NY金、米金利の上昇と投機筋の買い控えが重石 米経済指標にらみ 金価格の見通し
今週のNY金は、米国の経済指標で上下に振れる展開が予想される。予想レンジと注目のテクニカルラインにについて。
記事の概要
米長期金利が4.6%台へ上昇し、NY金の重石となっている。今週は米国の雇用関連指標が米金利の変動要因となる可能性がある。ゆえにNY金も米経済指標にらみの1週間となろう。昨年11月以降、投機筋が金の買いポジションを急速に減らしている。投機筋の買い控えはNY金の重石となろう。スポット金価格の予想レンジは2,600-2,680ドル。
目次
今週のNY金は米経済指標にらみ、焦点は雇用関連の指標
NY金は現在、米長期金利(10年債利回り)にらみの状況にある。6日の米債市場で長期金利(10年債利回り)が再び4.6%台へ上昇したことを受け、NY金先物(2月物)が続落した。スポットの金価格(以下では金価格)は100日線を下抜ける局面が見られた。
今週の米長期金利は、経済指標で大きく動くことが予想される。注目は雇用関連の指標である。今日のJOLTS求人件数(昨年11月分)を皮切りに、ADP雇用統計(昨年12月分)、週間の新規失業保険申請件数が順次発表される。各市場の参加者が最も注目する経済指標が、10日の雇用統計(昨年12月分)である。ブルームバーグがまとめた非農業部門雇用者数変化の市場予想は前月比で16万人増、失業率は4.2%で昨年11月から横ばいの見通しにある。平均時給は前年同月比で4.0%と高止まりの見込みである。
正規雇用の失業者数と複数の雇用先がある労働者の数がともに増加の傾向にあることを考えるならば、米国の労働市場はじわりと軟化の傾向にある。しかし、米債市場は非農業部門雇用者数変化や失業率など総合的な数字に反応するだろう。労働市場の堅調さを示す内容となれば、米長期金利の押し上げ要因になり得る。米金利の上昇は米ドル高を促すだろう。雇用統計前に発表される雇用関連の指標でも労働市場の強さを示す内容が続けば、米金利の上昇と米ドル高の進行が予想される。ゆえに強い雇用指標は金価格の下落要因となろう。
一方、労働市場の軟化を示す経済指標が相次げば、「米金利の低下と米ドル安→金価格の上昇」が予想される。しかし、金価格が上昇してもその幅は限定的となる可能性がある。そう考える理由のひとつが、下で述べる投機筋の動きである。
米国の雇用統計 各項目の動向:月次 2023年12月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 予想は1月7日時点
投機筋の買い控えも金価格の重石に
2024年の金価格は上昇した。その一因となったのが投機筋の買いだった。しかし、その投機筋は昨年の秋以降、ロングポジション(買いポジション)を減らしている。特に米大統領選挙が行われた昨年11月以降は買いポジションの減少傾向が鮮明となっている。トランプ政策が米債市場に与える影響(米金利の上昇)を先取りした動きと考えることができる。
投機筋が金を買い控える状況で今週の経済指標が米長期金利の上昇要因となれば、金価格は下で述べる予想レンジの下限をトライ、そして下方ブレイクする可能性があろう。
投機筋の買いポジションとスポット価格の動向:2024年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
金価格の見通し、今週の予想レンジは2,600-2,680ドル
スポットの金価格(金価格)は現在、20日線を挟んで売り買いが交錯している。今週はトライアングルの上限と下限、どちらを目指すのか?この点が焦点となろう。今週の予想レンジは2,600-2,680ドル。見通しと注目ポイントを以下にまとめた。
今週の米経済指標が米ドル高の要因となれば、金価格はトライアングルの下限をトライする展開が予想される。米雇用統計が発表される10日にこのラインは、2,610ドル付近で推移する。100日線(今日現在2,627ドル)の下方ブレイクとフィボナッチ・リトレースメント61.8%の下方ブレイクは、下限のラインをトライするサインと捉えたい。
金価格が下限のラインを下方ブレイクする場合は、予想レンジの下限2,600ドルの攻防を意識したい。2,602ドルは直近高安のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。
米長期金利の上昇幅拡大で金価格が予想レンジの2,600ドルをも完全に下方ブレイクする場合は、2024年12月19日の安値2,583ドルで二度相場がサポートされるか?この点が焦点に浮上しよう。この水準で再び相場が反発すれば、2,600ドルに代わる新たなサポートラインとして注目したい。
サポートライン
・2,627:100日線(日足)
・2,614:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(4時間足)
・2,610:トライアングルの下限(日足、10日時点)
・2,600:予想レンジの下限(日足)、76.4%戻し(4時間足)
・2,583:昨年12月19日の安値(日足)
一方、今週の米経済指標が米ドル安の要因となる場合、金価格は以下でまとめたレジスタンスラインの攻防が予想される。
最初の焦点は50日線(今日現在2,652ドル)の突破となろう。昨日はこの移動平均線の手前で反落した。金価格が50日線を完全に突破する場合は、10ドルのレンジで上値の水準を見極めたい。
2,665ドルは1月3日の戻り高値の水準である。2,671ドルは直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準が2,671ドルにあたる。そしてトライアングルの上限は今週10日に2,680ドル付近まで低下する。このラインを今週の上限と想定したい。金価格がトライアングルを上方ブレイクする場合は、さらに10ドル上のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準2,692ドルをトライすることが予想される。
だが、米長期金利は景気の底堅さとトランプ政策によるインフレ再燃が意識され現在高止まりしている。投機筋は金の買いポジションを減らしている。これらの状況を考えるならば、金価格が上昇してもその幅は限られる展開が予想される。トライアングルの上限を突破しても、2,700ドル手前での反落を想定しておきたい。
レジスタンスライン
・2,692:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(日足)
・2,680:予想レンジの上限(日足、10日時点のトライアングル上限)
・2,671:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(日足)
・2,665:1月3日の高値(4時間足)
・2,650:50日線(日足)
金価格のチャート
日足:2024年10月下旬以降
出所:TradingView
4時間足:2024年11月以降
出所:TradingView
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