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米CPI、6月も減速見通し 11日発表 S&P500上昇加速も

アメリカの6月CPIは1月以来の低さになり、S&P500の最高値更新を後押しする見通し。ただ、FRBは労働市場の悪化にも神経をとがらせている。

米CPI、6月も減速見通し 11日発表 S&P500大台突入も 出所:ゲッティ

アメリカで11日に発表される6月の消費者物価指数(CPI)は総合指数の伸び率が5か月ぶりの低さになる見通しだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが近づき、米国の株式市場にとって追い風になる可能性がある。S&P500種株価指数は9日の終値で緩やかなペースながらも6連騰となり、最高値を更新中。6月CPIが5600の節目を超えるきっかけになることも考えられそうだ。ただ、FRBのジェローム・パウエル議長は9日の議会証言で労働市場の悪化への警戒感も示しており、今後、企業業績への不安が投資家心理を冷やすことも考えられる。

アメリカの6月CPIは総合指数の伸び率が3.1%の見通し

米国の労働省は11日午前8時30分(日本時間11日午後9時30分)に6月CPIを発表する。ロイターがまとめた事前予想では、総合指数の伸び率は前年同月比3.1%となり、5月の3.3%から減速する見通し。1月(3.1%)以来の低さとなりそうだ。また、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は3.4%となり、5月から横ばいになると予想されている。

アメリカの消費者物価指数(CPI、総合、コア)の伸び率の推移のグラフ

S&P500は6営業日連続で上昇 テスラは10連騰

6月CPIの結果が予想通りになれば、総合指数の伸び率減速は3か月連続。FRBにとっては利下げに踏み切る環境を整える結果といえ、長期金利(10年物米国債利回り)の低下とS&P500(SPX)の上昇につながりそうだ。S&P500は9日の終値が前日比0.07%高の5576.98となり、1月下旬以来の6営業日続伸を記録。5営業日連続で最高値を塗り替えており、6月CPIの結果を受けて5600の節目を超えることもあり得る。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

こうしたS&P500の上昇の背景には、今後本格化する、大手ハイテク企業の2024年4-6月期決算発表への期待もある。電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA)の株価は9日の終値が前日比3.71%高となり、6月25日から10営業日連続で上昇。アップル(AAPL)の株価も24日以降の11営業日中、10営業日で値上がりを記録している。6月CPIで物価上昇減速が確認されれば、大手ハイテク株の勢いが増すことも考えられそうだ。

テスラ、アップル、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾン・コム、メタ・プラットフォームズ、アルファベットの株価の推移のグラフ

FRBのパウエル議長は労働市場の悪化を警戒

ただし今後のS&P500をめぐっては米国経済の変調という不安要素も大きくなってきた。パウエル氏は9日の上院銀行・住宅・都市問題委員会での議会証言で、米国経済が直面する問題として、物価上昇と労働市場の悪化が同じぐらいの深刻度になっていると指摘。労働市場の現状について「極めて大幅に冷えてきている」と述べた。5日発表の6月雇用統計では失業率が2年7か月ぶりの高さである4.1%まで上昇している。

パウエル氏は5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見では、「労働市場のが想定以上に弱まる」ことを警戒しつつ、失業率が0.2%ポイントほど上がることは想定内だとの立場を示していた。6月の失業率は、5月1日当時に明らかになっていた3.8%から0.3%ポイント高い水準で、FRBとしてはこれ以上の失業率の上昇は看過できないもようだ。

FRBが労働市場の悪化を理由に利下げに踏み切るとの見通しが強まれば企業業績の悪化が意識され、S&P500にとっての下押し圧力になる可能性がある。投資家心理が冷え込んでいけば、S&P500の上昇の勢いがそがれていくことも想定される。


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