S&P500に思惑交錯 利下げ予想拡大 トランプ氏復権で物価上昇?
S&P500は15日に続伸。利下げ予想拡大が追い風となった。一方、トランプ氏の復権は物価高も予感させ、FRBのかじ取りの難易度は増す。
アメリカの株式市場で今後の見通しをめぐる思惑が交錯している。15日のS&P500種株価指数の終値は前週末比0.28%高と続伸。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の発言が利下げ期待を高めたことが好材料となった。金融市場では年内3回利下げの見通しも強まっており、株価にとっては追い風だ。一方、大統領選は、暗殺未遂に直面した共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勢いづく展開。金融市場ではトランプ氏が大統領になれば物価上昇圧力が増すとの見方があり、S&P500の波乱要因になる可能性もありそうだ。ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数は15日に上昇しており、投資家心理の揺れ動きも垣間見える。
S&P500は続伸 FRBの年内3回利下げ見通しが拡大
S&P500(SPX)の15日の終値は5631.22。10日につけた最高値(3633.91)には届かなかったものの2営業日続伸と堅調だった。好材料となったのはFRBのパウエル氏の発言。ロイター通信によると、パウエル氏は15日にワシントンDCで開かれた経済イベントで、4-6月の物価動向を踏まえ、物価上昇率が安定的に2%に戻ることへの自信が「いくらか高まった」と述べた。
こうした中、金融市場では9月利下げの確度が高まっている。CMEグループのデータによると、7月30、31日の連邦公開市場委員会(FOMC)については、政策金利変更がないとの見方が多いが、9月FOMCでの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間16日午前11時段階で91%に達している。また年内3回の利下げについての確率は約63%に達しており、13日段階の55%から、さらに利下げ見通しが強まった。
アメリカ大統領選はトランプ氏に力強さ
一方、11月5日の大統領選をめぐっては13日にトランプ氏がペンシルベニア州での政治イベントで狙撃され、負傷するという暗殺未遂事件が発生。右耳から流血しながらも支持者に向かって拳を突き上げたトランプ氏の対応は大統領に求められる力強さを感じさせ、高齢問題への懸念が深刻化するジョー・バイデン大統領と好対照をなした。
トランプ氏は15日に開幕した共和党の党大会で正式に大統領候補者に指名され、副大統領候補にはJ・D・バンス上院議員を選んだ。バンス氏は39歳という若さ。オハイオ州の白人貧困家庭で育った半生を振り返った2016年の著書「ヒルビリー・エレジー」で注目を集め、2022年にトランプ氏の支持を受けて上院議員に初当選した。トランプ氏と同様に白人労働者層との心理的なつながりが深いバンス氏の指名には、トランプ氏が支持基盤を固める狙いがあるとみられている。
トランプ氏が復活すれば物価上昇圧力は増すとの見通しも
勢いづくトランプ氏について金融市場では、輸入品への高関税や減税といった看板政策が物価上昇圧力になるとの見方がある。11月の選挙戦に向けて共和党への支持が増せば、トランプ氏の勝利に共和党の上下両院の多数派獲得が重なり、こうした政策が実現する見通しが強まりそうだ。
ただ、トランプ氏の経済政策が必ずしも経済の混乱要因になるとは限らない。トランプ氏の前回の任期(2017年1月から2021年1月)中、個人消費支出(PCE)物価指数の前年同月比伸び率はおおむね2%未満で推移。また、失業率は2020年初めの新型コロナウイルス感染拡大までは低下傾向をたどっていた。S&P500はトランプ氏が大統領選で勝利した2016年11月8日から、バイデン氏に敗北した2020年11月3日にかけて、57.5%上昇している。
VIX指数はじわりと上昇 政策の急変への不安も
とはいえ、トランプ氏と共和党の大勝の可能性が高まり、急激な政策変更が予想される事態になれば、利下げを見据えるFRBの金融政策のかじ取りが難しくなることは避けられない。15日の金融市場では、S&P500が値上がりする中でもVIX指数(VIX)は13.12まで上昇し、6月24日(13.33)以来の高さとなった。VIX指数の水準は歴史的にみれば低いものの、米国の労働市場に悪化の兆しがみられていることもあり、投資家はS&P500の今後の見通しについて安心しきっているわけではないようだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。