NY金、調整売りに直面も景気不安が下支え 下値で買いの好機を探る 金価格の見通し
最高値圏にあるNY金相場は調整売りに直面している。しかし、景気不安で米国市場がリスク回避相場にある状況は、ゴールド買いの需要を高める要因である。金価格の下落局面では、押し目買いの好機を探る状況が続くだろう。

記事の概要
スポットのNY金価格は、2,930ドル付近で調整売りに直面する状況が続いている。ゴールド買いを控える投機筋の動向は上昇相場の勢いを削ぐ要因である。しかし、景気不安が米国市場のメインテーマに浮上している状況を考えるならば、金価格の下落局面では押し目買いの好機を探りたい。スポット金価格の見通しと注目のテクニカルラインについて。
焦点
NY金 9週連騰は止まるも根強い買いに支えられる
スポット金価格(以下では金価格)は9週連続での上昇に失敗した。しかし先週は約1.8%上昇し、強気相場を維持した。金価格の下支え要因となっているのが、急速に高まる米国の景気不安である。
スポット金価格の週間騰落率:2024年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 3月7日の週までの動向
ボラティリティ指数が上昇、高まる投資家の不安心理
トランプ関税によるインフレ再燃の懸念は米金利の上昇要因である。しかし、景気の動向を反映して動く米10年債利回り(長期金利)は今月4日に4.104%まで低下する局面が見られた。
一方、主要な米株価指数は3月に入り下落幅が拡大している。特にナスダックは、総合指数とナスダック100が先月の最高値から10%超下落し、調整局面入りのシグナルが点灯した。多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500も直近高値から8.6%安の状況にあり、調整局面入りが目前に迫っている。
米長期金利の低下と株安が同時に発生する状況は、典型的なリスク回避相場である。この主因は景気不安にある。
景気不安は今後も米国市場の反乱要因となる可能性がある。この点を示唆しているのが、2つのボラティリティ指数である。
その一つが、MOVE指数である。この指数は、米国債の先行き変動リスクを示す。MOVE指数が上昇すれば、米国債の価格が大きく上昇または下落する可能性が高まっていることを示す。直近の動きを確認すると、アメリカ大統領選挙が行われた昨年11月以来の水準付近まで上昇している。上述した米長期金利の低下を考えるならば、安全資産としての米債買いの需要が高まっている状況を示唆している(米金利が低下する可能性を示唆している)。
MOVE指数:2024年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
様子見の投機筋、待たれるゴールド買い
景気不安は金相場のサポート要因である。しかしスポットのNY金価格は現在、2,930ドルの水準がレジスタンスラインとして意識されている。今の上値の重さの一因は、投機筋の動きにあると筆者は考えている。
米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、3月4日時点で非商業部門の買い(ロング)ポジションはじわりと減少し続けている。一方、売り(ショート)ポジションは微増となった。結果として買い越し(ネットロング)は2月以降、減少の傾向にある。
これらのポジション動向は、短期的な相場の過熱感を投機筋が警戒し調整売りを仕掛けてはいるが、弱気見通しに転じることなく、次のゴールド買いの機会を虎視眈々とうかがう状況にあることを示唆している。様子見の投機筋が再びゴールド買いに動けば、以下にまとめたサポートラインでの反発と2,930ドルの突破を意識したい。
非商業部門のポジション動向:2024年9月以降

CFTCとブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格の見通しと注目のテクニカルライン
押し目買い狙い、2,800ドルの維持が焦点に
週明けのスポット金価格(以下では金価格)は調整売りに圧され下落した。しかし、上述した景気不安による米国市場のリスク回避相場を考えるならば、下値では押し目買いを考えたい。
以下にまとめたサポートラインでの攻防を注視しながら、押し目買いの好機を探りたい。目先の焦点は一目基準線の維持となろう。今日現在、転換線とともに2,881ドル付近で推移しているが、この水準は今月に入っての高安の半値戻しの水準にあたる。今週の予想レンジ下限は2,800ドル。
サポートライン
・2,881:基準線(日足)、半値戻し(1時間足)
・2,869:61.8%戻し(1時間足)
・2,855:76.4%戻し(1時間足)
・2,832:2月28日の安値
・2,813:38.2%戻し(日足)
・2,800:予想レンジの下限
反発の局面では2,930ドル突破が焦点に
一方、金価格の上昇局面では2,930ドルの突破が焦点となろう。現在、この水準がレジスタンスラインとして意識されている。10日線と21日線の上方ブレイクは、2,930ドルをトライするサインとなろう。
今週は2,930ドルをレンジの上限と想定したい。だが、2月の米物価指数次第では金価格の反発圧力が高まる可能性がある。2,930ドルを完全に突破する場合は、1時間足にプロットしたフィボナッチ・エクステンションの各水準の攻防に注目したい。
レジスタンスライン
・2,965:フィボナッチ・エクステンション76.4%(1時間足)
・2,951:フィボナッチ・エクステンション61.8%(1時間足)
・2,930:レジスタンスライン(日足)
・2,909:21日線(日足)
・2,897:10日線(日足)
金価格のチャート
日足:24年12月以降

出所:TradingView
1時間足:2月27日以降

出所:TradingView
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