【米国株決算】マイクロソフトのQ2決算、力強い成長見通しを示せるか?
マイクロソフトが29日の引け後に2024年10-12月期決算を発表する。中国の新興AI企業DeepSeekが台頭するなか、投資家の期待に応える業績見通しを示すか?決算後の株価見通し。
記事の概要
中国の新興AI企業DeepSeekが低コストで低コスト生成AIモデルを開発。同社のアプリは27日、アップルの米国アプリストアでChatGPTを抜きダウンロード数(無料アプリ部門)首位を獲得した。DeepSeekの台頭はアメリカAI企業の巨額投資に対する投資家の懸念を急速に高めている。29日から米ハイテク決算が相次ぐ。AI分野に巨額の設備投資をしているマイクロソフトが2024年10-12月期決算を発表する。投資家の期待に応える力強い業績見通しを示すことができるか?
目次
- DeepSeekショック後退、マグニフィセントセブンに買戻し
- マイクロソフト2Q決算は増収増益の見通し、Intelligent Cloud部門がけん引
- 焦点は業績見通し、巨額投資の懸念を払しょくできるか?
- マイクロソフトの株価見通し、株高進行なら最高値更新が焦点に
DeepSeekショック後退、マグニフィセントセブンに買戻し
28日のアメリカ株式市場では主要指数が上昇して終えた。株高をけん引したのがマグニフィセントセブンだった。27日に前週末比で17%急落したエヌビディア(NVDA)は前日比9%高と大幅に反発した。他の銘柄も総じて上昇した。
DeepSeekがAI産業に与える影響については様々な見方がある。既存の技術を基盤としたオープンソース型の低コストモデルが今後主流となればAIの普及が世界的に加速することで、エヌビディアの半導体需要はむしろ高まる可能性がある。また、メタ・プラットフォームズ(META)の人工知能(AI)モデル「Llama(ラマ)」はDeepSeekのそれと同じくオープンソース型である。米中対立を考えるならば、トランプ米政権はラマのような米国製のAIモデルの開発を促進し採用すると思われる。
DeepSeekショックはひとまず後退している。しかし今日から明日にかけて相次ぐ米ハイテク決算で、巨額の設備投資に見合うだけの力強い業績見通し(ガイダンス)が示されない場合はDeepSeekの脅威が蒸し返され、米国株の先行き不透明感が高まる可能性がある。
マグニフィセントセブンの動向:1月28日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
マイクロソフトQ2決算は増収増益の見通し、Intelligent Cloud部門がけん引
29日の取引終了後にマイクロソフト(MSFT)が2024年10-12月期(第2四半期 / Q2)の決算を発表する。
ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、売上高は前年同期比で11.10%増の689.03億ドル、一株利益(EPS)は同比6.61%増の3.12ドルが見込まれている。
成長のけん引役であるIntelligent Cloud部門の収益が前年同期比20%増の258.95億ドルと堅調に伸びることが期待され、営業外の収益や費用を含む利益(EBIT)は前年同期比で11.93%増の302.58億ドルが見込まれている。
マイクロソフト 売上高と一株利益の推移およびQ2の予想
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 四半期:2022年以降
※赤の棒グラフ:ブルームバーグがまとめた第2四半期のアナリスト予想:1月29日時点
Intelligent Cloud部門の収益およびQ2の予想
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 四半期:2020年以降
※赤の棒グラフ:ブルームバーグがまとめた第2四半期のアナリスト予想:1月29日時点
焦点は業績見通し、巨額投資の懸念払しょくできるか?
