米国株にAIの恩恵 S&P500上期14%上昇 割高感は重荷か
S&P500の上半期は2年連続の急伸。エヌビディアなど半導体株が牽引した。下半期は割高感やアメリカ大統領選をめぐる不透明感が重荷になる可能性も。
アメリカの株式市場が人工知能(AI)ブームに沸いた。S&P500種株価指数の28日の終値は5460.48。2024年上半期を14.48%高で終え、2023年に続き好調な結果を残した。S&P500は上半期に31回の最高値更新を繰り返す勢いで、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の躍進が投資家のAIへの期待の大きさを象徴した。下半期には米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げも見込まれ、S&P500の上昇に拍車がかかる可能性もある。ただ、株価の割高感や11月の米国大統領選をめぐる不透明感が重荷となって、S&P500が下押しされることも想定されそうだ。
S&P500は上半期に14%上昇 2000年以降で3番目の高さ
S&P500(SPX)の28日の終値は1週間前比では0.08%安。小幅ながら4週ぶりの値下がりで、上り調子での上半期終了にはならなかった。しかし上半期の上昇率は2000年以降では、2019年の17.35%高、2023年の15.91%高に次ぐ、3番目の高さ。2年連続で上半期の上昇率が10%を超えるのは1997-1998年以来だ。
エヌビディアなど半導体株がS&P500の上昇を牽引
S&P500は1月19日に約2年ぶりに最高値を更新。その後、6月18日までに31回記録を塗り替えている。最初の最高値更新のきっかけは、半導体受託生産で世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)が前日に2024年の総収入が前年比2割増になるとの見通しを示し、半導体株の上昇が加速したことだった。エヌビディアの株価(NVDA)は上半期だけで2.5倍になり、時価総額は3兆ドルを突破。18日にはマイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)を抜いて世界首位に立つ場面もあった。
5月のPCE物価指数はFRBの利下げ見通しを裏付け
こうした株価の急上昇は下半期も続く可能性がある。S&P500にとって追い風になると期待されるのはFRBによる利下げの開始。ジェローム・パウエル議長は12日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、次の金融政策は利下げになるとの方向性に言及。金融市場では9月FOMCまでの利下げ確率が約55%あるとみつもられている。
こうした見通しは28日に発表された5月の個人消費支出(PCE)物価指数でも裏付けられた。総合指数の伸び率は前年同月比2.6%で、4月の2.7%から減速。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率も2.6%で、やはり4月(2.8%)から物価上昇のペースが鈍化した。いずれの伸び率も事前予想通りで、物価上昇鎮静化を目指すFRBにとっては良いニュースだ。
アメリカ株に割高感 大統領選挙はバイデン氏に不安
ただ、S&P500は割高感がじわじわと上昇しており、今後の見通しに不安がないわけではない。LSEGによると、S&P500の水準と構成銘柄の今後12か月の予想収益をもとに算出される株価収益率(PER)は21倍程度となっており、2023年末の19.83倍から上がっている。過去10年間の予想PERの平均は約18倍で、今後の企業決算で業績予想が引き下げられるなどすれば、さらに割高感が増していくおそれもありそうだ。
また米国の大統領選の投票日である11月5日にかけては政治の不透明感が増すことも考えられる。大統領選は、27日夜に行われた民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領の討論会で本格的なスタートを切ったが、バイデン氏は言い間違いや言葉に詰まる場面が目立ち、81歳という高齢がネックになるとの見方が広がっている。米メディアによると、民主党陣営の中でも、候補者が正式に決定する8月19日からの党大会までは時間があることから、バイデン氏に代わる候補者探しを始めるべきだとの声が上がっているという。
さらにS&P500にとっては米国経済の見通しという不安材料もある。FRBが2023年7月以降、5.25-5.50%という高水準で政策金利を維持していることの影響が、1年を経て経済に悪影響を与えるおそれがぬぐえないからだ。S&P500は2023年下半期は長期金利の5%台までの上昇という逆風に見舞われながらも7.18%高を確保したが、2024年も同様の堅調さを維持できるかには不透明感も残る。
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