【米国株 ウィークリーレポート】 反落局面ではナスダック100指数の押し目買いを狙いたい
アメリカの実質金利が上昇するなかでもハイテク株のトレンドを示すナスダック100指数は強気相場を維持している。債務上限問題を巡る再協議に不透明感が漂っている状況は、ナスダック100指数の下落要因である。しかし現在の底堅さを考えるならば、下落局面での押し目買いを狙いたい。詳細はウィークリーレポートをご覧ください。
サマリー
・債務上限問題の不透明感とインフレリスクは米国株の反落要因に
・実質金利が上昇してもナスダック指数は強気相場を維持している
・ナスダック100指数の反落局面では4つの押し目買いポイントに注目したい
・レジスタンスラインの突破はナスダック100指数のさらなる上昇シグナルになり得る
上昇基調へ転じているアメリカの実質金利
アメリカのインフレ率は鈍化の傾向にある。だが4月の雇用統計では、賃金の上昇を伴うタイトな労働市場の状況が確認された。また、5月のミシガン大学期待インフレ率(5-10年先の期待インフレ率)が2011年3月以来の水準となる3.2%まで上昇した。これら経済指標の結果を受け、米債市場では利回りが再び上昇トレンドへ転じている。
アメリカ株と金利の関係を考える時、重要となるのがインフレを考慮した実質金利の動きである。米債利回りに再び上昇圧力が高まっていることで、今年の4月上旬以降2年、5年そして10年の各実質金利は上昇トレンドにある。
アメリカ実質金利の推移
米金利の上昇圧力を跳ね除け強気相場を維持するナスダック指数
注目すべきは、アメリカの実質金利が上昇トレンドへ転じても、5月2-3日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米国株が堅調地合いを維持していることである。
特に、先週のレポートで取り上げたナスダック指数の堅調さが鮮明となっている。大手ハイテク企業の決算から大分時間が経っている。それでもナスダック指数が上昇トレンドを維持している今の状況は、次回のFOMC(6月13-14日開催)での利上げ停止、そして早ければ今秋にもパウエルFRBが利下げへ転じる可能性を株式市場の参加者が強く意識していることを示唆している。
アメリカ株価指数のパフォーマンス
根強い年内の利下げ観測
パウエルFRB議長やアトランタ連銀のボスティック総裁らは、市場が抱く年内の利下げ観測を否定し続けている。
それでも短期金融市場が織り込む年内の利下げ観測は根強い。現時点での政策金利(FFレート)の予想推移を確認すると、短期金融市場では次回FOMCでの利上げ打ち止めと、早ければ11月のFOMCでパウエルFRBが利下げ政策に転じることを意識する状況にある。
市場が織り込む政策金利の予想推移
調整の反落相場を警戒
連邦政府の債務上限問題を巡る再協議への不透明感が漂っている。
バイデン大統領は21日、G7広島サミット閉幕後の記者会見で、3兆ドル近い財政赤字の削減と新たに1兆ドル以上の支出削減案を提案したと主張した。一方、野党・共和党は、低所得者向けの医療保険制度や食料支援の条件の厳格化を要求している(アメリカメディア)。
歳出削減を巡り両党の溝は深く、22日午後(現地時間)に予定されているバイデン大統領とマッカーシー下院議員の再協議で何ら進展が見られない場合、米国株は下落する展開が予想される。特に5月のFOMC以降、6%近く上昇しているナスダック100指数(NDX)での反落を想定しておきたい。
今週26日に4月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される。この経済指標は、パウエルFRBが重視する物価指標である。
前月比の予想は0.3%と、3月の0.1%から上昇する見通しである。前年比も4.2%から4.3%へ上昇する予想となっている。一方、変動の大きい食品とエネルギーを除いたPCEコアデフレーターは、前月比と前年比でともに3月から横ばい推移の予想となっている。
4月PCEデフレーターが予想以上、特に前月から横ばい推移の見通しとなっているコアデフレーターが予想外に上昇する場合は、インフレ圧力の根強さを短期金融市場、債券市場、そして株式市場の各参加者に強く意識させるだろう。このケースでは、6月FOMCでの利上げ停止の思惑が後退すると思われるため、米国株の反落を想定しておきたい。
一方、消費者物価指数(CPI)と同じくPCEデフレーターでもインフレの鈍化傾向が確認される場合は、6月FOMCでの利上げ停止の期待が高まるだろう。このケースでは米国株の上昇、特にグロース株の上昇とそれに伴うナスダック100指数の上昇を予想する。
アメリカ PCEデフレーターの推移
押し目買いを狙いたい4つのポイント
昨年8月高値13,720レベル
上で述べた材料で今週の米国株が下落しても、下値では押し目買いのチャンスを常に狙いたい。
特に、昨年8月の高値13,720レベルを突破しているナスダック100指数(NDX)の押し目買いを狙いたい。
その水準として最初に注目したいのが、13,720レベルである。上で述べたとおりこの水準は、昨年8月の高値にあたる。ゆえにこの水準のサポート転換は、市場参加者の上昇期待を高める要因となろう。
サポート転換の兆しが見える13,600レベル
ナスダック100指数が13,700レベルをあっさりと下方ブレイクする場合は、13,600レベルでの押し目買いを狙いたい。先週18日に大陽線が示現し、レジスタンスからサポートへ転換する兆しが出ている。ナスダック100指数の反落局面で二度同じ展開が確認される場合は、強気相場が続くシグナルと想定したい。
サポートラインの10日MA
移動平均線を重視する場合は、10日MA(先週の19日現在で13,463レベル)での攻防に注目したい。この移動平均線は5月に入りサポートラインとして意識される状況にある。
短期サポートラインと23.6%戻し
債務上限問題などでナスダック100指数の調整相場が加速し10日MAをも下方ブレイクする場合は、13,400前後で推移する2つのテクニカルポイントでの押し目買いを狙いたい。
ひとつは、3月安値11,695レベルと5月19日高値13,874レベルの23.6%戻し13,360レベルである。明日、11,695レベルを起点とした短期サポートラインがこの水準(13,360レベル)と交錯する。そしてこのラインは26日に、13,470レベルまで上昇する。よって、今週の半ば以降は、現在の上昇トレンドを象徴する短期サポートラインの維持を重視したい。このラインの維持は、上昇トレンドが続く最大のシグナルとなり得るからだ。
ナスダック100指数のチャート
レジスタンスラインの突破
ナスダック100指数(NDX)が上で述べた押し目買いの水準を維持する場合は、強気相場が続くシグナルとなろう。
ナスダック100指数の上昇局面で注目しておきたいのが、21年11月高値16,764レベルを起点としたレジスタンスラインの突破である。下落トレンドを象徴するこのラインの上方ブレイクは、ナスダック100指数の強気相場が加速するシグナルとなろう。
このラインは今週、13,900レベルで推移する。節目の14,000レベルをトライするシグナルとしてもこのラインの攻防に注目したい。
ナスダック100指数のチャート
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