円安の進行とドル円の新たなレジスタンスポイントについて
昨日は英中銀をはじめ海外中銀が相次いで利上げを行った。植田日銀と海外中銀との金融政策スタンスの差がより鮮明となり、外為市場では円安が進行しやすい状況にある。ドル円は143円台の攻防へシフトしている。目先の展望は?注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・相次ぐ海外中銀の利上げを受け、植田日銀との金融政策スタンスの差がより鮮明に
・国内外の金融政策スタンスの差は円安進行の要因となっている
・ドル円は142.50レベルをも難なく突破し、さらなる上値トライのムードが高まっている
・しかしドル円の上昇局面では、国内サイドからの円安けん制を警戒しておきたい
金融政策スタンスの差と円安の進行
海外中銀による相次ぐ利上げ
イングランド銀行(英中央銀行)は22日に開かれた金融政策委員会(MPC)で、予想外の50ベーシスポイント(bp)の利上げを決定した。政策金利は2008年以来となる5%まで引き上げられた。
短期金融市場では、インフレ抑制のため英中銀が年内に政策金利を6%まで引き上げる可能性を完全に織り込み始めている。今年はあと4回のMPCが開かれる。さらに1%の利上げを想定する場合、すべてのMPCで英中銀は利上げを行うことが予想される(25bpの利上げをベースシナリオとする場合)。
英政策金利の予想推移
またこの日は英中銀だけでなく、他の中銀も相次いで利上げを決定した。
スイス国立銀行(中央銀行)は予想どおり25ベーシスポイント(bp)の利上げを行い(政策金利は1.75%へ引き上げ)、かつ追加の利上げを示唆した。
ノルウェー中銀は50ベーシスポイント(bp)の利上げを行い(政策金利は3.75%へ引き上げ)、年内の予想ターミナルレートを4.25%へ引き上げた。
また、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は上院銀行委員会で、連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの3分の2が、年内あと2回の利上げが妥当だと考えていると述べた。
パウエルFRBのタカ派スタンス維持と欧州金利の上昇を受け、米債市場では各年限の利回りが上昇した。米金利の上昇は、外為市場で米ドル相場を下支えした。
円安が進行しやすい状況に
海外中銀が相次いで利上げを行ったことで、外為市場では植田日銀との政策スタンスの差がより鮮明となっている。
そしてこの状況は円安の進行を促している。昨日は南アフリカランド(ZAR)以外の主要な通貨で円安となった。また、日米の株高トレンドがさらに加速している6月以降の円相場のパフォーマンスを確認すると、新興国通貨や資源国通貨といったリスク性の高い通貨を中心に円安が進行していることが分かる。
これらの状況は、現在の投資家心理が強気に傾いていることを示している。少なくとも次回の日銀金融政策決定会合(7月27~28日)までは国内外の政策スタンスの差が意識されるだろう。日米の株式市場も調整の反落を挟みながら株高トレンドを維持する可能性がある。
ゆえに、外為市場では引き続き円安優勢の展開を想定しておきたい。
円相場のパフォーマンス
ドル円の展望とチャートポイント
あっけなく142.50レベルの突破に成功
ドル円(USDJPY)は昨日、IG為替レポートで指摘してきた142.25レベルだけでなく、昨年の最高値151.94レベルと今年1月の安値127.22レベルのフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準142.50レベルをも大陽線であっさりと上方ブレイクした。
ドル円のリスクリバーサルの状況を確認すると、1ヶ月のそれはドル・プットが後退する状況にある。一方、3ヶ月と6ヶ月のそれらはドル・プットへ傾く傾向にある。これらの動向は、短期的にドル円は上値トライの状況が続くも、中期的には下値をトライする可能性を通貨オプション市場の参加者が意識していることを示唆している。
ドル円とリスクリバーサルのチャート
1円レンジで新たなレジスタンスの水準を探る状況に
上で述べたとおり、今後も植田日銀と海外中銀との金融政策スタンスの差が、外為市場で意識され続けるだろう。この状況で日米の株高トレンドが続いていることを考えるならば、外為市場では円安が進行しやすい状況にある。
上の状況に加えて、ドル円(USDJPY)のリスクリバーサル(1ヶ月)の動向や21日MA(今日現在140.45レベル)がサポートラインとして意識されている状況も考えるならば目先のドル円は、新たなレジスタンスの水準を探る展開が続くだろう。
今日は、6月の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。予想(53.5)以上となれば、景気不安の後退で米ドル買いの要因となることが予想される。
強い経済指標などで今日もドル円の上値トライが続く場合は、144.00レベルのトライおよびブレイクアウトが目先の焦点となろう。この水準は、昨年の9月下旬から10月上旬にかけて相場をサポートした経緯がる。ゆえに、ドル円が昨日の高値143.23レベルを上方ブレイクする場合は、144.00レベルの “レジスタンス転換” を確認したい。
ドル円が144円台へしっかりと上昇する場合は、145.00レベルのトライおよびブレイクアウトが次の焦点となろう。この水準は昨年の9月上旬から11月上旬にかけて、レジスタンスとしてもサポートとしても意識された経緯がある。今の状況では、144.00レベルと同じく “レジスタンス転換” となるかどうか?この点を確認したい。
国内サイドからの円安けん制を警戒
オシレーター指標では、相場の過熱感(短期的な買われ過ぎ)を示唆する状況にある。また、急速に進行する円安は、国内サイドからの円安けん制の可能性を高めている。
ゆえに今後のドル円の上昇局面では、突発的な反落(円の買戻し)を警戒しておきたい。
ドル円のチャート:日足
円安のけん制がなければ146円台も?
上で述べた国内サイドからの円安けん制がない場合、ドル円(USDJPY)は146円台まで上昇する可能性が出てくる。
実際にドル円が146円台の攻防へシフトする場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準146.11レベルの攻防が最初の焦点となろう(上の日足チャートを参照)。
ドル円がこのテクニカルポイント(フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準146.11レベル)をも上方ブレイクする場合は、V計算値の146.35レベルのトライが次の焦点として浮上しよう。
ドル円のチャート:日足
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