2024年7〜9月期の設備投資額は前年同期比78.57%増の200億ドルと、四半期ベースで過去最高を更新した。10-12月期の設備投資額は同比82.59%増の約210億ドルと予想されている。2025年度は約850億ドルの巨額な設備投資が見込まれている。
2024年以降、マイクロソフトは生成AIの開発と運用に使う半導体やデータセンターに巨額の資金を投じている。AI分野で競合他社に勝つという同社の強い意志がうかがえる。
年間の設備投資
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2016年以降
DeepSeekの台頭で、巨額の投資に見合うだけの利益をアメリカのAI企業が稼げるのかどうか?今、この懸念が急速に高まっている。
このため、同日に2024年10-12月期(第4四半期 / Q4)決算を発表するメタ・プラットフォームズ(META)と同じく、マイクロソフト(MSFT)のQ2決算でも業績の見通し(ガイダンス)が焦点となろう。
注目はマイクロソフトの成長を左右するIntelligent Cloud部門の見通しである。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、1-3月期(第3四半期/Q3)の収益は前年同期比21.73%増の 269.53億ドルが見込まれている。Intelligent Cloud部門の中核を担うAzure(アジュール)の増収率は同比33.67 %前後の予想にある。
前回の決算ではクラウド事業の成長に対する鈍化懸念が株安の要因となった。今回も投資家の失望を誘う業績見通しとなれば、成長懸念から同社の株価は時間外で下落することが予想される。一方、巨額の投資に見合うだけの力強い成長見通しを示すことができれば、マイクロソフトの株価は上昇することが予想される。
2025年1-3月期(第3四半期)の業績見通し
・売上高 :698.25億ドル(前年同期比12.88%増)
・一株利益:3.20ドル(前年同期比8.69%増)
・Intelligent Cloud部門収益:269.53億ドル(前年同期比21.73%増)
・設備投資:212.39億ドル(前年同期比51.71%増)
※ブルームバーグがまとめたアナリスト予想:1月29日時点
マイクロソフトの株価見通し
決算で株高なら最高値更新が焦点に
DeepSeekショックをこなしマイクロソフト(MSFT)の株価は昨日、前日比2.91%上昇した。日足ローソク足は大陽線となった。テクニカルの面ではフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準448.82ドルをトライする状況にある。日足のMACD とモメンタムは強気相場に勢いがあることを示唆している(日足チャート、黒矢印を参照)。
株価が強気相場を維持するなか、投資家の期待に応える業績見通しが示される場合、マイクロソフトの株価は448.82ドルを突破し株高のムードがさらに高まることが予想される。株高局面での焦点は、昨年7月に付けた最高値468.35ドルのトライと更新である。昨年12月12日の高値456.16ドル、フィボナッチ・エクステンション100%の水準460.44ドル(日足チャート、緑ライン)の突破は最高値更新に向けたサインと捉えたい。
最高値の更新は470ドル台へ上昇するサインとなろう。株価が470ドル台で底固めとなれば、480ドルを視野に上昇幅が拡大する可能性が高まろう。
レジスタンスライン
・480.00ドル:レジスタンスライン
・468.35ドル:最高値
・460.44ドル:フィボナッチ・エクステンション100%
・456.16ドル:昨年12月12日の高値
・448.82ドル:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
割高感が意識されやすい
今週はAI分野でマイクロソフトと競合するメタ・プラットフォームズとアップルも決算を発表する。
3社の予想PER(株価収益率)の水準を確認すると、マイクロソフトのそれが36.6倍にある。マイクロソフトと同じくAI分野に巨額の設備投資を表明しているメタ・プラットフォームズと比べると割高感が意識されやすい状況にある。
決算が株安の要因となればこの割高感が意識され、マイクロソフトの価は以下で取り上げているサポートラインを視野に下落する展開を想定したい。
マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、アップルの予想PER:2021年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
株安の局面では50日線と200日線の維持が焦点に
決算が株安の要因となれば、50日線と200日線の維持が焦点となろう。50日線は昨日、相場をサポートした。200日線は長期のトレンドを考えるうえで重要なテクニカルラインである。DeepSeekショックでは200日線を下抜ける場面が見られたが、一過性の動きに終わった。決算で株価が下落してもこれら2つの移動平均線で反発する場合は、強気相場の維持を想定したい。
株価が200日線を下方ブレイクする場合は、トレンドチャネルの下限を視野に下落幅が拡大する可能性が出てくる。このケースではさえない決算の他、米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向も関係してくるだろう。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が追加の利下げについて慎重な姿勢を示す場合はインフレ再燃の懸念と利下げ期待の後退で「米金利の上昇→ハイテク株売り」も重なり、トレンドチャネルの下限を視野に株安が進行する展開も想定しておきたい。
しかし、下限のラインで株価が反発し右肩上がりのトレンドチャネルを維持する場合は、強気相場が続くシグナルとなろう。
サポートライン
・431.25ドル:50日線(1/28時点)
・425.68ドル:200日線(1/28時点)
・423.50ドル:1月27日の安値
・410ドル台:トレンドチャネルの下限
マイクロソフトの株価チャート
日足:2024年6月以降
出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。