注目の水ビジネス関連銘柄10選
化石燃料の消費から脱却するために、水素が世界的に果たす役割はますます大きくなっています。ここでは、注目の水ビジネス関連銘柄10選とその役割をご紹介します。各銘柄は時価総額と取引量に基づき選定されています。
エネルギー転換期における水素の新たな役割
米国、欧州、日本は、化石燃料の代替として水素の利用拡大を促進するために、合わせて数千億ドルを投じています。世界の大手企業の多くは、水素の利用を普及させるために設けられた世界的組織「水素協議会」に加盟しています。
潜在的なエネルギー源として、水素が最も期待される領域には、自動車輸送があります。トラックやバスは、道路輸送から直接排出される二酸化炭素の35%以上を占めていますが、長距離トラックや大型トラックは、車内で電気を作る水素燃料電池や、液体水素を燃やすエンジンなどに適しています。
水素エネルギーの他の用途には、製鉄や発電などがあります。
水素は燃焼しても水しか排出しません。水素は豊富に存在するものの、気体としてはほとんど存在しないため、水に含まれる酸素やアンモニアに含まれる窒素など、他の元素と分解する必要があります。
水素自体は透明ですが、製造時には二酸化炭素排出量によって色が分けられています。最も一般的なのは、天然ガスから作られる「グレー水素」で、これは二酸化炭素を放出します。二酸化炭素を回収して貯蔵すれば、「ブルー水素」に変化します。
さらに、電気分解によって製造されるものを「グリーン水素」といい、これが最も高価です。太陽光、風力、水力などの自然エネルギーを動力源とし、水分子を電気化学的に分解しています
こうした色の区別は、政府補助金の受給資格に関わる重要な要素です。
注目の水ビジネス関連銘柄10選
ここでは、注目の水ビジネス関連銘柄10選をご紹介します。株価とその推移は2月2日時点のものを引用しており、各銘柄は時価総額と取引量に基づき選定されています。また、過去の値動きは、将来の株価動向を示すものではありません
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エア・リキード(AIRP)
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エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)
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カミンズ(CMI)
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ダイムラー・トラック(DTGGe)
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岩谷産業(8088)
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ジョンソン・マッセイ(JMAT)
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川崎重工業(7012)
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リンデ(LIN)
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ネクステラ・エナジー(NEE)
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ボルボ(VOLVa)
エア・リキード(AIRP)
フランスに拠点を置くエア・リキードは、世界第2位の産業ガスメーカーです。同社は2035年までに低炭素水素の製造と供給に対し、約80億ユーロを投資すると発表しています。
また、長距離水素輸送に使用されるアンモニアを水素に分解するための大規模なプラントをアントワープ港に建設しています。さらに、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ドイツの幹線道路に大型貨物車用の水素充填ステーション網を開発するため、トタルエナジーズ(TTE)と提携しています。
株価は2024年2月2日時点で171.30ユーロをつけました。
エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(APD)
米国発のエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズは、水素を自社で製造する世界最大の供給会社です。同社は、ティッセンクルップ(TKA)が84億ドルをかけてサウジアラビアに建設するプラントから、グリーンアンモニアを受け入れる予定です。これを輸送して分解し、グリーン水素を製造します。
