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米国株、上昇どこまで S&P500上半期好調 エヌビディア依存不安

アメリカのS&P500は2024年上半期を2年連続の15%超高で終える勢い。下半期の浮沈は半導体大手エヌビディアや米国経済の行方にかかる。

米国株、上昇どこまで S&P500上半期好調 エヌビディア依存不安 出所:ゲッティ

アメリカの株式市場が勢いづいている。S&P500種株価指数の2024年上半期の上昇率は18日段階で15%強。このままいけば2年連続で上半期の上昇率が15%を超え、26年ぶりの好調さといえそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げ見通しが維持されていることが好材料となっており、下半期の値上がりにも期待がもてる状況だ。ただしS&P500の上昇は、人工知能(AI)ブームに沸く半導体大手NVIDIA(エヌビディア)など大手ハイテク株に依存している感が否めない。また、米国経済の堅調さが失われれば投資家心理が一変する可能性もあり、S&P500が下落基調に転じることも予想される。

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アメリカのS&P500は2年連続で上半期15%上昇のペース

S&P500(SPX)の18日の終値は5487.03で、2023年末比では15.04%高。19日の米国株式市場は休場だった。この水準のまま6月末を越えれば、2023年上半期の15.91%高に続き、2年連続で上半期の上昇率が15%を超えることになる。2年連続での上半期15%超えは、ドット・コムバブルの前にあたる1997年(19.49%高)、1998年(16.84%)以来26年ぶりの記録だ。

S&P500の上半期と下半期の騰落率の推移のグラフ

S&P500の好調さの背景には、FRBの利下げ見通しがある。FRBが2023年7月以降、政策金利を5.25-5.50%で維持する中、米国の物価上昇率は徐々に低下。FRBは2024年6月の経済見通しで、年内に1度の利下げを行う方向性を示唆している。LSEGによると、米国の長期金利(10年物米国債利回り)は20日も4.2%台で推移しており、4月につけた4.7%台からの落ち着きが続く。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

このため株式市場では下半期も、S&P500上昇見通しが維持されそうだ。1年前の2023年下半期はFRBの利上げと長期金利の5%までの上昇という逆風に見舞われながらも、S&P500は最終的には7.18%の上昇を確保した。一方、足元の物価動向を踏まえれば、2024年下半期に同様の逆風が吹く可能性は低い。FRBのジェローム・パウエル議長は12日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、利上げの可能性を排しているわけではないとしつつも、「FOMC参加者の中では誰も利上げがベースケース(基本的な想定)だとは考えていない」とした。

S&P500は半導体大手エヌビディアなどへの依存が上昇

ただしS&P500をめぐる環境には不安要素もある。S&P500の上昇はAIブームを背景にした一部の大型株への依存が強く、今後、ブームがしぼむことがあれば、これまでの値上がりにブレーキがかかるリスクをはらんでいる。

AIブームを象徴するのが、AI開発に不可欠な半導体を供給するエヌビディア(NVDA)の株価の急騰だ。18日の終値は2023年末比で2.7倍。時価総額は3兆3300億ドルを超え、マイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)を抜いて世界1位となった。この3社にアマゾン・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOGL)、テスラ(TSLA)の4社を加えた「マグニフィセント・セブン」の時価総額の合計は14兆5500億ドルに達し、S&P500構成銘柄全体の31.6%を占める。2023年6月末の27.3%から、依存度がさらに高まった形だ。エヌビディア、アップル、マイクロソフトの3社だけでもS&P500の21.6%を占める。

S&P500の時価総額に占める、エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アマゾン・コム、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラの比率の推移のグラフ

アメリカの高金利は経済活動や金融機関への悪影響も

また、米国の長期金利が低下傾向にあるとはいえ、2008年9月のリーマン・ショック直前期以来の高水準であることは間違いない。2023年7月以降のFRBの政策金利の水準は、2006年6月から2007年9月まで続いた5.25%よりも高く、異例の高金利環境が1年にわたって続く状況だ。こうした高金利は企業や個人の経済活動の足を引っ張るほか、金融機関の財務に悪影響を及ぼす可能性もある。

アメリカの長期金利とFRBの政策金利の推移のグラフ

一方、足元の米国経済は堅調で、労働市場では失業率が4.0%という低水準を維持。しかし失業率は上昇時には急ピッチで上がるとの指摘もある。リーマンショック前にFRBが利下げを始めた2007年9月の失業率は4.7%だったが、12月には5%、2008年8月には6.1%まで上がり、2009年10月には10.0%を記録した。

企業業績や半導体市場などの異変でS&P500の見通し悪化も

FRBも経済の先行きを注視している。パウエル氏は12日の記者会見で物価上昇沈静化の動向を見極めるため利下げを急がないとの見通しを示したが、利下げを待ちすぎた結果として労働市場の急激な悪化を招く可能性について、「そのリスクがあることは完全に理解している」とも言及。労働市場の悪化を避けつつ、物価上昇の継続的な沈静化を図る舵取りを目指すことを強調した。

S&P500の今後の見通しは大手ハイテク株と米国経済の行方で大きく変化する。エヌビディアなどの決算発表、半導体市場の見通し、米国の経済指標などに異変が出れば、2024年下半期のS&P500への期待が落ち込む可能性は拭えない。


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