米国物価は上昇減速か 28日にPCE物価 S&P500に暗雲も
アメリカの5月PCE物価指数は伸び率が減速する見通し。しかし26日の金融市場では長期金利が上昇しており、S&P500の先行きには不安もよぎる。
アメリカの物価上昇に減速期待が出ている。28日に発表される5月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数とコア指数ともに4月から低下する予想。物価上昇との闘いを続ける米連邦準備制度理事会(FRB)にとって朗報になる可能性がある。ただし26日の金融市場ではFRBの利下げ見通しが維持される中でも、長期金利(10年物米国債利回り)が4.3%台に上昇し、半導体株などの逆風になった。S&P500種株価指数の大手ハイテク株依存が続く中で、2024年上半期に維持してきたS&P500の値上がりにブレーキがかかる可能性もありそうだ。
5月PCE物価指数は上昇率が4月から低下する見通し
米商務省は28日午前8時30分(日本時間28日午後9時30分)に5月のPCE物価指数を発表する。ロイターがまとめた事前予想によると、総合指数の伸び率は前年同月比2.6%となり、4月の2.7%から減速する見通し。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率も2.6%と見込まれ、やはり4月(2.8%)から物価上昇が鈍化すると予想されている。
5月PCE物価指数が予想通りになれば、12日発表の5月消費者物価指数(CPI)での上昇率低下とあわせて、FRBの利下げ見通しを裏付けそうだ。ジェローム・パウエル議長は12日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「(物価上昇減速を示す)データがさらに得られることを望む」と述べていた。CMEグループによると、9月FOMCまでの利下げについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間27日午前11時段階で56%となっている。
アメリカの半導体株は長期金利上昇が逆風
ただし26日の金融市場では物価上昇減速期待にも関わらず長期金利が上昇し、株式市場にとっての逆風となった。LSEGによると、26日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.316%。前日から0.078%ポイントの上昇で、11日終値(4.402%)以来の高さとなった。
こうした中、26日のS&P500(SPX)は前日比0.16%高と続伸した。ただし半導体株は勢いづかず。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は0.25%高となり、前日の6.76%高からは大きく減速した。エヌビディアは24日までの3営業日で12.89%下落しており、完全に復調したとはいえなさそうだ。26日は、同じく半導体大手のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が1.69%安、クアルコム(QCOM)は2.39%安となっている。
また、S&P500では時価総額が大きいハイテク株頼みの状況も続いている。S&Pグローバルが公表している時価総額を考慮せずに算出したS&P500の26日の終値は前日比0.36%安。前日も0.72%安で、続伸したS&P500自体とは正反対の値動きだ。
アメリカのアメリカのS&P500の下半期の行方は?
26日の長期金利上昇の背景には、オーストラリアの5月CPIが事前予想を超える強さだったことに加え、ドル円相場(USD/JPY)での円安進行が、日本政府がドル売り円買いの為替介入の原資を得るために米国債を売却する必要に迫られるとの思惑を引き起こしたという事情もあるようだ。ロイター通信は米国の市場関係者の話として、「市場は日本が米国債を売却せねばならないことを少し心配している」と報じた。
28日発表の5月PCE物価指数が予想に反して強い結果となれば、金融市場では米国経済の先行きが材料視される形で、長期金利上昇とS&P500下落への懸念が強まりそうだ。S&P500は2024年上半期に好調な値上がりを続け、26日終値でも14.84%高となっているが、物価動向の見通しが下半期のS&P500の足を引っ張る可能性もある。
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