燃料電池や、液体水素を燃やすエンジンなどに適しています。
水素は豊富に存在するものの、気体としてはほとんど存在しないため、水に含まれる酸素やアンモニアに含まれる窒素など、他の元素と分解する必要があります。
水素自体は透明ですが、製造時には二酸化炭素排出量によって色が分けられています。最も一般的なのは、天然ガスから作られる「グレー水素」で、これは二酸化炭素を放出します。二酸化炭素を回収して貯蔵すれば、「ブルー水素」に変化します。
注目の水ビジネス関連銘柄5選
ここでは、注目の水素ビジネス関連銘柄5選をご紹介します。各銘柄は時価総額と取引量に基づき選定されています。また、過去の値動きは、将来の株価動向を示すものではありません。
エア・リキード(AIRP)
フランス発のエア・リキードは産業用ガスの製造において、独リンデに次いで世界2位となっています。同社は2035年までに80億ユーロを低炭素水素に投資する計画です。
同社が25.1%、シーメンス・エナジー(ENR1n.DE)が74.9%を保有する合弁事業では、60年にもわたる水素に関する同社の知見と、シーメンス・エナジーの技術力を活かし、大規模水素電解槽の生産を目指してます。現在、太陽光と風力で動く200MWの電解槽がフランスのノルマンディーで建設されている他、20MW級のものはドイツのオーバーハウゼンで完成間近となっています。さらに、「スタックス」と呼ばれる電解モジュールの生産工場をベルリンに建設予定です。
米国では、インフレ削減法のもとで政府からの補助金を受け取る7つの水素ハブのうち、6つと協業をしています。同社はまた、大型トラック向けの水素ステーション100基を欧州の主な幹線道路沿いに整備するために、トタルエナジーズ(TTEF.PA)とも提携しています。
5月3日の同社の株価は180.62ユーロでした。この18ヶ月では36%上昇しています。
カミンズ(CMI)
カミンズはエンジンや発電機を製造するアメリカの企業です。同社は、トラックに搭載可能な水素を燃料とする内燃機関(ICE)を開発したと発表しました。このエンジンは二酸化炭素排出量をごくわずかに抑えたものの、公害となる窒素酸化物を排出します。
同社によれば、水素を燃料とするICEは、燃料電池車よりも大型トラックの運転や険しい地形の走行に適しており、自動車メーカーやフリート事業者の間では広く普及するとしています。
5月3日の取引は、年初来18%高となる280.74ドルで取引を終えました。
ダイムラー・トラック(DTGGe)
ドイツに本社を置くダイムラー・トラックは、世界最大の商用車メーカーです。
同社はボルボと合併会社を設立し、水素燃料電池を製造しています。2023年9月に行った実証実験では、燃料電池を搭載したメルセデス・ベンツのプロトタイプが、1回の液体水素の充填で1,047kmを走りました。現在は、輸送会社と共に実証実験が行われています。
2023年には、バス・トラックメーカー子会社の三菱ふそうトラック・バスと、トヨタ自動車(7203)子会社の日野自動車(7205)を合併し、新会社を発足することで合意しました。しかし、2024年2月には、規制当局からの承認取得の遅れを発表しています。
5月3日の取引は、年初来20%高となる40.95ユーロで取引を終えました。
三菱重工業(7011)
三菱重工業のエナジー部門は、火力ガスタービンを水素で動かす技術の開発においてリードしており、最小限の改造によりガスタービンを水素タービンへ転換できるとしています。昨年には都市ガスに水素を30%混ぜた混合燃料による実証運転に成功しており、今年には水素100%での実証運転をするとしています。
同社は米石油・ガス大手のシェブロン(CVX)と共同で、米国ユタ州デルタに水素技術を大規模展開しています。電気分解でグリーン水素を製造した後に岩塩空洞に貯蔵しており、完了すれば世界のクリーン水素生産量がほぼ倍増すると同社はしています。
製造された水素は、2025年から水素を30%混ぜた混合燃料で発電するガスタービン発電所に送られます。現在同発電所では、石炭発電によって南カリフォルニアに電気を供給しており、2045年までには水素100%にする予定です。同社はまた、ブルー水素製造時に発生する二酸化炭素を回収する技術を関西電力(9503)と共同開発しており、すでに16基のプラントを納入したとしています。
同社の株価はこの1年間で3倍に迫るほど伸びており、5月2日は1,413円50銭で取引を終えました。
日本製鉄(5401)
日本最大の製鉄会社である日本製鉄は、日本の産業界が出す二酸化炭素排出量の4割を占める製鉄からの炭素排出量を削減するため、政府出資のプロジェクトを主導しています。鉄鉱石から酸素を取り除く「還元」というプロセスにおいて、炭素の代わりに水素を使うことで、国内製鉄所から排出される二酸化炭素量を半減させることを目指しています。
JFEスチール(5411)、神戸製鉄所(5406)、一般財団法人金属系材料研究開発センターと共同で管理するこのプロジェクトは、国から1935億円の補助金が支給されています。
同社は2月、加熱した水素を注入することで、小規模航路からの二酸化炭素排出量を3分の1削減することに成功しました。同社は高炉で溶ける前の鉄鉱石を固体の状態で直接還元するために、水素を使用する実験も行っています。
同社が打ち出したUSスチール買収案では、4月にはUSスチールの株主が圧倒的多数で承認したものの、米バイデン大統領は反対しています。5月3日、同社は買収終了予定を3ヶ月後ろ倒しにしました。買収が完了すれば、同社が米国内の製鉄所に水素技術を展開する可能性が高くなります。
同社の株価は年初来で7.5%上昇しており、5月2日には3,473円で取引を終えました。
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