ハリス氏勝利で株価下落見通し? 米大統領選挙 住宅関連株は上昇期待
アメリカの大統領選挙でハリス氏の税制政策の行方が注目されている。資産課税の強化は株価の逆風といえるが、実現のハードルは高い。
アメリカ大統領選挙で民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の経済政策が株式市場の注目を集めている。ハリス氏は株式取引に関わる課税を含め、富裕層に対する資産課税の強化を打ち出しているからだ。中には資産家の含み益に高い税率をかけるという前例のない施策も含まれているとみられ、株価の下落への不安を駆り立てる内容。共和党候補のドナルド・トランプ前大統領らからの批判にされされている。とはいえ大胆な課税強化の実現に向けたハードルは高く、ハリス氏が勝利したとしても株価への逆風が強まるとは限らない。一方、ハリス氏が打ち出す住宅政策への期待もあって、仮にハリス政権が誕生すれば不動産や住宅関連株が上昇するとの見通しも成り立ちそうだ。
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ハリス氏がキャピタルゲイン課税強化に言及
ハリス氏は9月4日のニューハンプシャー州での演説で、年間百万ドル以上の収入がある富裕層のキャピタルゲイン課税の税率を28%にすると言及した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、これとは別に配当や利子などを含む投資収入全体にかかる税率は現状の3.8%から5%へと引き上げられ、最終的な税率は33%になるとみられている。
こうした税率はジョー・バイデン大統領が目指していた44.6%との比較では穏健な内容。ハリス氏は演説で、「税制をより公平にすると同時に投資と革新を優先させる」と述べた。しかし33%という税率は現状の23.8%からは大幅な上昇であることに変わりはない。
ハリス氏は「未実現のキャピタルゲイン」にも課税か
またハリス氏の金融税制をめぐっては、バイデン政権が打ち出していた「未実現のキャピタルゲイン」に対する課税を撤回していないとの批判も多い。米シンクタンクのタックス・ファウンデーションによると、バイデン政権の2025会計年度の予算案には純資産1億ドル以上の世帯の実効税率引き上げを狙い、未実現のキャピタルゲインを含む収入に最低25%の税率を課すことが含まれていた。
タックス・ファウンデーションはこの税制について、「値上がりした資産がまだ売却されていない状態でも、値上がり益に対する税金を払うことになる」と説明。「広範な資産に市場価格ベースで課税する初めての試みとなる」としている。
ハリス氏がアメリカ大統領選挙で勝利しても実現は困難な見通し
こうした民主党側の政策には批判も多い。共和党候補のトランプ氏は5日のニューヨークでの講演で「信じられないことに、彼女は未実現のキャピタルゲインへの課税を探っている」と述べ、ハリス氏を批判。また、ハリス氏を支持している著名起業家のマーク・キューバン氏も5日のCNBCでのインタビューで「株式市場を殺すことになる」と述べた。タックスファンデーションも事務処理の複雑化などを理由に挙げて、「健全な税制とは真逆の方向にある」としている。
ただ、こうした大胆な税制改革は仮にハリス氏が勝利したとしても、共和党が議会の一定勢力を握ることを想定すれば、立法化は困難であることは否めない。ハリス氏にとっては選挙戦を有利にすすめるための戦術との意味合いもありそうだ。ハリス氏の真意は10日に行われるトランプ氏との大統領選挙討論会で明らかになる可能性もある。
住宅投資促進策は「ハリス・トレード」の材料にも
一方、ハリス氏が8月16日に打ち出した「就任後100日以内に行う政策」に含まれていた住宅投資促進策は「ハリス・トレード」の材料になるともみられている。ハリス氏はこの中で、住宅不足にともなう価格上昇の結果、住宅問題が深刻化していると指摘。住宅建設業者向けの税負担軽減策などを整備し、「今後4年間で300万軒の住宅を建設するよう促す」としている。
こうした中、株式市場では不動産株の上昇に注目が集まる。S&P500種株価指数の不動産セクター指数の9日の終値は276.47で、6月末との比較では2か月あまりで14.64%の上昇。S&P500(SPX)の0.19%高を大きくしのぐ成績だ。また住宅建設大手のDRホートン(DHI)の株価は、同じ期間で33.06%高となっている。
不動産株の上昇の背景には、物価上昇の鎮静化を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに向かうことが確実視されている情勢もある。FRBが利下げを進めれば、住宅ローン金利の低下が不動産株の追い風になるとみられるからだ。また、DRホートンについては、7月18日に市場予想を超える好決算を発表したことの影響も大きい。このため、不動産や住宅関連株の値上がりへの期待は大統領選の動向とは無関係に高まっているともいえるが、ハリス氏が勝利に向かえば期待が後押しされる可能性もありそうだ。
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