ECBの16日の利上げ幅に不透明感 金融危機不安で0.5%は実行できず?
クレディ・スイスの経営不安がECBの利上げ判断を難しくした。0.25%幅も有力視されるが、内容次第で金融市場に混乱が起きるおそれもある。
欧州中央銀行(ECB)が16日に開く理事会で、2月に宣言した0.5%幅の利上げを実現できない可能性が浮上している。スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安が拡大する中、急ピッチでの利上げを続ければ欧州の金融システムの持続的な健全性が疑問視されるおそれがあるからだ。このため金融市場では利上げ幅が0.25%になるとの見方が拡大。ユーロ圏の物価上昇率は依然として高いものの、ECBの利上げ幅が市場の想定を上回れば、金融市場に混乱が起きるおそれもある。
クレディ・スイスの内部統制に問題
ECBは2022年7月から利上げを開始し、前回(2月2日)を含めて0.5%の利上げを3度、0.75%の利上げを2度行ってきた。現在は主要政策金利が3%、政策金利の下限にあたる中銀預金金利が2.5%に設定されている。2月の理事会後の声明文では「3月の理事会でさらに0.5%の利上げを行う」としており、16日は宣言通りの利上げが確実視されていた。
この宣言の実行を難しくしているのがクレディ・スイス問題だ。クレディ・スイスは14日に公表した年次報告書で「2022年末と2021年末の段階で財務報告書に対する内部統制に重大な弱点があった」ことを明らかにした。問題はリスク管理の方法に関するもので、財務報告書の内容自体は公正だったとしているが、米国でのシリコンバレーバンク(SVB)などの経営破綻が明らかになった直後とあって、クレディ・スイスの経営不安が拡大。15日のスイス証券取引所でのクレディ・スイスの株価は前日終値比で24.2%下落した。
16日は0.25%利上げも
こうした中、ECBが宣言通りの0.5%利上げを行うことには不安もある。SVBの経営破綻の背景には米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの影響で保有債券の価値が下落したことがあるとされ、中央銀行による急激な利上げの副作用が無視できないことが印象付けられたためだ。FRBが利上げを加速するとの観測は急速に縮小した。
金融情報会社リフィニティブのデータによると、市場関係者が見込む利上げ幅の確率は、日本時間16日正午すぎ現在、0.25%幅が90.5%、0.5%幅が9.5%となっている。クレディ・スイスがスイス国立銀行から資金支援を受けると公表したことが報じられると、0.25%幅と0.5%幅がそれぞれ50%程度の確率となった。またロイター通信の16日朝の報道によると、英金融グループ大手のバークレーズはECBの判断の確率について、政策金利据え置きが20%、0.25%利上げが60%、0.5%利上げが20%とみているという。
一方、ECBの物価上昇への警戒感は強い。ラガルド総裁は5日に公表されたスペイン語メディアに対するインタビューでは、16日の0.5%利上げについて可能性が極めて高いと明言していた。ユーロ圏のエネルギーと食品を除いた物価上昇率が非常に高いことを指摘し、「物価上昇率を2%に戻すために必要な手段を取り続けなければならない」とも述べ、利上げの継続を示唆している。
しかし欧州と米国で同時に発生した金融不安の先行きはまだ見通せず、「次はどの金融機関に悪いニュースが出るのか」という心理状況が続く。ECBが宣言通りの0.5%利上げを行った場合には、金融システムに潜むリスクが拡大するとの観測から、金融市場がネガティブに反応するおそれもある。
(2023年3月16日午後4時00分に情報を更新)
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