トランプ氏の復権はS&P500にプラス? 大統領候補へ前進 不安も
トランプ氏には2016年の大統領選後にS&P500を上げた実績がある。しかし経済政策への批判は多く、不安は消えない。
アメリカ大統領選に向けた共和党内での候補者選びでドナルド・トランプ前大統領に追い風が吹いている。共和党の有力候補者のロン・デサンティス・フロリダ州知事が21日に選挙戦からの撤退を表明し、トランプ氏への支持を表明したためだ。トランプ氏は23日に予備選が開かれるニューハンプシャー州で選挙戦を優位に進めており、共和党からの大統領選出馬の現実味が増した。トランプ氏は2016年の大統領選後に株価を上昇させた実績があり、S&P500にとってはプラスに働く可能性がある。しかし大統領時代の経済政策に対する批判も根強く、経済界は再登板への不安を隠せない。
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デサンティス氏が選挙戦からの撤退を表明
デサンティス氏は21日(日本時間22日朝)、SNSのX(旧ツイッター)への投稿で撤退を発表。「トランプ氏は現職のジョー・バイデン大統領よりも優れている」とし、トランプ氏を支持することを明らかにした。デサンティス氏は15日に開かれた共和党のアイオワ州党員集会でトランプ氏に次ぐ2位につけていただけに、トランプ氏にとっては候補者指名への道が開けた。
またトランプ氏は23日のニューハンプシャー州予備選でも優位に立っている。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによる各世論調査の集計によると、ニューハンプシャー州でのトランプ氏への支持率は52.5%。残るライバルであるニッキー・ヘイリー元国連大使の37.5%を上回っている。今後、7.0%を占めるデサンティス氏への支持がトランプ氏に流れれば、トランプ氏はさらにリードを広げることができそうだ。
ニューハンプシャー州は政治的な中間派が多いとされ、ヘイリー氏にとって戦いやすい州だとみられてきた。このためトランプ氏が23日に勝利を収めれば、ヘイリー氏に大きなダメージを与えることができる。トランプ氏は2月8日に党員集会が開かれるネバダ州や、24日に予備選が開かれるヘイリー氏の地元のサウスカロライナ州でも優勢が伝えられている。
トランプ氏勝利のアメリカ大統領選後4年でS&P500は58%上昇
今後、トランプ氏が大統領の座に近づいていけば、S&P500(米国500)に上昇圧力がかかる可能性がある。経営者としてキャリアを築いてきたトランプ氏は企業活動に好意的なイメージがあるからだ。LSEGのデータによると、トランプ氏が大統領選で勝利した2016年11月8日から、再選に失敗した2020年11月3日までの間、S&P500は約58%上昇した。新型コロナウイルス禍という混乱にも関わらず投資家の期待をつなぎきった形だ。大統領選の間の株価上昇率としては、2000年以降で最高の実績といえる。
経済界ではトランプ氏の復権への不安も
一方、経済界ではトランプ氏に苦い思いをさせられた記憶も色濃いようだ。なかでも保護主義的な通商政策や、北朝鮮の金正恩総書記と会談するなどの予測不能な外交姿勢については、世界の経済や政治を混乱に陥れたとの批判が多い。また、不法移民問題に対する厳しい姿勢は米国経済の実体にそぐわないとも指摘されている。
こうした中、複合企業コーク・インダストリーズの創業者が設立し、共和党の選挙戦に大きな影響力をもつ保守系政治団体の「繁栄のための米国民(AFP)」はヘイリー氏を支持。米メディアによると、トランプ政権の国家経済会議(NEC)委員長を務めた、元ゴールドマン・サックス社長のゲイリー・コーン氏もヘイリー氏の支援に回った。民主党支持層でもJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが「トランプ氏よりも優れた共和党側での選択肢」としてヘイリー氏を評価している。
このため、トランプ氏のホワイトハウス奪還への前進が株価上昇期待を高めるとしても、同時に、混乱が相次ぐことへの不安も広がりそうだ。リアル・クリア・ポリティクスによると、大統領選がトランプ氏とバイデン氏の対決になった場合の支持率は、トランプ氏が47%、バイデン氏が45%という僅差。政治の季節が深まっていく中、先行き不透明感が株価の足を引っ張る要因になる可能性もある。
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