また、ルイジアナ州では、ブルーアンモニアとブルー水素のプラントに70億ドルを投資しています。ロッテルダムでは、既存のプラントを改修してエクソン・モービル(XOM)の製油所でブルー水素を製造する計画を進めています。さらにテキサス州では、ブルー水素プロジェクトの パートナー企業として、独占的に水素を引き取り、販売する予定です。
株価は2024年2月2日に258.17ドルで取引を終えました。
カミンズ(CMI)
カミンズはエンジンや発電機を製造するアメリカの企業です。同社は、トラックに搭載可能な水素を燃料とする内燃機関(ICE)を開発したと発表しました。このエンジンは二酸化炭素排出量をごくわずかに抑えたものの、公害となる窒素酸化物を排出します。
同社によれば、水素を燃料とするICEは、燃料電池車よりも大型トラックの運転や険しい地形の走行に適しており、自動車メーカーやフリート事業者の間では広く普及するとしています。
ダイムラー・トラック(DTGGe)
ドイツに本社を置くダイムラー・トラックは、世界最大の商用車メーカーです。同社はボルボと合併会社を設立し、水素燃料電池を製造しています。2023年9月に行った実証実験では、燃料電池を搭載したダイムラー・トラックのプロトタイプが、1回の液体水素の充填で1,047kmを走りました。
2023年には、バス・トラックメーカーの三菱ふそうトラック・バス、トヨタ自動車(7203)、日野自動車(7205)とともに、カーボンニュートラルの実現に向けて協業すると発表しました。
株価は2024年2月2日に33.71ユーロで取引を終えました。
岩谷産業(8088)
岩谷産業は日本唯一の液化水素供給会社で、国内に水素研究センターを有しています。川崎重工業、IMPEX(1605)と共に、オーストラリアの褐炭から製造される「ブラウン水素」を液化し、日本へ輸送する政府出資の合弁事業に参画しています。
株価は2023年2月2日に6,767円をつけました。
ジョンソン・マッセイ(JMAT)
英国発のジョンソン・マッセイは先端金属化学を専門とし、触媒コンバーターにおいて世界をリードしています。同社のブルー水素プロセスでは、発生する二酸化炭素の最大99%を回収することができるとしています。
同社はまた、グリーン水素電解用の触媒層付き電解質膜(CMM)や、グレー水素製造用触媒、水素を放出するためのアンモニア分解触媒なども製造しています。水素燃料電池の中核となるのは、膜電極接合体(MEA)です。
株価は2024年2月2日に15.9ポンドで取引を終えました。
川崎重工業(7012)
川崎重工業は国内最大の鉄道車両メーカーです。同社は、二輪車、船舶、航空機、エンジン、産業用プラントや機械なども製造しています。
これまでの液化天然ガス(LNG)輸送経験を生かし、同社は世界初の液化水素海上輸送船を建造するほか、水素で走るオートバイも製造しています。また、同社の会長は水素協議会の共同議長を務めています。
株価は2024年2月2日に3,336円をつけました。
リンデ(LIN)
リンデは世界最大の産業ガスメーカーであり、200以上の水素プラントを建設しています。米国のナイアガラ・フォールズでは、グリーン水素を製造する35メガワットの水電解装置の建設が進行しています。また、ドイツとノルウェーで24メガワットの電解槽を2基建設中で、ブラジルでは太陽光発電による電解プラントを完成させました。
同社は1879年にドイツで設立されており、現在は英国の水素会社ITMパワー(ITM)の筆頭株主です。法的な本店をアイルランドに置いているものの、本社は英国にあります。
株価は2024年2月2日に406.94ドルで引けました。
ネクステラ・エナジー(NEE)
ネクステラ・エナジーは、アメリカの大手電力会社であり、世界最大の風力・太陽エネルギー生産会社でもあります。また、7つの原子力発電所で発電し、フロリダ・パワー・アンド・ライト(FPL)を所有しています。
FPLは、天然ガスで発電した16ギガワットの電力をグリーン水素で稼働できるように転換する予定です。同社は新たな設備投資用に200億ドルの融資枠があるといいます。
株価は2023年2月2日に58.15ドルをつけました。
ボルボ(VOLVa)
スウェーデンの自動車メーカーであるボルボは、トラック、バス、建設機械、産業用エンジン、船舶用エンジンなどを製造しています。同社の自動車部門は2010年に浙江吉利控股集団に売却されました。
同社はダイムラー・トラック・ホールディングスと共同で、大型および長距離トラック輸送用の水素燃料電池エンジンを開発しています。計画では、10年以内に本格的な生産を開始することを目指しています。また、ウェストポート・フューエル・システムズと提携し、水素燃焼エンジンに高圧直接噴射(HPDI)燃料システムを導入しています。
2024年2月2日、株価は257.35クローネで引けました。
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