ECBの利上げは減速か　16日は予告通りの0.5％決定　5月は見送りも視野

欧州中央銀行（ECB）の利上げが減速していくとの見方が広がっている。ECBは16日の理事会で前回（2月2日）に予告した通り、0.5％の利上げを決定。一方、スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安などの金融システムの混乱を踏まえ、次回5月4日の理事会での金融政策変更の内容は明言しなかった。金融市場で次回の利上げ見送りも視野に入っており、16日の欧州の株式市場は値上がりした。

物価上昇警戒で利上げを決定

ECBは16日の理事会後の声明で「物価上昇率は極めて高い状態が極めて長く続くと予想される」とし、3月22日から3つの政策金利すべてを予告通り0.5％上げると決定した。政策金利の下限となる中銀預金金利は3.0％となる。

一方、クレディ・スイスの経営不安や米国のシリコンバレーバンク（SVB）などの経営破綻を念頭に「直近の市場の緊張を注視している」と言及し、ユーロ圏の物価安定とともに金融システムの安定にも必要に応じて対応すると強調。ラガルド総裁は記者会見で金融政策について「現時点で今後の道筋を示すことはできない」と述べた。

金融市場は利上げペースの急減速見込む

金融市場では、ECBが今後は利上げペースをダウンさせるとの見方が拡大。金融情報会社リフィニティブの日本時間17日午前11時半現在のデータによると、市場では次回会合で利上げが見送られる確率が46％、0.25％の利上げとなる確率が54％あると見積もられている。ECBは2022年7月から利上げを開始し、今回を含めて0.5％の利上げを4度、0.75％の利上げを2度行ってきただけに、利上げペースが一気に減速すると見込まれている形だ。2023年末の中銀預金金利の水準は3.75％となる確率が高いとみられている。

また16日には、財務報告書に対する内部統制に重大な弱点があったと公表して経営不安問題が広がっていたクレディ・スイスがスイス国立銀行から500億スイスフラン（約7兆1500億円）の金融支援を受けると発表。Stoxx Europe 600指数は前日終値比1.2％高で取引を終えた。クレディ・スイス株は19.2％高となった。

米国では16日、SVBとシグネチャーバンクの経営破綻後に信用不安で預金流出が起きていたファースト・リパブリック銀行に、米国の大手銀行JPモルガン・チェースを含む11行が合計300億ドル（約4兆円）を預け入れることが公表された。