米国株に決算ショック S&P500転落続く IT大手の成長期待減
米株式市場でS&P500が値下がりし、ナスダック指数は調整局面入り。AIを強みとするIT大手への期待が後退している。
アメリカの株式市場に決算ショックが走っている。25日のS&P500種株価指数の終値は前日比1.4%安で、直近10営業日で8度目の下落。ハイテク株の割合が多いナスダック総合指数は直近の高値からの下落率が10%を超え、調整局面とされる水準に入った。株式指数はIT大手の決算発表で下押しされており、グーグルを傘下にもつアルファベットの株価は決算発表翌日の下落率が上場以来4番目の大きさだった。IT大手は人工知能(AI)に関連したサービスが成長の原動力になると期待されてきたが、成果を求める投資家の目は厳しくなっている。
S&P500は10営業日中8日で下落
25日のS&P500(SPX)の終値は4186.77で、5月31日(4179.83)以来の低水準となった。12日以降の10営業日でS&P500が値上がりしたのは16日と24日の2日だけだ。また、ナスダック指数の25日の終値は前日比2.4%安の1万2821.22。7月19日につけた高値(1万4358.02)からの下落率は10.7%となり、調整局面入りとなった。
米国の株式市場は長期金利(10年物米国債利回り)の上昇が重荷となってきた。金利水準が上がれば株式の投資先としての魅力が薄れるうえ、企業の資金調達にかかるコストが上がり、業績を下押しすると考えられるからだ。25日のニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.953%で、引き続き16年3か月ぶりの高水準にある。
アルファベット、テスラ、メタの株価が下落
こうした状況をさらに下押ししているのがIT大手の決算だ。なかでもアルファベットの株価(GOOGL)は25日に9.5%下落。金融情報会社リフィニティブのデータによると、2004年8月の上場後、4番目の大きさにあたる厳しい値下がりとなった。前日に発表された2023年7-9月期決算は事前予想を上回ったが、AIサービスの提供基盤となるクラウド事業の成長鈍化が悪材料視された。
また、電気自動車(EV)大手のテスラの株価(TSLA)も7-9月期決算発表翌日の19日に9.3%下落した。決算が事前予想を下回ったうえ、粗利益率も低下。イーロン・マスクCEOは金利高が自動車ローン金利を上昇させている状況がさらに進めば、「消費者は車を買うことがいっそう困難になる」と述べた。テスラは値下げで金利上昇分を帳消しにする戦略をとっており、その分、利益率の悪化という反動を受けている形だ。
25日に7-9月期決算を発表したSNS大手のメタ・プラットフォームズ(META)も予想を超える好決算だったが、時間外取引で株価は下落した。中東情勢の緊迫化などを受けて広告需要が減少する可能性を背景に、10-12月期決算の業績見通しを控えめに設定したことが投資家の不安材料になったとみられる。
AIサービスへの期待をつなげるか
これらのIT大手はAIの活用が業績を後押しすると期待されて株価が値上がりしてきた。アルファベットだけでなく、テスラも自動運転機能に用いるAIの開発を進め、メタもAIサービスの提供や広告事業のAIによる効率化を進めている。ただ、AI開発向け半導体で高いシェアを持つNVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価が2022年末比で約2.9倍になっているなど、値上がりの激しさも目立つ。このため7月以降の下半期でみれば、IT大手の株価は下落しているケースも多い。
一方、7-9月期にクラウド事業の成長率を回復させたマイクロソフトの株価(MSFT)は決算発表後に上昇している。IT大手が引っ張ってきた株式市場の行方は、各社がAI関連サービスへの期待をどこまで維持できるかにかかっている側面もありそうだ。
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