AI(人工知能)関連の注目銘柄5選
2022年11月に登場したチャットGPTは、AI(人工知能)への投資競争の火付け役となりました。企業が何十億ドルもの投資を行う中、注目すべき米国のAI関連株5銘柄を紹介します。取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。
AI(人工知能)革命とは
チャットGPTが世界を驚かせてから16ヶ月も経っていませんが、その技術は既に主流となっています。研究者、技術者、研究者たちは生成AIモデルを取り入れており、投資額は増える一方です。PwCコンサルティングの試算によると、AI革命は世界経済に15.7兆円もの効果をもたらすとされていますが、生産性の向上は推測の域を出ません。
AI関連の注目銘柄5選
この記事では、AIの最先端にいる米企業5社を紹介します。半導体セクターへの「AI効果」は、別の記事で紹介しています。半導体を手掛けるエヌビディアは、画像処理装置(GPU)がAI革命に欠かせないため、本記事に含まれています。
取り上げる銘柄は、時価総額に基づいて選ばれています。また、過去の値動きは将来の株価動向を示すものではありません。
アルファベット(GOOGL.O)
アルファベットは、AI革命の大きさを体現している会社です。インターネット検索市場をほぼ独占し、広告手数料を安定して得ている同社の事業は、最近まで盤石に見えていました。
しかし、同社の株価はこの2、3年で乱高下を繰り返しています。2022年に35.6%下落した後、2023年には55.7%上昇しました。年初来では、5.7%上昇しています。
同社のAI戦略に対する市場の信頼は、幾度かにわたって揺らいでいます。2023年2月には、同社のチャットボット「Bard」が初公開の場で正しくない回答を返したために、同社株は7%下落しました。10月には、AI事業に必要なクラウドコンピューティングにおいて、マイクロソフトやアマゾン(AMZN)に遅れを取っているのではないかとの懸念から、株価は再度下落しました。
12月に新しいチャットボット「Gemini」と新世代のAIチップを投入したことで株価は一時回復しました。しかし、24年2月にGeminiが「不正確あるいは不快な」画像を生成したことで同社が謝罪し、株価はまた下落しました。これらが一時的な問題か、それとも本質的な問題を示すものかを見極めるには、時期尚早といえます。
ただ、同社の収益性が突出していることに変わりはありません。昨年の純利益は23%増の737.95億ドルで、売上高は8.7%増の3073.94億ドルでした。
IBM(IBM.N)
コンピュータのパイオニアであるIBMは、AIの最先端に立つためにいくつかの柱を立てています。
売上の75%を占めるソフトウェアとコンサルティングでは、昨年ビジネス向けにクラウドベースの生成AI・データプラットフォームを公開しました。同社初代社長であるトーマス・ワトソンにちなんで「Watsonx」と名付けられたこのプラットフォームは、3つのサービスで構成されています。
「Watsonx.ai」は同社の「Granite」を含む、大規模言語モデル(LLM)を活用するAIツールです。「Watson.data」は顧客企業のデータ問題解決をサポートするサービスであり、「Watsonx.governance」はAI関連のリスク管理や規制への対応などを支援します。
ハードウェアにおいては、AIモデルを訓練し、実行するために必要とされる膨大な演算能力を目標としています。「Vela」と呼ばれるIBM CloudのAIスーパーコンピュータはエヌビディアのGPUとインテル(INTC)のスケーラブルプロセッサーを使用しています。また、AIチップの自社開発も行っています。
同社は昨年、619億ドルの売上に対し、75億ドルの純利益を記録しました。ソフトウェアは売上の43%を占め、粗利益率は事業の中で最も高い80.1%でした。同社の株価は、過去12ヶ月間で59%上昇しています。
メタ・プラットフォームズ(META.O)
フェイスブックの新社名であるメタの株価は、AIへの多額投資や消費者・広告主向けAI機能を多数展開していることで、急伸しています。同社の株価は年初来で40%、過去12ヶ月間で152%上昇しています。
同社は自社版チャットGPTである「Meta AI」を元にしたAI機能を、インスタグラム、フェイスブック、ワッツアップ、メッセンジャーで提供しています。ユーザーは自然な言葉で検索したり、著名人と会話をしているような体験をしたり、自然言語で指示することで画像を生成・編集したりすることができます。同社はまた、広告主にも生成AIツールを提供しています。
同社の株価は、2月1日の決算発表を受け、20%上昇しました。
2023年12月31日までの3ヶ月間において、売上高は前年同期比25%増の401.11億ドルだったのに対し、純利益は201%増の140.17億ドルでした。通期決算での売上高は前年比16%増の1349億ドル、純利益は同69%増の391億ドルでした。
マイクロソフト(MSFT.O)
マイクロソフトの時価総額は1月に3兆ドルを突破し、アップル(AAPL)を抜いて世界で最も価値のある上場企業となりました。投資家たちに人気の理由は、同社がAI分野において他社をリードしていると見られているからです。
同社は2019年以来、チャットGPTを開発したオープンAIに130億ドルを投資しており、その技術を同社の検索エンジンである「Bing」に投入しています。昨年には、「Microsoft 365」と連携する「Copilot」と呼ばれるAIチャットボットをローンチしたほか、台湾積体電路製造(TSMC)と共同開発したAI向けのチップ、「Maia」も発表しました。
2023年12月31日までの四半期において、売上高は前年同期比18%増の620億ドル、純利益は同33%増の218.7億ドルでした。最も成長が大きかったのは、AIアプリケーションを動かす「Azure」クラウドコンピューティングでした。同社CEO兼会長のサティア・ナデラ氏は、「私達はAIについて語る段階から、AIを幅広く活用する段階に移った」としています。
株価はこの12ヶ月間で54.6%上昇しました。
エヌビディア(NVDA.O)
AIにおける一番の勝者はエヌビディアと言えます。この18ヶ月間で同社の株価は607%上昇しています。時価総額ではアマゾン、アルファベット、サウジアラムコを抜いた上、世界2位のアップルに迫っています。しかし、これは投資家による過度な期待ではありません。
2024年1月20日期の通期売上高は、前年比126%増の609.2億ドルで、純利益は同581%増の297.6億ドルでした。同社は生成AI向けチップ市場の約80%を握っているため、好決算は今後も続く可能性があります。
同社の予想PER(株価収益率)はマイクロソフトやインテルと同等の35.1倍であり、アマゾンよりは低い水準にあります。懸念材料は時価総額を過去1年間の売上あるいは純利益で割ったPSR(株価売上高倍率)です。同社のPSRは35.2倍で、AIブームに乗っている他の米テック企業より高い水準にあります。
競合にさらされることで、同社はGPUの高価格を保つことが難しくなるかもしれません。アマゾンやアルファベット、マイクロソフトなどの巨大テック企業や、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの競合は、より廉価な代替品を開発するとしています。
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