米中対立の新たな報道と指標データ
今週は米中対立に関する新たな報道の有無、そして両国の指標データが外為市場をはじめとした各市場のトレンドを左右すると予想します。また、欧州議会選挙の影響もみる必要があるでしょう。EU懐疑派の拡大はユーロ相場の圧迫要因と考えています。詳細はマーケットレポートにて。
Analysis Highlights
・米中対立の新たな報道と指標データ
今週の外為市場は、米中対立に関する新たな報道の有無と両国の指標データ次第でトレンドが左右されよう。米株のボラティリティ指数を確認するとVXN(原資産ナスダック100)は、引き続き警戒水準の20ポイント台で推移している。ハイテク分野をターゲットにトランプ米政権サイドが中国に対して攻勢を仕掛けている状況を不安視する市場心理がうかがえる。この点について新たな報道がある場合、ハイテクセクターには売り圧力が高まり、米株全体の上値を抑制しよう。米長期金利(10年債利回り、以下米金利)には低下圧力が高まることで、ドル円は重要サポートポイント109.05(フィボナッチ・プロジェクション38.20%)をトライする展開となろう。一方、「米株下落→米金利低下」の状況はユーロドルのサポート要因となろう。だが、欧州議会選挙でEU懐疑派の議席数が伸びたことはユーロ相場の圧迫要因となり得る。フィボナッチ・プロジェクション100%の水準1.1253以上では、ユーロ売り圧力が高まる展開を警戒すべきである。
米中対立に関して新たな報道がない場合は、指標データ重視の相場となろう。その指標データで注視すべきは、31日に発表される米中のそれらである。5月の中国製造業購買担当者景気指数は好不況の分岐点である50.0を再び下回り49.9に低下する予想となっている。同指数は昨年12月に50.0を割り込み、今年2月に49.2まで低下した経緯がある。市場予想以上の落ち込みとなれば、中国の景気減速リスクが米国市場に波及し、外為市場では円買い圧力が高まろう。一方、資源国および新興国の通貨には売り圧力が高まろう。米国の指標データでは4月個人消費支出(PCE)、特にコアPCEに注目したい。FEDが重視する同指数は2019年に入り低下基調を辿っている。この傾向が続く場合、「米金利低下→米ドル売り優勢」の展開を予想する。
【VXN指数 / 米長期金利】
・ドル円とユーロドルの展望
ドル円は引き続き株式中心にトレンドが左右されよう。上述したとおり、ハイテク分野における米中対立がさらに激化するか、冴えない両国の指標データが確認されるかまたはその両方が確認される場合は、株安を背景に下値トライを想定する。最大の焦点はフィボナッチ・プロジェクション38.20%の水準109.05の攻防となろう。この水準の下方ブレイクは108円台下落のシグナルと想定する。109.00ではオプションバリアの攻防が想定される。また、この水準にはビッドの観測あり。一方、米中対立に関する新たな報道がなく、且つ米中指標データがリスクセンチメントの改善につながる内容となれば、「米株上昇/米金利反発」を背景に反発を想定する。だが、このケースで注視すべき点は、米指標データの内容である。冴えない指標データは米金利の低下要因である。「株高/米金利低下」の局面では、反発してもドル円の上値は抑制されよう。21日MA(110.25前後)の突破に成功しても110.80レベル(89日MA前後)でレジストされる展開を予想する。一方、「株高/米金利上昇」の展開が続く場合は111円台のトライを想定したい。
ユーロドルは売り買い交錯を予想する。23~26日に実施された欧州議会選挙(定数751)だが、国民連合(フランスの極右政党)、ドイツのための選択肢(ドイツの反EU政党)そして同盟(イタリアの極右政党)の議席数が伸びた。今回の結果は、各国の政治的軋轢とそれに伴い財政規律が緩むリスクを今後市場関係者に意識させる可能性がある。このレポートを執筆している時点で目立ったユーロ売りは見られない。だが、中国リスクが意識されている状況も考えるならば、1.12ミドル以上では引き続き上値が抑制される展開を予想する。1.1260から1.1280にかけてはオファーが並んでいる。一方、下値の焦点は1.11台の維持となろう。1.1190ではオプションバリアの攻防が想定される。また、1.1100にはビッドの観測あり。
【ドル円】
【ユーロドル】
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